THE ORAL CIGARETTES(以下、オーラル)が1月7日(水)にデジタルシングル「ERASE」をリリースした。本楽曲は、テレビ朝日系全国ネット「IMAnimation W」枠で放送中のTVアニメ『地獄先生ぬ~べ~』第2クールのオープニングテーマに起用されている。ライブ感たっぷりの疾走感あふれるサウンドや、バンドとアニメの世界観がリンクした詞世界など、オーラルらしさが詰まった楽曲に仕上がっている。また、本作のミュージックビデオ(以下、MV)にはTOSHI-LOW(BRAHMAN)、MAH(SiM)、イチロック(SPARK!!SOUND!!SHOW!!)が出演し、ロックシーンの繋がりを感じさせる映像が話題となっている。今回、SPICE編集部では山中拓也(Vo.Gt)、鈴木重伸(Gt)の2人にインタビュー。ライブ漬けだった2025年を振り返りつつ、2月16日(月)名古屋からスタートした対バンツアー『ERASE the BORDER TOUR 2026』、そして夏から始まるワンマンホールツアー『Home Sweet Home TOUR 2026』について話を聞いた。
●信頼の歓声みたいな感覚がありました
THE ORAL CIGARETTES
――2025年はとにかくライブ三昧でしたが、一年を振り返ってみていかがでしたか?
山中:もうとにかく……ファンと仲間、ライブハウスやいろんなスタッフさんに助けていただいた一年だったなと思っています。いろんなピンチがあった時に手を差し伸べてもらえるバンドなのか、そうじゃないバンドなのかは、これから先もすごく大事になってくると思うんですよ。自分たちも人と人との繋がりを大事にしてきてよかったと改めて思えた一年でしたし、これからももっともっと大事にしていこうと思いましたね。
鈴木:2025年は1発目のライブが自分たちのワンマンツアーだったんですよ。待っていてくれたファンの皆さんに久しぶりに会える。僕らがステージに上がる前から歓声が上がっていて、自分自身すごく緊張していたんですけど、その声にまず救われて。そのライブがすごく印象に残っていますね。
――バンドの復活を待ち望んでいたファンの声は、歓声を出すことができなかったコロナ禍とはまた違った感覚がありますよね。
山中:自分たちの、バンドシーンでの立場もコロナ禍の頃とは変わっている気がして。フェスのトリを任されるようになったり、中堅の立場になって後輩が出てきていたりもする。流行が移ろいやすく、音楽が消費されるといわれる時代の中で、これだけ長い間ファンが居続けてくれることのありがたみを今すごく感じていて。信頼の歓声みたいな感覚がありました。
鈴木:その後は夏フェスや『PARASITE DEJAVU 2024』に出演してくれたバンドとのツアー。他にもライブハウスの周年イベントだったり、1つ1つが印象に残っていて。感謝はもちろん、尻を叩かれるじゃないけど、初心を忘れちゃダメだなという気持ちもあって。すごく良い一年でしたね。
――2025年のスケジュールを改めて振り返ってみると、オーラルは根っからのライブバンド。ライブがないとダメな人たちだな、というのが感じ取れましたね。
山中:今までの活動のなかで、2025年は一番ライブが多かったんじゃないかな。
――この一年はライブ尽くしでいこう、というのは覚悟しての活動だったんですね。
山中:2024年に出演をキャンセルしてしまったものには絶対に全部出る。そこへの恩返しのライブをスケジュールに入れる。そうなると、今まで通りのライブの本数じゃ収まらなかったんですよね。最後まで走りきろうという感じで頑張りました。
●これまでのアニメ主題歌を作る時とはテンション感も違いました
山中拓也
――そこから、2026年の一発目が今回の新作「ERASE」です。TVアニメ『地獄先生ぬ~べ~』(以下、ぬ~べ~)のオープニング主題歌でもありますが、メンバーの皆さんはど真ん中の世代ですよね? タイアップの話を聞いたときの印象はいかがでしたか?
山中:小さい時の自分たちに教えてあげたいなと思いつつ、これまでのアニメ主題歌を作る時とはテンション感も違いましたね。ずっと触れてきた作品だったこともあって、小さい時に観ていた『ぬ~べ~』の印象と、今の時代に自分たちがこの作品に対して感じる印象。その移り変わりを感じながら楽曲を作る作業になりました。
――『ぬ~べ~』の原作を読んでいたのはいつぐらいですか?
