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三笠書房の『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(神田裕子著、4月22日発売予定)に発達障害者の尊厳を傷つける表現が含まれているとして、発達障害当事者協会が三笠書房に質問状を提出している。
【画像】三笠書房に質問状を送付
同書籍は、表紙などで発達障害や精神疾患のある人を「職場の困った人」と記載。擬人化したサルやヒツジなどの動物として描いた上で、うまく動かすための対応マニュアルなどを紹介している。
同協会が質問状で見解を求めた内容は以下のとおり。
1.ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、精神疾患、更年期障害の方を「困った人」と捉えて出版することをコンプライアンス的に適切だとお考えでしょうか?
2.上記の障害や疾患を持つ人々を動物に例えるようなアートディレクションを適切だとお考えでしょうか?
3.ASDの人を「異臭を出す人」、ADHDの人を「人の手柄を横取りする人」という一方的な断定については、貴社の見解として適切だとお考えでしょうか?
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発達障害当事者協会は、ハフポスト日本版の取材に対し「障害や疾患のある方を一律に『困った人』と呼び、動物に喩えたとも取れる書籍が出版されたことは、極めて遺憾です」とコメント。
こうした差別表現が見過ごされた背景として「障害や疾患のある人と働くために必要な合理的配慮の情報や支援が不足し、その実践が現場の個人負担になっている現状があり、その負担感の強さが、職場で合理的配慮を必要とする人を『困った人』として描写した可能性があります」と指摘した。
その上で「今後、現場の負担が軽減されるような、職場環境の改善が合理的配慮を必要とする人たちと協働できる職場の実現には不可欠でしょう。今後も当協会は、誰もが互いに尊重される社会の実現のため、寄せられた当事者の皆様の声を真摯に受け止め、障害のある方への配慮と理解を一層深める活動をしてまいります」と表明した。
三笠書房が発表した見解
同協会は、質問状の回答期限を4月24日としており、20日時点で三笠書房からの回答はないという。
一方、三笠書房は18日、同書籍についての見解を公式サイトで発表している。
書籍の内容や出版の経緯として「職場や組織に『困った人』が少なからず存在する現実に基づいて執筆されています」と前置きした上で、「『困った人』といかに真摯に向き合い、かつ付き合うかという視点で書かれております」と説明。
批判が集まった「困った人」という表現については「病気や障害の有無にかかわらず、人は誰しも誰かにとっての『困った人』となりえます。それを念頭に『相手を知ろうとする姿勢』や『お互いさまの精神』が重要である、との視点に立っています」と釈明した。
動物に例えた描写に関して「『困った人』と『困っている人』という対比を人間の表情や姿勢等で表すことには限界があることから、『困った人』を愛らしい動物に置き換えるという表現にしました」と述べた。
また「事前告知に制約があるとはいえ、その中でご不快な思いをさせてしまったことに対してお詫び申し上げるとともに、表現についてより一層の工夫をしなくてはならないと考えている次第です」と謝罪した。


