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2023年3⽉17⽇(⾦)〜3月19⽇(⽇)⼋王⼦市芸術⽂化会館 いちょうホール(⼩ホール)にて、演劇公演 ⿃公園#16『ヨブ呼んでるよ -Hey God, Job’s calling you!-』が上演される。

2007年7⽉に劇作家、演出家の⻄尾佳織が設⽴した⿃公園は、社会の中で⼈と⼈のあいだに引かれる境界線を、さまざまな形で問い直す作品をつくっている。

2019年に〈複数性の演劇〉=持続可能で本当にインディペンデントな創作活動に向けてのステートメントを発表し、2020年度より和⽥ながら(したため)、蜂巣もも(グループ・野原)、三浦⾬林(隣屋) の3⼈の演出家をアソシエイトアーティストに迎えて、⻄尾は劇作と主宰業に専念する新体制に移⾏。創作活動の基盤を整える「お盆部」とともに、活動報告会や決算報告会、アニュアルレポート作成など、プロセスの公開にも積極的に取り組み、作品づくりと創作環境の構築を同時進⾏で進めている。

今回の公演は、⿃公園と(公財)⼋王⼦市学園都市⽂化ふれあい財団が、2022年4⽉から取り組んでいる「演劇のための⻑くてゆるやかなアーティスト・イン・レジデンス」(通称「ゆるAIR」)公演の第1弾とし、2023年3⽉に⿃公園の代表作『ヨブ呼んでるよ』を三浦⾬林による新演出で上演する。

本作は「義⼈の苦難」をテーマにした旧約聖書『ヨブ記』を現代⽇本に再解釈して描いた、2017年3⽉初演の⿃公園の代表作。初演では、現代社会の価値基準によって⼀⽅的に量られてしまう存在と、その⾮常な理不尽と苦難を通し、全ての存在が「ただ存在すること」それ⾃体の価値を問いかけた。

今回は、英題「Hey God, Job’s calling you!」を添え作品タイトルを更新。劇作の⻄尾は、戯曲のリライトを通して、個別の存在が発する「⾔葉なき⼈の声」を掬い上げる。

また2018年「⿃公園のアタマの中展」でのリーディング上演を経て演出にあたる三浦は、『ヨブ記』を2023年の視座から多⾓的に解釈し、本作を舞台上へ再構成。⽣演奏による⾳楽、現代画家と舞台美術家のコラボレーションも取り⼊れ、ジャンル横断的な演出で現代の受難を描き出す。

2022年5⽉には、リクリエイションの道のりの中で本作を再検証するにあたり、その⼿前の勉強会として、専⾨家を招いた関連ワークショップを⼀般公開で行った。今後、上演の2週間前に、創作の様⼦を観客に見せる公開稽古も予定している。⿃公園が⼋王⼦のまちと共にあゆむ創作活動1年⽬のチャレンジを、そのプロセスから注目したい。

『ヨブ呼んでるよ』あらすじ

希帆はシングルマザーの⾵俗嬢だ。育児放棄し、仕事も⽋勤し、転がり込んだ男の部屋で酒浸りになっている彼⼥の元に、希帆の兄、⼤家、兄の弟分のチンピラが代わる代わる訪れては⼤量の「正しい」⾔葉を浴びせかける。だから
彼⼥は夢に逃げ込む。

夢の中で、⼦供の頃からよく会うオジサンがいた。「たかをちゃん」と名乗るそのオジサンは⼦供のようで、彼とい
るときは希帆ものびのび存在できた。だがある⽇たかをちゃんが、「⾃分は⼤⽥区に住む56才だ」と語り出す。⾃分
の夢の登場⼈物だとばかり思っていたたかをちゃんは、現実の存在だった。「妹をアイして⺟さんに怒られた」とい
うたかをちゃんの⾔葉を呼び⽔に、とうとう夢にも、希帆の虐待と近親相姦の記憶が侵⼊してくる。

旧約聖書のヨブはよかった。⾃分の受難を訴える⾔葉を持っていて、訴える相⼿の神もいた。でも希帆は⾔葉を持っ
ていない。声なき⼈の声は、どのようにこの世界に出現し得るだろう?

※『ヨブ記』……旧約聖書に収められている書物。神への信仰篤く恵まれた環境で何不⾃由なく暮らしていた義⼈ヨ
ブが、ある⽇突然まったく謂れのない受難に遭って神に問いかける物語。古より⼈間社会の中に存在していた神の裁
きと苦難に関する問題に焦点が当てられている。