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新NISAを始める方が増えています。人気の「オルカン」、「S&P500」だけでなく個別株も人気ですが、最初に始めるときには、「何を基準に選べばいいのかわからない」と迷ってしまうかもしれません。

そこで、この連載では、株式分析のプロたちが独自の切り口で選んだ「ミライ投資銘柄」を紹介していきます。第1回目は、毎年600~700社の決算説明会に自ら参加する分析広報研究所のチーフアナリストの小島一郎さんに、「私のミライ投資銘柄」5選を挙げてもらいました。

成長は前提に、「社会課題」取り組む企業

プロのファンドマネージャーが運用をお任せできる投資信託に比べ、個別株は、初心者にとってハードルが高い投資方法かもしれません。しかし、自分が好きな企業に、自分が決めた割合で資金を投じることができるのが、個別株投資のメリットです。

投資信託との最大の違いは「投資先企業の『オーナー(株主)』になれる」という点。自分が応援したいビジネスを展開し、将来性が期待できる企業に大切なお金を委ねる。それが個別株投資の醍醐味と言えます。

個別株投資は当然、事業成長が期待できる企業を選ぶのが大前提となります。加えて、ハフポストでは、社会問題の解決やSDGs目標達成に本気で取り組む企業を「ミライ投資銘柄」と命名。株式分析のプロたちに、「私のミライ投資銘柄」を紹介してもらう新連載を始めます。

「食」テーマに5選

第1回目は、毎年600~700社の決算説明会に自ら参加し、投資・マネーメディアの編集者たちから「知られざる優良株」の発掘に定評のある分析広報研究所の創業者でチーフアナリストの小島一郎さんが登場。

10年以上にわたり幅広い業界の約1000社超を継続調査している小島さんに、我々の生活に欠かせない「食」をテーマとした「私のミライ銘柄」5選を挙げてもらいました。

広報分析研究所 代表取締役チーフアナリスト 小島一郎さん広報分析研究所 代表取締役チーフアナリスト 小島一郎さん

小島一郎(こじま・いちろう)

分析広報研究所 代表取締役・チーフアナリスト

1997年上智大学経済学部卒。山一証券、大和証券系シンクタンクでのアナリスト、事業会社勤務を経て創業。1000社超の上場企業を13年にわたり継続調査中。今村証券社外取締役。日本証券アナリスト協会会員。著書に『成長する企業がやっている分析する広報~独自リサーチ10年以上でわかった伸びる会社、伸びない会社の違い』(みらいパブリッシング)

山崎製パン(証券コード:2212)

株価…3276円
時価総額…7216億4700万円
PER*1…16.62倍(今期予想) 
PBR*2…1.5倍(前期実績)
ROE*3…8.87%(前期実績)
配当利回り*…1.53%(今期予想) 
1株配当…50円(今期予想)
株主優待…有

Trading View提供「山崎製パン」(2212)株価チャート(6カ月)Trading View提供「山崎製パン」(2212)株価チャート(6カ月)

 「良品廉価」で物価高時代の食卓を支える

「ロイヤルブレッド」「ランチパック」「まるごとバナナ」などで知られる国内製パン最大手。レストラン「不二家」、コンビニエンスストア「デイリーヤマザキ」、ベーカリー「ヴィ・ド・フランス」などの食品チェーン事業も手掛ける。日本に輸入される小麦の約1割を同社が加工しており、全国28カ所に工場を展開し、圧倒的なスケールメリットで安価なパンを日本中に提供してきた。同社のビジネスモデルの根幹には、キリスト教徒であった創業者の教え「良品廉価」がある。 これを実現するために、原料の調達から製品の製造、物流、販売に至るまでの一貫したシステムを構築してコストを抑え、高品質な製品をリーズナブルな価格で安定的に全国の消費者へ届けることを追求している。

また同社は、日本を代表する食品会社の社会的責任として、災害時に自社商品などの食糧を無償配布する取り組みも長年継続しており、「良品廉価」の教えとともに、SDGs17の目標のうち特に目標4「飢餓の解消」に貢献している会社と言えるだろう。もちろん、食品ロスの低減(目標12「つくる責任 つかう責任」)などにも積極的に取り込んでいる。

業績面も堅調だ。小麦などの原料や燃料費の高騰、インフレにより、近年は段階的に値上げを敢行しているが、それでもほかの食品カテゴリーと比べればまだまだ安い。むしろ「安価でボリュームがある」という強みはこの時世下で一層際立ち、物価高時代も庶民の食卓の強い味方となっている。

今期は業績予想を上方修正。3期連続で最高益を見込んでおり、現在の配当利回りは1.5%前後と決して高くはないが、前期は25円から45円と大幅増配(前の年よりも配当が増える)を実現。今期も5円増配の50円を予定しており、長期で保有すれば高い利回りも期待できそうだ。株式優待では、1000株以上保有で年1回3000円相当の自社製品詰合せがもらえる。

