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2021年11月20日(土)から2022年2月27日(日)まで、兵庫県立美術館にて『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』が開催中。ライデン国立古代博物館は、1818年に創設された世界最古の国立博物館の一つ。18万点もの収蔵品の中でも、ヨーロッパの5大コレクションに数えられるエジプト・コレクションは、約2万5千点にものぼり世界有数の量と質を誇る。今回の展覧会はその中から、人のミイラ5体、動物のミイラ8体や10数点の棺などを含む、厳選された約250点を借り受けて開催。また、最新のCTスキャンによるミイラの解析結果を世界初公開するなど、見どころたっぷり!

今回の展示の特徴は、「ミイラ」「黄金」などのテーマ別ではなく、エジプトを探検(1章)、エジプトを発見(2章)、エジプトを解説(3章)・エジプトをスキャン(4章)という4つ章からなるストーリー仕立てて構成されていること。時間の流れに沿ってミステリアスな古代エジプトの人々の生活や社会、美意識、死生観といったさまざまな文明の側面や魅力を知ることができる。

ヒエログリフの読み方解説など知的好奇心がくすぐられる展示も

「敵を討つラメセス2世」

「敵を討つラメセス2世」

エジプト文明はどのように発見されたのかを学ぶことができる第1章では、ライデン国立古代博物館によるサッカラ遺跡などの調査や関連する遺物を紹介。実際の調査のフィールドノート、ツタンカーメン王の側近が眠る墓地調査時の手紙、調査の様子がわかる映像など貴重なものも公開されているのでお見逃しなく。

さまざまな壁画やレリーフは、砂や瓦礫で埋まっていたため、最初は色が残っていたものもあったとか。もともとどんな色がついていたかを再現し、リトグラフで記録した図版も展示されている。何千年も前に存在したかもしれない鮮やかな色遣いの絵に想像をかきたてられる。

エジプトと言えば有名な象形文字(ヒエログリフ)。象形文字の「いろ」や「かたち」にはさまざまな呪力や意味が込められていたことも紹介。死者の旅路を案内する呪文「死者の書」の読み方解説では、法則のヒントを知ることができ、小学生くらいの子どもも興味を持つことができる。さまざまな作品を観る際に、文字や絵の「いろ」や「かたち」に着目するとそこに込められた意味も知ることができて面白い。

「ロゼッタ・ストーン」(レプリカ)

「ロゼッタ・ストーン」(レプリカ)

1799年にナポレオンの軍隊がエジプトの町・ロゼッタで発見した「ロゼッタ・ストーン」が、ヒエログリフの解読に大きな役割を果たした。上段はヒエログリフ、中段はデモティック、下段にはギリシア語で法令が刻まれている。展示されているのはレプリカで、本物はロンドンの大英博物館に収められている。

「猫の像」(右)、「イクニューモン」(左)

「猫の像」(右)、「イクニューモン」(左)

石碑やパピルス(古代エジプトの紙)など様々な展示品によって古代エジプト史の全体像がつかむことができる第2章。自然と共に生きる多神教であるエジプト文明は、1,500以上の神様がいたという。猫やさそり、マングースなどさまざまな生き物が神としてあがめられていた。現代のわたしたちにも身近な姿をしているかわいい神さまに、目が釘付けになってしまう。イクニューモン(エジプトのマングース)はオフィシャルナビゲーターの西島秀俊もお気に入りだとか。

永遠の生を望んだ古代エジプト文明の死生観を解読

立体展示のようす。空間に余裕があるので、側面の細かな装飾も余すところなく鑑賞することができる。

立体展示のようす。空間に余裕があるので、側面の細かな装飾も余すところなく鑑賞することができる。

国内初となる棺の立体展示が目玉の第3章は、当時の人々の死生観を読み解くことができるエリアだ。第3中間期から後期王朝時代にかけての貴重な12点の木棺が立てた状態で展示されていて、実際に横に立つと、自分の背丈と棺の大きさを比べることができてわかりやすい。時計まわりに進行方向に沿って時期別に棺が並べられていて、装飾や色、形が時代を経るごとにどんどん変わっていく様子を立体的に見ることができる。安藤忠雄建築の開放感のある空間も、より神秘的な雰囲気を生み出している。

アメンヘテプの内棺

アメンヘテプの内棺

特に中央にある「アメンヘテプの内棺」は必見。生命と支配の象徴である女神が描かれていて、女神の手の上部には上下エジプトを表すシンボル、コブラとハゲワシが描かれているのが確認できる。このような装飾は、本来壁画に描かれたものであったが、第3中期に入り豪華な墓を造ることがなくなると、棺に施されるようになったとか。これだけの数の棺をまとめて鑑賞できる機会はめったにないので、ぜひじっくりと鑑賞してもらいたい。

最新の科学技術を通して医学的な知識やミイラ作りの過程、色やかたちに対する人びとの美意識といったこれまでに知られていなかった面を解き明かす第4章。現代科学によって解明されたミイラの生前の様子など、CTスキャンを駆使してミイラの謎に迫っていく。

センサオスのミイラ

センサオスのミイラ

ローマ人のエリート層の家系に生まれ、16歳で亡くなったセンサオスという名の女性のミイラ。大量の包帯と樹脂が用いられたため、かさばった外観をしている。

センサオスの顔の復元模型(右)センサオスの顔の復元家庭を示した模型(左)

センサオスの顔の復元模型(右)センサオスの顔の復元家庭を示した模型(左)

 センサオスのミイラは、1990年代にライデン国立古代博物館にて、初めて調査と3Dスキャンが行われたもの。顔の復元も試みられた。

初期の化学者はミイラを研究するために包帯をほどいていたが、ライデン国立古代博物館では創立時から包帯をほどくことを禁止していた。それにより、将来的な技術の発展を見越して保存していた博物館所蔵のミイラ(人と動物)をCTスキャンし、ビジュアル化することができたのだ。

そのデータを用いたインタラクティブな展示が可能となり、ミイラのスキャン結果を世界初公開している。ミイラを包む布をデジタル的に一層ずつ剝いで行く映像は興味深い。それにより、生前の虫歯の状態、病気などがわかり、骨の発育やすり減り具合で、職業などさまざまなことがわかるのだ。歯の摩耗から当時食べていたパンに砂や小石が含まれていたことまでわかるなんてすごい。

他に例のない、体内に謎の人形を持つ2体のミイラを含む人間3体と動物1体のミイラの高解像度スキャン画像を公開。

他に例のない、体内に謎の人形を持つ2体のミイラを含む人間3体と動物1体のミイラの高解像度スキャン画像を公開。

オフィシャルナビゲーターの西島秀俊と声優・ナレーターの森川智之が魅力的な語り口で案内してくれる(貸出料金・600円)音声ガイドにも注目。わかりやすい解説はもちろん、クイズになっていたり、物語調になっていたりと楽しめる。実際の碑文の象形文字の音を再現するという国内初の試みも。

ダイナミックな展示方法、新たな切り口で色、かたち、文字の意味などこれまでの展覧会では紹介されなかった部分まで掘り下げた解説など、従来のエジプト展とは一線を画す試みがつまった『古代エジプト展』。エジプト考古学の過去・現在・未来を見通す感動のスケール感をぜひ体感してほしい。

『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』は11月20日(土)から2022年2月27日(日)まで、兵庫県立美術館で開催。

取材・文・撮影=岡田あさみ