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ゴツプロ!Presents/ブロッケンver.1『ブロッケン』が、2023年4月21日(金)から4月30日(日)まで本多劇場グループ 新宿シアタートップスにて上演される。

ブロッケンは、ゴツプロ!主宰の塚原大助が、新たな作家、演出家、役者との出会いを求めてプロデュースする舞台公演企画。第1回目となる今回は、HIGHcolors主宰で劇作家・演出家の深井邦彦が脚本、JAM SESSIONを主宰し古典から現代劇まで幅広く手掛ける西沢栄治が演出を担当する。

新作を書き下ろした深井が“地面に這いつくばりながら宇宙を見上げようとする弟と、1日だけヒーローになった兄の物語”と表現する本作の主人公は、出世に縁がなく気合で生きる兄の中野智樹(塚原大助)。智樹を取り巻く登場人物に、社会性があり期待されて育った弟の中野修司(高畑裕太)、両親がいない智樹と修二を男手一つで育てた叔父の井川元太(有薗芳記)、智樹の元妻・桧山美奈(岩瀬顕子)、智樹と美奈の娘・中野真帆(前田悠雅)、智樹の歳下の上司・藤本秀夫(泉知束)。

稽古場には、正面奥、上手、下手にそれぞれテーブルと椅子がセットで置かれ、自転車が1台停まっている。3月下旬からスタートした稽古期間は折り返しを迎え、シーン毎に短く通しながら細かい感情の動きを確認していた。演出の西沢は、どんな気持ちでその言葉を発していたか、気持ちがどこに向いていたかをキャストに問い、ディスカッションを重ねながら軌道修正していく。劇団やユニットを主宰する塚原や高畑、岩瀬、泉、ベテランの有薗という顔ぶれの中で、今回最年少の前田も積極的に意見を交わしていた。

この日は、藤本と智樹が取引先に謝りに行く冒頭のシーンから稽古が始まった。何度も謝る藤本の横でなかなか頭を下げることができない智樹の性格、世渡り上手で後輩ながら先に出世した藤本と智樹の関係性が、二人の掛け合いから愉快に伝わってくる。場所を居酒屋に移して悪態をつく智樹となだめる藤本。一方で舞台上の別空間では、修司が「自分は自分自身が思っていたよりクズだったみたいです」と告白する。

智樹と二人で暮らしていた娘の真帆は、独立して家を出ていくことに。智樹とのやりとりから、関西弁も相まって物怖じせず大人びて見える真帆だが、9年ぶりに再会した母・美奈の前では素直になれずぎこちない。
そして、ある事故をきっかけに電話越しで言葉を交わす智樹と美奈。美奈の頑なな態度は、無神経な智樹への苛立ちがまだ過去のものになっていないことを伺わせた。

物語は、登場人物たちが元太と過ごした日々の回想シーンを交えながら進んでいく。過去の元太の言葉は飾り気もなくあけすけだが、それぞれに葛藤を抱えてもがく現在の彼らを鼓舞し、慰める。
若乃花と貴乃花の兄弟対決を夢中で見ていた若かりし頃、「兄貴は強いんじゃ」と兄が弟を投げ飛ばすと、「兄ちゃんやっぱかっこええな」と弟が言う。
不器用な登場人物たちの一生懸命生きる姿が、微笑ましく描き出されていた。

撮影=MASA HAMANOI