カゴメ(証券コード:2811)

株価…2727円 
時価総額…2560億3000万円
PER…19.29倍(今期予想) 
PBR…1.39倍(前期実績)
ROE…15.73%(前期実績)
配当利回り…1.76%(今期予想) 
1株配当…48円(今期予想)
株主優待…有

Trading View 提供「カゴメ」(2811)株価チャート(6カ月)Trading View 提供「カゴメ」(2811)株価チャート(6カ月)

野菜摂取促進の取り組みですべての人を健康に

トマト加工食品の国内最大手。トマトケチャップ市場で長きにわたりトップシェア。近年はシニア世代の健康志向を追い風に、トマト飲料の機能性表示食品が業績を牽引している。

同社は「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」を目指すことを経営計画として掲げ、SDGsと親和性が高い。経営計画の目標のひとつに掲げられている「野菜摂取に対する行動変容の促進」は、成人の1日あたりの野菜摂取量350gを目標に野菜をとる食生活への行動変容につながる商品開発や情報発信を行う取り組みで、SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」に大きく寄与している。

開発途上国での支援にも積極的だ。アフリカのセネガルなどで、加工用トマトの生産・販売を行う営農会社を設立し、現地での雇用創出や収穫後ロスの軽減にも取り組む。(SDGs目標1「貧困をなくそう」目標2「飢餓をゼロに」目標12「つくる責任 つかう責任」)。

工場での再生可能エネルギーの導入(目標13「気候変動に具体的な対策を」)や、2030年までに飲料ペットボトルに使用する樹脂使用量全体の50%以上をリサイクル素材または植物由来素材とすることを目指すなど、環境問題にもコミットする。

カゴメの株を保有するメリットは、何といっても1年に1回新商品や注力商品の詰め合わせがもらえる株主優待だ(100株以上1000株未満の保有で2000円相当、1000株以上保有で6000円相当)。物価高の折、野菜ジュースやトマト缶など食品がもらえる優待は、家計には嬉しい限りだ。

Sanko Marketing Foods(証券コード:2762)

市場…東証スタンダード
株価…101円 
時価総額…40億1600万円
PER…374.07倍(今期予想) 
PBR…7.66倍(前期実績)
ROE…- -254.60%(前期実績)
配当利回り…0.00%(今期予想) 
1株配当…0円(今期予想)
株主優待…有

Trading View提供「Sanko Marketing Foods」(2762)株価チャート(6カ月)Trading View提供「Sanko Marketing Foods」(2762)株価チャート(6カ月)

「6次産業戦略」で地方経済を活性化

首都圏を基盤とする外食チェーン。かつて個室居酒屋として人気を博した「東方見聞録」や、牛丼チェーン「東京チカラめし」を手掛けていたが、2010年代半ばから業績が低迷。18年に就任した現社長である長澤成博さんの下、「アカマル屋」を積極展開しながら、大きく事業構造の変革を進めている。

自社漁船「SANKO船団」を率い、調達した食材を店舗で取り扱う「6次産業戦略」(農業や水産業などの第一次産業十事業者が食品加工・流通販売にも業務展開する経営形態)で収益性向上や事業多角化を図る。この6次産業戦略については、SDGs経営の下「社会課題の解決」を挑むべき事業成長の機会と捉えており、全国各地の産地と連携して水産事業の新しい価値を生み出すことで、地元経済の活力を取り戻し持続可能な社会の実現を目指す(SDGs目標11「働きがいも経済成長も」)。 

前期まではコロナ禍での影響が響き、赤字が続いていたが、今期は久しぶりに黒字転換が見込まれる。今後会社予想通りに業績が上向けば株価の上昇や、いずれ18年6月期以来の配当復活も期待できるだろう。また、今年6月には株主優待を拡充。100株以上の保有で、同社外食チェーン店舗で使える割引券が、加えて500株以上ならお茶漬けの具や金目鯛の煮つけ、マグロなど、保有株式数に応じた種類の海鮮加工食品がもらえる。

アクシアル リテイリング(証券コード:8255)

市場…東証プライム
株価…1144円 
時価総額…1070億2400万円
PER…12.37倍(今期予想) 
PBR…1.11倍(前期実績)
ROE…10.44%(前期実績)
配当利回り…2.53%(今期予想) 
1株配当…29円(今期予想)
株主優待…有

Trading View提供「アクシアルリテイリング」(8255)株価チャート(6カ月)Trading View提供「アクシアルリテイリング」(8255)株価チャート(6カ月)

エシカルをコンセプトとしたPB商品を展開

新潟、群馬を基盤に、「原信」「ナルス」「フレッセイ」を展開する食品スーパーチェーン。同社は、2023年から地域の社会問題の解決を目指し、エシカルをコンセプトとしたPB(プライベートブランド)商品「Hana-well(ハナウェル)」を立ち上げた。

