楽しいニュースをまとめてみました。

神戸を拠点に活動する10代の少年たちの演劇ユニット、「神戸セーラーボーイズ」(以下、神戸セラボ)による定期公演vol.5『不思議の国の青年アリス』『ぜんまい仕掛けのココロ』が、12月19日(金)にAiiA 2.5 Theater Kobeで開幕した。オフィシャルレポートが到着したので紹介する。あわせて公演中に発表され、石原月斗の卒業公演となる3月公演についても紹介する。


神戸セーラーボーイズが3度目の『エーステ』劇中劇に挑戦
“友達”との深い絆をまっすぐに伝える

本作は、MANKAI STAGE『A3!』〜SPRING 2019〜の劇中劇として上演された『不思議の国の青年アリス』『ぜんまい仕掛けのココロ』を原作に、一部脚色を加え、神戸セラボ版として上演。演出を手がけたのは、MANKAI STAGE『A3!』シリーズでシトロン役を務める古谷大和。古谷は定期公演vol.1から数えて3度目の演出登板となり、メンバーの個性を生かしながら役と一体化させ、成長著しい彼らの熱量を引き出した。

上演時間は約100分。芝居パートと、神戸セラボでおなじみのライブパートの二部構成になっている。ポップな衣裳が目を引く不思議の国の世界と、蒸気が町の生活を支えるセピア調の異なるファンタジーが続いた後は、メンバーの歌やダンスをノンストップで送る賑やかなライブパートが待っている。

キャストは2023年4月の結成時より活躍するメンバーから、今年加入した新メンバーも含め10名(髙橋龍ノ介は12月24日(水)・25日(木)のみ出演)。さらにゲストとして、今年神戸セラボを卒業し、ミュージカル『新テニスの王子様』The Fifth Stageなど、話題作への出演を重ねる明石侑成がゲストとして加わった。明石は重要なキャラクターを担い、華やかな存在感で後輩たちのいい刺激となりながら、自然に彼らと溶け込む。これも温かい雰囲気が持ち味とも言える、神戸セラボならではの懐の深さだ。

教授(崎元リスト)、青年アリス(田中幸真) (c)kobesb

教授(崎元リスト)、青年アリス(田中幸真) (c)kobesb

白うさぎ(日陽龍之介)、青年アリス(田中幸真) (c)kobesb

白うさぎ(日陽龍之介)、青年アリス(田中幸真) (c)kobesb

『不思議の国の青年アリス』は、大学生の青年アリス(田中幸真)が教授(崎元リスト)の勧める紅茶を口にしたことから“不思議の国”へ迷い込む。読書ばかりして大学の友人に打ち解けようとしない、頭の固い青年アリス。彼は、異世界で遅刻魔の白うさぎ(日陽龍之介)や皮肉屋のチェシャ猫(山本歩夢)、教授にそっくりな帽子屋(崎元)に出会い、どう変わっていくのか――。

チェシャ猫(山本歩夢)、青年アリス(田中幸真) (c)kobesb

チェシャ猫(山本歩夢)、青年アリス(田中幸真) (c)kobesb

青年アリス(田中幸真)、ハートの王様(石原月斗) (c)kobesb

青年アリス(田中幸真)、ハートの王様(石原月斗) (c)kobesb

次々と現れる個性的なキャラクターたちが、ポップな音楽に乗せて走り回ったり、人懐っこく青年アリスに寄ってきたりと、ハイテンポに物語が展開。初の主役を演じた田中幸真は、冷徹なハートの王様(石原月斗)から、「友達がいない罪でお前は死刑だ」と言われて、自身の本来の寂しさに気づく内面の変化を、瞳を潤ませながら熱演した。

『不思議の国の青年アリス』 (c)kobesb

『不思議の国の青年アリス』 (c)kobesb

「目に見えるものばかりが真実じゃない」とトリッキーな帽子屋は言う。大切なものに気づいた青年アリス。ラストに向かってハッピーモードが高まると、不思議の国の住人たちも尻尾やお尻をフリフリ、キュートな明るいダンスをキャラクター全員で披露し、元気溢れる雰囲気で幕が下りた。

ボイド(明石侑成) (c)kobesb

ボイド(明石侑成) (c)kobesb

その余韻も抜けないまま、一瞬で場内は落ち着いた照明や、スチームパンクの衣裳で彩られた別世界へ。続いて上演の『ぜんまい仕掛けのココロ』は、タイトル通り“心”の存在について問いかける、感動的な物語。語り部のボイド(明石侑成)が客席から登場し、自分の弟子・錬金術師のルーク(津山晄士朗)が、法で禁じられている人造人間「S」(髙山晴澄)を生み出してしまったことを語り出す。

