
全国各地で冬の厳しい寒さが続いています。仕事始め以来、外出の機会も増え、寒空の下で“暖かい部屋に早く帰りたい、熱い風呂につかりたい”などと思いつつ、家路を急ぐ人も多いのではないでしょうか。
そこで気をつけたいのが、死に至る可能性もあるという「ヒートショック」の発症です。高齢者に限らず注意が必要というヒートショックの原因や対策などについて、日本大学医学部救命救急センター科長の山口順子先生に解説して頂きました。
ヒートショックとは?

「ヒートショックは急激な温度変化が原因で、血圧が短時間に大きく変動することによって引き起こされるダメージのことです。
最も発症しやすい状況として、暖かい部屋から寒い廊下、脱衣所、浴室を経て、熱い湯で満たされた浴槽につかる場合が挙げられます。
寒い場所では血管が収縮して血圧が上昇していきます。ところが熱いお湯につかったとたん、血管の拡張によって血圧が急激に下降し、ヒートショックを引き起こしてしまうのです」(山口先生)
「急激な血圧の変動は、めまいやふらつき、一過性の意識障害である失神を招きます。浴槽内で意識を失い、そのまま溺死にまで至ったというケースは、数多く報告されています。また、ヒートショックは、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞や不整脈を起こりやすくさせます」(山口先生)
冬に発生件数が急増

月別では12月が1387人と最も多く、1月が1330人、2月が1095人と、冬場に溺死・溺水による死亡事故が集中していることがわかります。この数字には転倒などが原因のも含まれていると思いますが、冬場に多く発生していることから、寒い時期はヒートショックによる件数が多く含まれていると考えられます。
高齢者の事故が多いのは、若い人に比べて血管が硬くなっているからです。血管硬化は血圧の変動を起こしやすくするため、脳や心臓へのダメージも強まります」(山口先生)
浴室以外でも、こういう場面で要注意
「浴室以外でも10℃以上の温度差がある場所は、ヒートショックを起こす恐れがあるので気をつけてください。具体的には、気温が下がる夜間や朝方の洗面所やトイレ、廊下や普段使っていない部屋なども注意しましょう。
近年人気のサウナや熱いお湯と冷たい水との交互浴(こうたいよく)も、短時間に血管の拡張と収縮を繰り返しますので、若い人でも注意が必要です」(山口先生)
高リスクな人は?

ヒートショックに高リスクを抱えるのは、どんな人でしょうか。
「なによりも高血圧や糖尿病、脂質異常症などの持病をもった人、狭心症や心筋梗塞、不整脈、脳卒中の既往症がある人はなおさらです。
自分では健康だと思っていても、42℃以上の熱い風呂や一番風呂、長湯が好きという人も注意が必要です」(山口先生)
住環境づくりや体調管理も予防に効果
ヒートショックの予防法にはどのようなものがありますか。
「入浴の際の予防法として、食後1時間以内と飲酒後、医薬品服用後の入浴は控えることです。特に高齢者は入浴前、家族に声をかけておきましょう。
浴室では掛け湯をしてから、38~41℃のお湯に10分以内でつかること。転倒や立ちくらみを予防するため、手すりや浴槽のへりをしっかりつかんで、ゆっくり浴槽から出てください。
日頃の体調管理と、衣類などの寒さ対策を十分に行うことは、いうまでもありません」(山口先生)
「意識がない(または反応が鈍い)、異常な呼吸である、胸の痛みや圧迫感がある、冷や汗をかいている、言葉がうまく話せない、体の麻痺やけいれんを起こしている、といった症状を確認したら、浴室内であれば、お湯を抜き、救急要請を行います。通報後、救急隊員の指示に従いながら応急処置を行いましょう」(山口先生)