「Earth(地球)」「Healthy(健康)」「Local(地域)」「Diversity(多様性)」「Future(未来)」の5つの軸での商品開発を行っており、地元産の原料を極力使用するほか、食品ロスの観点から規格外の農産物の活用に積極的に取り組んでいる(SDGs目標12「つくる責任つかう責任」)ほか、商品パッケージには地元の障がい者が手掛けたアート作品を採用。社会問題の解決に取り組む地域の人々とともに丁寧な商品づくりをしている。

現社長の原信一さんは、2008年の就任以降、小売業界に厳しいデフレ環境下にありながら積極的なM&A戦略を展開。グループ連結の売上規模を2倍以上に成長させたほか、利益率の高いPB商品や惣菜に注力することで、食品スーパーとしては約4%と高い売上高営業利益率をあげる。さらにはレジで商品詰めまでを行うサービスや、地域イベントへの積極的な参画を通じて顧客基盤を強化。大手スーパーが商圏に進出し競争が激化する中にあっても、安定した業績を確保している。 

配当面でも魅力的だ。配当利回りは2.72%と高い上、直近10年間は減配が無く、今期も増配予想。安定した配当収入が見込める長期保有にぴったりの高配当株だ。株主優待は保有株式数に応じた金額で、同社店舗での株主優待券、QUOカード、新潟県産米、自社開発商品詰め合わせから好きなものを選ぶことができる。

メディアドゥ(証券コード:3678)

市場…東証プライム
株価…1824円 
時価総額…277億3400万円
PER…13.83倍(今期予想) 
PBR…1.51倍(前期実績)
ROE…8.07%(前期実績)
配当利回り…2.19%(今期予想) 
1株配当…40円(今期予想)
株主優待…無

Trading View提供「メディアドゥ」(3678)株価チャートTrading View提供「メディアドゥ」(3678)株価チャート

社長が手掛ける柚子ビジネスの世界展開に注目

電子書籍取り次ぎで国内トップ。紙の本からスマートフォンやタブレットなどで読む電子書籍に本の形が変わる流れに乗って大きく成長した。コミックを軸に独自配信・ストア運営システムに強みを持つ同社は、日本カルチャーの人気が海外で高まっているなかで、大手出版社にとどまらず、中小出版社にも海外展開のチャンスが広がることに貢献し、出版業界の格差縮小に大きな役割を果たしている。

メディアドゥは、主力事業そのものが、紙の消費、配本に伴うガソリンなどの燃料消費の大幅低減に寄与する(SDGs目標13「気候変動に具体的な取り組みを」)。

また、創業社長である藤田恭嗣さん個人で、地方創生事業も手がけている。13年には、藤田さんの生まれ故郷である徳島県那賀町(旧木頭村)に、名産の木頭柚子の事業化を目指す株式会社黄金の村を設立し、11年目には黒字化に成功。さらに今年5月には木頭柚子以外の日本全国の柚子を対象に世界展開などを行っていく株式会社YUZU JAPANを発足させ、5〜6年後には地方創生のロールモデルとなることを目指すという。

「みかんは、海外に出ると“ORANGE”になるが、柚子は、海外でも“YUZU”。消滅危機自治体といわれる木頭村から上場会社を生み出し、雇用を産んで、再生させていきたい」(藤田氏)。2024年のノーベル賞授賞式では柚子ポン酢を使った料理が供されるなど、ヨーロッパでは日本産柚子の人気が高まっており、海外でも市場規模の拡大が期待される。現状、柚子の事業はメディアドゥのグループに組み込まれていないが、経営者個人の取り組みを応援する目的で同社に投資することも、「ミライ投資」の一つの形になりうる。

メディアドゥは株主優待を実施しておらず、原則配当、そして成長投資に余剰資金を振り分けることで株主還元を行っていく方針。今期の予想配当は40円で3年連続の増配となる見込みだ。PERとPBRは業界平均を下回っており、本来の企業価値よりも株価は割安と評価。今後の業績は電子書籍市場の競争激化に対する対応がカギとなる。

【株価データについて】

PER…株価収益率(株価÷1株当たりの純利益)。この数値が低いほど、現在の株価が本来の企業価値よりも割安とされる
PBR…株価純資産倍率(株価÷1株当たりの純資産)。1倍を割ると、現在の株価が本来の企業価値よりも割安とされる
ROE…自己資本利益率(当期純利益÷自己資本×100)。高いほど収益性、稼ぐ力が大きいとされる。
配当利回り…現在の株価に対して年間にどれだけの割合の配当が得られるかを示す(年間配当額÷株価×100)

株価データは2025年11月30日現在。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を勧誘・推奨するものではありません。
投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。投資には元本割れを含む価格変動リスクがあります。

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