S(髙山晴澄)、ルーク(津山晄士朗) (c)kobesb

S(髙山晴澄)、ルーク(津山晄士朗) (c)kobesb

「S」が誕生する瞬間の津山の激しいダンスと、それを受けての髙山の機械的なロボットの動きは、身体能力の高さを存分にうかがわせる。ルークはSに、「僕の友達になってくれ」と語りかけるが、“心”がないSは「友達」の意味が最初わからない。そんなふたりのやり取りを温かく見守るルークの弟子・コルト(細見奏仁)。やがて国法警備隊長・アルフ(大熊蒼空)が、機械人形のSを「廃棄しろ」と命令する。

コルト(細見奏仁)、ルーク(津山晄士朗) (c)kobesb

コルト(細見奏仁)、ルーク(津山晄士朗) (c)kobesb

「人間の感情とは何ですか?」とルークに訊くS。ルークは悲しみや喜びについて伝え続けるも、なかなか理解してもらえない切ないやり取りが、観客を一気に感情移入させる。別世界の物語なのにメンバーの等身大な表現が、この作品の魅力をパワーアップさせていた。また、警備兵として登場する田中、崎元、山本、石原をはじめ、激しいアクションを繰り広げる終盤の盛り上がりも、体感速度の速さにつながった。芝居パートの振付は梅棒(楢木和也)、アクションは加藤学が担当している。

『ぜんまい仕掛けのココロ』 (c)kobesb

『ぜんまい仕掛けのココロ』 (c)kobesb

2本の芝居が終了すると、5分の休憩をはさみ、応援グッズを手に盛り上がれるライブパートへ。最初にゲストの明石侑成が前説をおこない、カラフルな照明が交差するなか4曲連続の神戸セラボメドレーへ。メンバーカラーを取り入れた衣装に身を包み、ハツラツとした魅力の「CHOCOLATE LOVE」や、関西弁の良さがのぞく「スイートビターシュークリーム」、クリスマスムード溢れる「Special Holiday」を届けた。トナカイのような仕草をするなど、遊び心をときおり見せて、彼ら自身がステージを楽しんでいるのが伝わってくる。

等身大の日常が垣間見える自己紹介の後は、神戸セラボ特有の「部活コーナー」へ。それぞれの得意分野を生かした、少人数での見せ場は、さらに彼らの個性が花開く。まずはフラメンコが得意な田中幸真が振付した、髙山晴澄とふたりでの「フラメンコ部」の見せ場が展開。バストン(ステッキ)を手に、交互に床を打ち鳴らしたり、同時にステップを踏んだりと、呼吸を合わせるのがキーとなる情熱のダンスで魅せる。

続く「ダンス部」は、“アクロバティックプリンス”の石原月斗や、マルチなスキルを持つ津山晄士朗、「ダンス部」に新たに入部した大熊蒼空の3人で、卒業生の中川月碧が振り付けた格好良さ全開のダンスを、全身フルに使って踊り切る。宙を舞う石原、シャープな津山、はにかむ笑顔でキメる大熊。個性の違う3人が、転調してゆく曲に合わせてロックダンスなどを披露する姿に惹きこまれる。

さらに「音楽部」の場面となり、ピアノが得意な細見奏仁や、ギターを操る崎元リスト、透明感溢れる声で魅了する山本歩夢の歌声に合わせ、15歳の日陽龍之介は打楽器カホンに初めて挑戦し、澄んだ音を響かせた。その後の全員揃っての合唱曲「大切なもの」は、細見のピアノ生演奏に乗せて。桜吹雪の映像とともに映るのは、彼らの笑顔が弾けるオフショット。青春まっただなかを送る10代の彼らならではのまっすぐな情熱が、美しいハーモニーに重なり、心に響いてくる。

ラストは、「皆さんの大切な人を思い浮かべながら聴いてください」と語りかけ、新オリジナル曲「おくりモノ」を全員で歌い上げた。積み重なっていく仲間=友達との思い出。その宝物を胸に、柔らかい笑顔を浮かべて届ける歌は、力強く振り上げたこぶしでフィニッシュした。

本作は同劇場で12月28日(日)まで上演後、2026年1月15日(木)~1月18日(日)にシアターサンモールでも公演。また兵庫の全公演で豪華なゲストを招いたアフタートークショーを実施する。

【文=小野寺亜紀、撮影=大久保啓二】


(c)kobesb

(c)kobesb

2026年3月に、兵庫と東京にて、神⼾セーラーボーイズ 定期公演vol.6 『キミが飛ぶのを待ちながら』の上演が決定した。

神戸セーラーボーイズが上演する定期公演の第6弾は、脚本家の亀田真二郎が書き下ろし、三浦香が演出をつとめる完全オリジナル新作公演。本編の芝居パートに加え、ライブパートも楽しめる二部構成となる。

また、本公演を持ってメンバーの石原月斗が神戸セーラーボーイズを卒業する。神⼾セーラーボーイズ 定期公演vol.6 『キミが飛ぶのを待ちながら』は、現メンバー10人での最後の公演となる。

公演の詳細やチケット情報は後日発表される。