山中:小学生くらいかな? 原作を読むよりも、アニメで観ていた世代ですね。
――『週刊少年ジャンプ』の漫画連載ではなく? 世代の違いが出てしまいましたね(笑)。
鈴木:でも、まさやん(Dr. /中西雅哉)は原作の漫画を読んでいたみたいです(笑)。
――作品は妖怪や悪霊から子どもたちを守るために奮闘する学園ホラーコメディです。当時の作品への印象を覚えていますか?
山中:「怖っ!」って感じでしたね。物語は小学校の中で事件が起きることが多くて、当時作品を観ている俺らも小学生だったこともあって、作品に登場する小学生のキャラに感情移入していた気がします。でも今は大人として、『ぬ~べ~』の先生としての目線で作品を見ることで、この作品が人と人の繋がりを描くものだったんだなと。ひとつの作品で見え方が変わる、その素晴らしさもすごく良いなと思いましたね。
鈴木:子どもの頃は妖怪やお化けは全て悪いものだと思っていたし、『ぬ~べ~』は妖怪を退治するバトルもののホラー作品なんだと思っていたんですけど、今回改めて原作を読ませていただくと、ストーリーひとつひとつに心を動かすものがありましたね。
――楽曲を制作する際、アニメサイドから世界観についてなど、何か要望はあったのでしょうか?
山中:監督からは「音に関しては全てお任せします」と言ってもらえて。でも、どのストーリーが今回のアニメ作品になるかをある程度把握しておきたくて話を聞くと、割と俺が好きなストーリーが多くて。俺らの楽曲が流れたアニメの第1回目の放送が「まくらがえし」という物語だったんですけど、それも俺がめっちゃ好きなストーリーだったんですよ。今回の第2クールのアニメは、大人が見ても楽しめる深いストーリーが多かったので、そういうところも踏まえて楽曲に落とし込んでいけたらいいなと。
――確かに、今回のアニメ作品は放送が夜の時間帯ということもあって、そういう一面もあったのかもしれないですね。お任せとはいえ、アニメの世界観を大切にしつつ、しっかりとバンドのカラーを出す。作品の方向性はどのように考えたのでしょうか。
山中:俺ら自身もめっちゃ不安だったんですよ。当時の『ぬ~べ~』の主題歌だった「バリバリ最強No.1」の印象があまりにも強烈で。でも監督からは「当時のアニメとは、映像やストーリーも別角度から作っていこうと思っているので、そこに合う楽曲として作ってもらえたら」と言っていただけたので、そこは割り切って。俺ららしく楽曲を作っていこうと切り替えられました。
●4人の音でいかにかっこいいものを鳴らせるか。またロマンを感じ始めていた
鈴木重伸
――改めて、今回の楽曲を制作した当時のバンドはどんなモードでしたか?
山中:バンド然としたバンド、というのかな? バンドである美しさ、ロックバンドのカッコ良さを追求するタイミングだった気がします。原点に戻るじゃないけど、4人の音でいかにかっこいいものを鳴らせるか。流行とかそういう音ではなく、この4人で何を鳴らすか、というところにまたロマンを感じ始めていた時期だった気がします。その思いは楽曲の中にも反映されているんじゃないかなと思いますね。
――鈴木さんは最初に楽曲を聴いたときの印象はいかがでしたか?
鈴木:アルバム『AlterGeist0000』は色んな音を使う作品だったんですけど、「ERASE」はシンプルにギターをかき鳴らすところから始まる。良い意味の荒々しさがあるし、4人それぞれの楽器の音や声がフューチャーされてて。それが楽曲の大事な骨組みになっていくんだろうなっていうのは、ド頭の音を聴いて感じましたね。
――楽曲の疾走感など、ライブでは4人全員が花形になるんだろうなと感じる仕上がりですよね。
山中:ライブでどうなるか、みたいなものは考えなくても考えている癖がついちゃっているので。
――言われずとも、ですね。アルバム『AlterGeist0000』の制作とは異なる時期だったんでしょうか?
