『モリエール生誕400年記念 スクリーンで見るコメディ・フランセーズ』として、仏コメディ・フランセーズによる『病は気から』『スカパンの悪だくみ』が、東京・渋谷のBunkamuraル・シネマで、2022年10月21日(金)、22日(土)、23日(日)、24日(月)の4日間、限定上映される。
フランス古典喜劇を完成させ、劇作家・俳優として知られるモリエール(1622年-1673年)。ピエール・コルネイユ、ジャン・ラシーヌとともに古典主義の3大作家の1人として、フランス本国はもちろん海外でも広く知られている。生誕400年を迎える今年、別名「モリエールの家」と呼ばれるコメディ・フランセーズを中心に多くのモリエール作品が演じられ話題を呼んでいるが、今回の特集では、日本初上映の『病は気から』と、昨年春にアンスティチュ・フランセ東京にて4回上映されたのみの『スカパンの悪だくみ』が上映される。
コメディ・フランセーズ リシュリュー館 © Christophe Raynaud de Lage
『病は気から』の主役アルガンを演じるのは俳優・演出家・映画監督のギヨーム・ガリエンヌ。日本では、『イヴ・サンローラン』(14)、『セザンヌと過ごした時間』(16)などで映画ファンにもその存在を知られているが、とりわけ特筆すべきは、2013年に自身の戯曲を自ら監督・脚本・主演を担当した『不機嫌なママにメルシィ!』だろう。本作では第39回セザール賞の10部門にノミネートされ、作品賞、脚色賞、男優賞など5部門で受賞となる快挙を成し遂げ、自身も俳優・劇作家であったモリエールを彷彿とさせる才能を見せつけた。モリエールの遺作である『病は気から』は、公私にわたる失意の中、主人公アルガンを自ら演じた初演からほどなくして亡くなるなど「自らの不幸の中で、我々を笑わせることを選んだ」モリエールの芸術の神髄の詰まった作品。
『病は気から』© Christophe Raynaud de Lage
『病は気から』© Christophe Raynaud de Lage
『スカパンの悪だくみ』の主役スカパンを演じるのは、今後のコメディ・フランセーズをしょって立つ若手俳優のひとり、バンジャマン・ラヴェルネ(『デリシュ!』(20)『セラヴィ!』(17))。近年のフランス映画ではその顔を見ない作品がないほどの活躍を見せている。本作の演出は、名脇役としてフランス映画ファンにはお馴染みのドゥニ・ポダリデス。『病は気から』にも俳優として参加しており、その確かな才能で舞台を盛り立てている。
『スカパンの悪だくみ』© Christophe Raynaud de Lage
『スカパンの悪だくみ』© Christophe Raynaud de Lage
タイトルはよく聞くものの、フランス演劇の本場コメディ・フランセーズの『病は気から』や『スカパンの悪だくみ』に触れる機会は稀有なはず。主演の俳優たちの熱演もさることながら、登場する役者全員の演技の巧みさには必ず心を動かされるだろう。今なお世界中で愛される不朽の名作を、この機会にル・シネマのスクリーンで鑑賞されてはいかがであろうか。
『病は気から』© Christophe Raynaud de Lage
『スカパンの悪だくみ』© Christophe Raynaud de Lage