国際司法裁判所(ICJ)の岩澤雄司所長(中央)と裁判官たち国際司法裁判所(ICJ)は10月22日、パレスチナ自治区ガザ地区をめぐる勧告的意見を発表。ガザ地区のパレスチナ人たちの基本的なニーズが満たされるよう、イスラエルには国連やその関連機関による人道支援物資の搬入を円滑に行う法的義務があると述べた。
またICJは勧告的意見の中で、イスラエルが「国連パレスチナ難民救済事業機関」(UNRWA)の職員のうち相当数がハマスや他のテロ組織のメンバーだと主張していることについて、十分に立証されていないとも断じた。
UNRWAの中立性の欠如、「立証は不十分」
UNRWAは、イスラエル建国を発端にした1948年の第1次中東戦争後に難民となった、約70万人のパレスチナ人の救済や人道支援を目的に設置された国連機関。
活動分野は、教育や医療保健、社会保障サービス、難民キャンプのインフラ・環境改善など多岐にわたり、シリア、レバノン、ヨルダン、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区やガザ地区でパレスチナ難民の支援と保護を担ってきた。日本は1953年から同機関を通じて支援を続けている。
イスラエルは、2023年10月7日のイスラエルへの攻撃にUNRWAが加担していたなどと主張。これを受け、日本を含む多くの国がUNRWAへの資金拠出提供を一時停止した(日本は2024年4月に拠出再開を発表している)。
イスラエル国会は2024年10月、UNRWAの活動を禁止する法案を可決。2025年1月に施行されて以降、UNRWAはガザや東エルサレムで活動できなくなった。
ICJの勧告的意見によると、イスラエルはUNRWAが「ハマスや他のテロ組織によって浸透されている」として、2023年10月7日の攻撃に関してもUNRWA職員が積極的に関与したと主張していた。加えて、「UNRWAはもはや人道的目的を果たすことも、中立性、公平性、独立性の原則に従って行動することも信頼できない」としていた。
これに対し、ICJは「(これまでに提出された)情報は、UNRWAの中立性の欠如を立証するには不十分」だと指摘した。
国連は内部監査部による調査結果を踏まえて、2023年10月7日のイスラエルへの攻撃に関与した可能性があるとして、9人のUNRWA職員を解雇している。
ICJは勧告的意見で「この事実だけでは、占領下のパレスチナ領土で1万7000人以上、全体で3万人を超える職員を擁するUNRWA全体が中立的ではないと結論づける根拠としては不十分」だとした。
さらに、「不法行為の疑いが提起された際に迅速に対応したこと自体が、中立性を裏付ける強い証拠となり得る」とも付け加えた。
ICJ所長の岩澤雄司氏は、「UNRWA職員のうち大部分が『ハマスやその他のテロ組織の構成員である』という主張を、イスラエルが立証していないと裁判所は判断した」と述べた。
ICJは、パレスチナの人々に食料や水、衣類、住居、衣料品といった日常生活に不可欠な物資を確保すること、そしてパレスチナ住民のための救援活動を承認し、円滑に実施させることは、国際人道法に基づくイスラエルの義務だとしている。
国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、勧告的意見を「非常に重要な決定」だとして、イスラエルが順守することを望むと述べた。
一方イスラエル外務省は、「『国際法』の名のもとで、イスラエルに対して政治的措置を押しつけようとする新たな政治的試みにすぎない」と批判。「断固として拒否する」とコメントした。
MULTIMEDIA: Photos and videos of the reading of the #ICJ Advisory Opinion on the Obligations of Israel in relation to the Presence and Activities of the United Nations …
(1/2) pic.twitter.com/148cvzJzAQ
— CIJ_ICJ (@CIJ_ICJ) October 22, 2025