山中:時期は全く被ってないですね。でも、割とピュアにバンドの美しさ、カッコよさをいかに音で鳴らせるかは意識して作っていました。今までだったら構成もしっかり整えて、音楽理論みたいなものを踏まえつつ楽曲制作をしていたんですよ。でも、今回はそうじゃないかも、みたいな気持ちになっていて。ひたすらカッコいいフレーズをギターでバーッとかき鳴らして。トラック数でいえば100を超えるぐらい、カッコいいメロディ、ドラムビートを入れ込んで、それをパズルみたいに組み合わせて。最終的にラストのサビでどういうブリッジがあれば、この物語が完成するかを考えました。割と、衝動に近い作り方やったかもしれないです。
――拓也さんの初期衝動を込めた音源。レコーディングでは、メンバーにどんな思いを伝えたんでしょうか。
山中:最後の最後まで、無理言ってたよな(笑)。
鈴木:今までのレコーディングでも急に閃くんですよ。音を重ねるなかで、急に「この音がいいかも! ちょっとこれ弾いて!」とかね。僕のギターで表現できるものだったら弾いたりもするんですけど、今回の曲はギターの本数も音も多くて。リードギター1本でも、オクターブ違いの音があったり、ちょっと音をずらしたりとか細かい作業が多くて。「よし、あと何本で終わりや」っていうときに「シゲ(鈴木)! ここの音やねんけど、こんな感じの音でいっぺんやってくれへん?」と言ってくるんですよ。こんな感じのやつ? ちょっと待って! っていうやり取りがあって。
山中:口だけで「ふんふ~ん♪って感じのヤツ!」って注文するんだよね(笑)。
――ギターを弾いてイメージを伝えるんじゃないんですね(笑)。
山中:シゲがギターを弾いてる隣にすっと現れて、「ふんふ~ん♪」ってフレーズを伝えるだけです(笑)。
鈴木:あ~……そこそこ! そこらへんでスタートして、「こんな音で~」と、ふわっとした感じで伝えてくるんですよ。
――口頭でもしっかりとイメージは伝わっているんですね(笑)。
鈴木:そこはちゃんと伝わってます!
山中:これで16年バンドやらせてもらってるんで(笑)。
●今作は自分たちのフィジカルを鍛えなきゃいけないという思いが強い
山中拓也
――アルバム『AlterGeist0000』では鈴木さんがDTMを活用し始めたこともあり、アレンジの提案も数多くあったようですが。
鈴木:今作は拓也にとって、この要素が絶対に大事なんだろうというものが最初から詰まっていたんです。だから今回はアレンジや構成というより、速いテンポのなかでギターの緩急をつけたりと、あきら(Ba.Cho/あきらかにあきら)や、まさやんといろんなパターンを試しながら仕上げていきました。
山中:出来上がった楽曲がすごく分かりやすくて。シゲがさっき言ってくれたように、メンバーにはドラム、ベース、ギターのリズム感や音の緩急を整理してもらう作業をしてもらって。曲の流れ方については、シゲとめちゃくちゃ話し合いましたね。あと、今作は自分たちのフィジカルを鍛えなきゃいけないな、という思いが強くて。
――フィジカルというと、バンドの体力面ですか?
