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上野恩賜公園の奥にドンと構える文化の殿堂、東京国立博物館。日本最古の博物館である、東博(トーハク)こと東京国立博物館が、来年2022年に創立150年のメモリアルイヤーを迎える。節目の年にあたり、同館では様々な特集や特別展が企画されているという。この記事では、報道発表会にて披露された盛りだくさんの企画のエッセンスや、館長らからのメッセージをお伝えする。

上野恩賜公園の噴水越しに見る、2021年の本館

上野恩賜公園の噴水越しに見る、2021年の本館

館長・銭谷眞美氏より挨拶

東京国立博物館 館長・銭谷眞美氏

東京国立博物館 館長・銭谷眞美氏

「東京国立博物館は明治5年(1872年)に創立され、来年2022年で創立150年の大きな節目を迎えることになりました。10年前の訪日外国人の数と比べ、コロナウイルスの感染拡大前の令和元年(2019年)は激増していました。この間、私どもは “日本を訪れたら東京国立博物館へ” を合言葉に、多言語対応の充実を図るなど、外国人の方にもわかりやすい展示と解説に努めてまいりました。また常設展示である総合文化展におきましては、年間300回を超える展示替えを計画的に行いまして、いつ来ても新しい作品に出会える博物館として、これまで多くの来館者の方をお迎えしてきました。総入館者数は10年前には年間155万人でしたが、令和元年度には過去最高の259万人を記録しています。」

《上野博物館遠景之図》J・コンドル筆 明治時代・19世紀  1881年に竣工した旧本館は英国のコンドルによる設計だった

《上野博物館遠景之図》J・コンドル筆 明治時代・19世紀  1881年に竣工した旧本館は英国のコンドルによる設計だった

1935年頃、建設中の本館  現在の本館はこちら。関東大震災後に完成したものである

1935年頃、建設中の本館  現在の本館はこちら。関東大震災後に完成したものである

「残念ながら、令和2年以降は感染症拡大防止のために臨時休館せざるを得なくなったり、事前予約制などの導入によって入場者数を制限したり、あるいは夜間の開館を自粛するなど、これまで通りの営業が困難な状況が続いております。新しい生活様式による社会の変容の中にあって、150年という節目は博物館のあり方を再確認し、“私たちにとって博物館がなぜ必要なのか” を考える機会でもあります。誰にとっても身近な博物館として踏み出し、そして歩み続けたいと思っております。」

「未来の国宝」を紹介する、研究員入魂の企画に期待!

平常展調整室長の皿井舞氏からは「総合文化展」においてのバラエティ豊かな特集展示についての紹介があった。なお総合文化展とは、東京国立博物館独自の名称で、いわゆる常設展やコレクション展にあたる(2011年に名称変更をする以前は「平常展」と呼ばれていたので、そちらの方が馴染みがあるという方もいるかもしれない)。

「例年、特集は年間だいたい20数件ですが、来年はその1.5倍にあたる30弱の特集を企画しております。特集展示は本館、平成館、東洋館、企画展示室、法隆寺宝物館などで同時多発的に展開され、いつご来館いただいても150周年の記念展示に出会えるようになる予定です。東博の誇る名品や、あるいは普段なかなかお目見えできない知られざる逸品、研究員よりすぐりの品を広くご紹介するような内容を考えています。」

特集のラインナップで気になったものは、本館2階の通年企画として計画されている『未来の国宝ー東京国立博物館 書画の逸品ー』だ。未来の国宝とはなんだろうか?

総合文化展での記念特集について

総合文化展での記念特集について

「これは、今のところ国の指定する重要文化財や国宝に指定されていない作品を “未来の国宝” として展示する特集です。文化庁から国宝指定を受けていなくても、キラリと光る「これぞ!」という作品があることをご紹介します。我々研究員がいろんな切り口でその価値を解説して、ご来場くださった方に素晴らしさを実感していただき、知られざる名品を一緒に発見していこう、というコンセプトです。」

《見返り美人図》菱川師宣筆 東京国立博物館蔵 江戸時代・17世紀

《見返り美人図》菱川師宣筆 東京国立博物館蔵 江戸時代・17世紀

さらに秋には『未来の国宝ー東京国立博物館 彫刻・工芸・考古の逸品』が開催される。その他にも、普段紹介される機会の少ない近世仏画にフィーチャーした特集や、博物館広報活動の変遷をたどり、博物館と人々とのコミュニケーションの歴史を俯瞰する特集などが企画されているという。

