バリトンの宮原浩暢、テノールの日野真一郎、佐藤隆紀の3人からなるボーカルグループ、LE VELVETSが7月28日(月)にBillboard Live OSAKA、7月30日(水)・31日(木)にBillboard Live YOKOHAMAでコンサートを開催する。2024年9月の全国コンサートを機に、テノールの佐賀龍彦が脳梗塞完治を目指すリハビリに専念するため、グループを脱退。2025年1月より3人体制で再出発を果たした。個々の活動の充実度が増す中、LE VELVETSという存在はそれぞれにとってどのようなものになっているのか。それらについて、宮原浩暢、佐藤隆紀に話を訊いた。
佐藤隆紀
「この3人で活動を続けていく」という選択が正しいと感じた
ーー7月28日(月)にBillboard Live OSAKA、7月30日(水)・31日(木)にBillboard Live YOKOHAMAで公演が開催されますが、3人体制でどんなパフォーマンスが披露されるのか、楽しみにしているファンも多いかと思います。
佐藤:3人体制で初の本格的なコンサートになりますが、現段階では未知数なところがたくさんあります。これからさまざまなことを確認しながら、「どういう音楽ができるのか」、「どんな変化があるのか」を体感していただけるようにしていきます。特に、2024年9月まで在籍していた佐賀さんはスパイシーな声の持ち主でしたから。その刺激的な部分を、マイルドな声のこの3人でどのように作っていくか考えていきたいです。
宮原:佐賀の声は、たとえばレコーディングでも、どれだけ音量を下げてもしっかり残って聴こえるマイクに乗りやすいものでした。それがなくなったことで「じゃあ、どうするか」と試行錯誤している途中です。ただ、この3人によるハーモニーはこれまで以上に大切にしていきたい。そして、これからのLE VELVETSの可能性を感じていただけるコンサートになるものと思います。新たなサウンドにも挑戦します。また、ビルボードライブはお客様とステージが非常に近いので、その分、僕たちの生身のパフォーマンスを楽しんでいただけるはず。
ーーあえて失礼な質問をさせてください。佐賀さんが脱退されたことで、新たなメンバーを迎えようというプランはなかったのでしょうか。
佐藤:いえいえ、まったく失礼な質問ではありません。知り合いにはよく尋ねられる話なのですが、ファンのみなさんに向けて話すことはこれまでなかったので、ぜひお話をさせてください。LE VELVETSは当初、5人からスタートし。現在は3人になりました。それまでの道のりは、みなさんが想像する何倍も大変なものでした。その中でメンバー同士がお互いの良さを知り、今同じ場所に立つことができています。そこに新しいメンバーを迎え入れて、果たして本当にこれまで以上に良いものができあがるのか。グループとしてうまくやっていけるのか。それは決して簡単なことではないと思っています。
宮原浩暢
宮原:たとえば新たなメンバーの方がすごく良い声を持っていたとしても、一緒にやってみないと分からない部分はたくさんありますね。面接やオーディションだけでは人間性は見抜けませんし。なによりこのメンバーで17年間、一緒にやってきていろんなことを話し合ってきました。だからこそ「この3人で活動を続けていく」という一択でした。
佐藤:ほかのグループで「1人脱退した」と聞けば、僕も「また新しいメンバーを入れたらいいんじゃないか」と考えちゃいます。でも自分たちのことになると、やっぱりそうはいかなかった。あと、新しいメンバーを迎えるということは、その人の人生を預かることになる。その責任の重さも考えなければいけません。せっかく入ったのに、僕たちと温度差があったりして結局「ダメでした」では、それは人生を預かる身としても良くない。ファンのみなさんの中にはもしかすると「新メンバーが入るかも」と期待していた方もいらっしゃるかもしれない。でも僕の答えははっきりと言うと「入れたくない」でした。17年やってきた仲間であれば、もし1人になにかがあっても「しょうがないよ」、「みんなでここまでやって来たんだから、乗り越えようよ」と納得できるし、支え合えたりもします。ですから、今のこのメンバーの絆を大事にして、より良いものを作っていきたいです。
ーーみなさんのお気持ちがすごく伝わってきます。
佐藤:逆に、今までそれほど多くやってきませんでしたが、ゲストを呼んでコラボレーション企画を増やしていきたい。常に新鮮なパフォーマンスが生まれますし。
宮原:そうやっていつもとは違う体制でパフォーマンスをすると、全然違う色の重なり方を表現することができます。その点でコラボは、とてもおもしろいものになるのではないでしょうか。
なにがあっても必ずLE VELVETSに戻ってくると決めています
ーーLE VELVETSはメンバーのみなさんの個人活動も充実していますね。佐藤さんは舞台『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャン役をつとめるなどしていらっしゃいます。
佐藤:『レ・ミゼラブル』は芝居はもちろんのこと、歌の技術も非常に難しいです。ただ、2025年で3期目を迎えましたが、これまで自分ができなかったことがどんどんできるようになってきた実感があります。ジャン・バルジャンは、自分を育ててくれる役です。
ーー宮原さんはリーディングオペラとして『海の上のピアニスト』(2024年)ではノヴェチェント役、『蝶々夫人』(2025年)ではシャープレス役に臨まれています。
宮原:声だけで表現する中でいろんな演出を受け、自分ができていなかったことを再認識させられています。そうすると「もっといろんな表現ができないかな」とチャレンジ精神も生まれます。また『蝶々夫人』では主人公の蝶々夫人を柏木ひなたさんが演じられましたが、これまでポップスを中心に歌ってこられた方が、『蝶々夫人』というクラシカルなものに挑まれ、本番当日は楽屋でギリギリまで声を出していらっしゃった。そのように常に努力して役を自分のものにしていく様子を目の当たりにし、とても刺激を受けました。
佐藤:そうやって個々が得た経験をLE VELVETSに持ち寄って、生かしていきたい。LE VELVETSは僕らを育ててくれた場所であり、いつまでも中心にあるもの。「自分はもっとこれがやりたいんだ」というアーティストとしての我が出てきて「さようなら」をするのは、簡単かもしれない。ただ僕らは、なにがあっても必ずLE VELVETSに戻ってくると決めています。ですので、これからも個々の仕事の枝葉を伸ばしながらも、ファンのみなさんとお会いできる機会をちゃんと作っていきたい。
宮原:仲間が外で戦っている姿は誇りでもあり、「僕も負けないようにがんばろう」と刺激にもなります。そういう気持ちで活動する中で、LE VELVETSとして再び集まって声を重ねるのが理想的な形です。
ーーファンの方は、2020年の『PRAYLIST』以来のオリジナルアルバムの発表を心待ちにされていると思います。そのあたりはいかがですか。
佐藤:話は少し出ていますが、でもまだこの3人で新たに挑戦する音楽性を模索している途中です。「4人のときと変わらないのがいい」よりも、「3人になり、色が変わっておもしろい」と言っていただきたいので。そのためにはもっと時間が必要です。僕たちの強みでもある迫力ある力強い歌声を活かした意外性のある選曲を考えていたり。「これ、おもしろいね」と思っていただけるものをコンサートなどでどんどんやっていき、3人の武器をたくさん作ってから新しい作品に取り掛かりたいです。
宮原:コンサートで披露して、「あの曲が入ったCDが欲しい」と言ってもらえるのが理想ですね。クオリティが高いパフォーマンスをして、それをCDで聴いていただき、どちらも同じように楽しんでもらえるような作品を届けたいですね。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=浜村晴奈