山中:技術やスキルについて、まさやんが俺らよりも年上というのもあって、190~200くらいのBPM楽曲が年々しんどくなっていて。でもまさやんは自分にすごくストイックだから、身体を鍛えたりもしてくれてて。その中で200を超えるBPMの曲を作ってしまった自分がいまして……(苦笑)。
――さらに追い打ちをかける楽曲ができてしまったと(笑)。
山中:パソコン上でドラムロールを打ち込んだら、「ドゥルルルー!」とすごい勢いになってしまって(笑)。でも、実際に音を鳴らすのは自分たちなので。まさやんと相談してスキルの幅や身体面とも調整して。今作はそのフィジカルに重きを置いた制作が多かったですね。
鈴木:まさやん、BPMの数字を見た時に「本気で言ってる?」と二度見してたもん(笑)。
山中:信頼してるからさ(笑)。なんとか頑張ってくれという気持ちと、無理なところは言ってほしい。やっぱりバンドとして長く続けられることが一番なので。自分自身も、あんな早くブリッジミュートを弾きながら歌う経験は他の曲ではなかったので。スキルアップを図ったことで、俺らの伸びしろはまだまだあるんだと感じましたね。
――今回の「ERASE」を聴いた時、誰もがライブでどんな景色が見えるのかを想像すると思います。ライブの1発目に聴くのも楽しそうだし、最高潮を迎えた時にはより爆発力が上がりそうだし。でも、どこで披露しても演奏するメンバーは大変そうだな……と感じるくらいの疾走感のある曲で。
鈴木:本当にそうなんですよ……。年末に2回ほど演奏したんですけど、終わってからメンバーと「最初にやったらやったでしんどいし、最後にやってもしんどい。これは鍛えんとアカンで……』と言いましたもん(笑)。
山中:曲をどこに入れるかを気にしないくらい、俺らが鍛えないとダメですね。
――作詞については、バンドが本来持っている世界観がギュっと詰まりつつ、アニメの世界観もしっかり伝わるストーリーが描かれています。
山中:今までにも、いろんなアニメ作品のタイアップを手掛けさせてもらうなかで、オーラルが伝えたいこととアニメの世界観、それぞれ半分ずつをドッキングさせるやり方をしてきたんです。でも今回の「ERASE」では、『ぬ~べ~』が自分の中で少なからず影響を与えていた作品でもあったので、そういうバランスは考えなくて。『ぬ~べ~』に対して100%の思いで書き下ろしても、自分たちが伝えたいことに繋がっていく気がして。今回は『ぬ~べ~』に寄り添った歌詞を書き上げましたね。
――冒頭で話していた妖怪や悪霊の世界観はもちろん、人間が持つ心の闇の部分や社会風刺的な側面が、バンドの世界観にハマったんですね。
山中:小さい時から妖怪や幽霊のキャラデザインが好きだったり、物事を少し斜めに見てしまう性格やったんやろうなと、改めて思ったんですよね。自分たちが作る楽曲が自然とこういう形になっているのは、『ぬ~べ~』の世界観にすごく影響されていた部分なんだと感じましたね。
――歌詞に出てくる英詞のシンプルさも気になりました。
山中:例えば「狂乱 Hey Kids!!」や「BLACK MEMORY」とか。曲の1発目にどういうワードを持ってくるかを考えた時に、シンプルな言葉がどんどんダサく感じちゃうんですよ。なんというか……作曲家、作詞家としてのジレンマがあるんですよね。昔はサビにわかりやすい言葉を持ってきたほうが盛り上がるしと思ったこともあります。
――いろんな解釈を持たせた方が世界観も広がるし、没入感も生まれる。難しい選択ですよね。
山中:そういうものと戦いながらこの3~4年間はずっとやってきたんですけど、今回の「ERASE」に関しては、シンプルでわかりやすい英語を入れた方がいいんじゃないかと素直に思えたんです。
鈴木:僕はレコーディングの時に音に対する集中力ばっかり使ってしまうタイプなので、恥ずかしながらライブをしている時にようやく歌詞の感情やワードが頭に入ってくるんですよ。ライブで培われていく世界観というか、自分自身も拓也が描く歌詞に鼓舞される瞬間がすごくある。感情に訴えかけてくる瞬間とか、一緒に歌いたくなるんですよね。僕、マイク無いんですけどね(笑)。
――ライブ中、気持ちよさそうに歌っている姿をよくお見かけしますね。
鈴木:人前で歌いたいわけじゃないんですけどね(苦笑)。今後はもっともっと自分自身で解釈を深めていきたいなって思っています。
――『ERASE』はMVにも注目が集まっています。ここまでいろんな話を聞いておいて申し訳ないんですが……。映像が衝撃すぎて、歌詞が頭に入ってこなかったです(笑)。