《当麻曼荼羅図(部分)》神田宗庭隆信筆 東京国立博物館蔵 喜多川儀久氏寄贈 江戸時代・天保7年(1836)

《当麻曼荼羅図(部分)》神田宗庭隆信筆 東京国立博物館蔵 喜多川儀久氏寄贈 江戸時代・天保7年(1836)

大胆な「すべて」宣言! 大本命の特別展がやってくる

登録室長(兼)貸与特別観覧室長の佐藤寛介氏からは、自身がワーキンググループのチーフを務める、特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』についてのプレゼンテーションが行われた。

東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』について

東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』について

「このタイトルをお聞きになって、かなり “攻めた” タイトルだと思われた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか……(笑)。でも安心してください、このタイトルに偽りや誇張はございません。本当に、東博の全てをご紹介する展覧会になります。本展では二つのキーワードで展示を構成します。一つ目は「国宝」です。現在国宝に指定されている美術工芸品は約900件あり、その約1割にあたる89件を東博が所蔵しております。本展では、東博が所蔵するこの89の国宝すべてを展示いたします。これは150年の歴史上初めての、画期的なことです。そして、特に刀剣に注目していただきたいと思っております。本展では国宝刀剣19を同じ空間で一堂に展示し、まさに “国宝刀剣の間” とでも言うべき展示空間を創り出します。」

《国宝 太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)》東京国立博物館蔵 渡邊誠一郎氏寄贈 平安時代・10〜12世紀

《国宝 太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)》東京国立博物館蔵 渡邊誠一郎氏寄贈 平安時代・10〜12世紀

「そして二つ目のキーワードが「歴史」です。本展では日本の博物館の歴史とも言える東博の150年を3つの時期に分けまして、作品・資料・各時代の映像などを通して、それぞれの時期の活動を分かりやすくご紹介したいと思っております。」

《古今珎物集覧》一曜斎国輝筆 東京国立博物館蔵 明治5年(1872)  東博の歴史の始まりである、1872年の湯島聖堂博覧会を描いた錦絵だ

《古今珎物集覧》一曜斎国輝筆 東京国立博物館蔵 明治5年(1872)  東博の歴史の始まりである、1872年の湯島聖堂博覧会を描いた錦絵だ

会場ではこの他にも、東京国立博物館の調査研究活動についてや、書籍『東京国立博物館百五十年史』の編纂、企業とのコラボレーショングッズの制作などが発表された。

副館長・富田淳氏より閉会の辞

発表会の最後には、副館長の富田淳氏が登壇。150年を迎えるにあたっての思いを語り、締めくくった。

東京国立博物館 副館長・富田淳氏

東京国立博物館 副館長・富田淳氏

「150年の間に東博は多くの文化財を集め、守り、次世代に伝えてまいりました。時代は刻一刻と変わっていきますので、東博の使命もその時代に合わせたものへと様々に変化を遂げております。そして現在、多くの博物館・美術館がそうであるように、私どもにおきましてもウィズコロナ、アフターコロナという新しい時代において博物館はどうあるべきかを模索しているところでございます。今日ご紹介しましたのは、現在予定しております内容のごく一部です。2022年に開催します様々なイベントの中で、私どもが模索しております “新しい博物館のあり方” の小さな解答を、皆様にお見せできるのではないかと考えております。博物館であるからこそできる大きな一歩を、多くの皆さまと踏み出したいと思っております。」

東京国立博物館創立150年記念キービジュアル  1955年頃の本館玄関を出る人々の姿に「150年後もお待ちしています。」のキャッチコピーが重なる

東京国立博物館創立150年記念キービジュアル  1955年頃の本館玄関を出る人々の姿に「150年後もお待ちしています。」のキャッチコピーが重なる

創立150年のメモリアルイヤーを間近に控え、数々の熱意あふれる企画が準備されている東京国立博物館。詳細は順次webサイトにて公開されるそうなので、引き続き注目していきたい。2022年は東博の気迫から、目が離せなくなりそうだ。

※各作品の展示期間についてはすべて未定

文・写真=小杉美香 写真(一部)=オフィシャル提供