山中:YouTubeのコメント欄には、曲が入ってこないと書かれてましたね(笑)。歳を重ねるほど、ふざけたい気持ちが増していってるんですよ。今回のMVも真面目なんだけど、真面目にふざけてる。少し前までは「カッコよくいなきゃいけない」、「より王道でなければいけない」とか、そういう制限のなかでいかに自分たちを高めていくかを考えていて。もちろんそれもすごく良い時期で、今の俺らのライブにもすごく現れていることなんですけど、衣装を気取らなくなったり、MCも緩くなったり。肩の力が抜けた状態でファンと接することの美しさみたいなものが、今の自分にはすごくしっくりきていて。そういう部分をMVにも残したかったんです。
――崩しの美学、ですね。確かに最近のライブでのMCもすごくリラックスした雰囲気があります。ここ数年、MVには前作からのリンクも感じられますよね。
山中:MVの監督は前作と同じ大山卓也さんです。前作「OVERNIGHT」もアニメ『桃源暗鬼』で「鬼」がテーマだったので、「ERASE」でもリンク感のあるものを作ろうとは言っていました。「UNDER and OVER」で登場した車は「OVERNIGHT」にも出ていましたし。「ERASE」ではどうふざけるか。次は全力でやりましょう! ということで……。
――その結果、ロックシーンの先輩が鬼や悪魔になって登場したと。
山中:「鬼」といえば、TOSHI-LOWさんしかいなかったんでね(笑)。
●今まで対バンをしてそうでしてこなかったバンドを誘ってツアーをする
鈴木重伸
――「ERASE」を引っさげ、2026年は対バン形式でのライブハウスツアー『ERASE the BORDER TOUR 2026』からスタートします。さらに夏からは、ワンマンでのホールツアーも決定。シーンの仲間との繋がりを楽しみつつ、ホールツアーではワンマンでTHE ORAL CIGARETTESを堪能できる。贅沢な時間が続きますね。
山中:無性にワンマンライブがしたくなったんですよね。コロナ禍が終わって以降、対バン形式のライブがすごく多かったんです。ロックシーンの特攻役みたいな意識が自分たちの中にあって、対バンライブを増やすことでファンのみんなにいろんなバンドに触れてもらったり、「ロックシーンって面白いな」と感じてもらおうという気持ちがあって。でも、次のワンマンライブではTHE ORAL CIGARETTESのために時間を使う、そんな期間を作りたかったんです。その前に、これまで自分以外のメンバーはそんなに交友がなかったけど、この『ERASE the BORDER TOUR 2026』をきっかけに仲を深めてくれたらいいなという思いで、今まで対バンをしてそうでしてこなかったバンドを誘ってツアーをすることにしたんです。
――ENTHやフレデリックなど、これまでにない組み合わせですよね。
山中:ENTHとかは俺自身はずっと繋がりがあったんですけど、メンバーとももっと仲良くなったら面白いのになと思ってたんですよね。『ERASE the BORDER TOUR 2026』を最後までやりきって、ホールツアーである『Home Sweet Home TOUR 2026』からは自分たちのファンと、自分たちのための時間を使うタームに切り替えていきたい。その意思の表れが今回のツアーなんです。本来なら夏フェスの時期でガンガン出演しているはずなんですけどね。
――スケジュールを見ると、そこは確かに気になりました。
山中:夏フェスの期間に、ワンマンライブでどうファンのみんなと向き合えるかを試したくて。やっぱりフェスに行ったほうがお得じゃない? と、自分がお客さんの立場でも正直思っちゃいますよ?
――1日でたくさんのアーティストのステージを楽しめますからね。
山中:パーティ感もありますしね。でも、そんな中でワンマンライブのチケットを取ってライブに来てくれるファンって、本当にかけがえのない存在だなと思うんです。そういう人たちに向けてしっかりとライブがしたい。『Home Sweet Home TOUR 2026』のタイトルみたく、ファミリーと一緒に、これからの人生を歩もうねっていう覚悟のライブにしたいんです。今回のツアーは自分たちにとっても挑戦。この時期の開催でいいのかって、メンバーともめっちゃ話し合いました。
鈴木:このタイミングでのワンマン、しかも席ありのホールツアー。そこでは音の説得力が必要になると思うんです。「ERASE」もそうですけど、バンドマンとしての技術面の向上をお客さんにしっかりと届ける。バンドを16年やってきた中で、自分たちの伸びしろをチーム一丸となって見せたい。ブラッシュアップを続けて、もうワンステップ先へ進みたい。今回のホールツアーは、よりストイックなものになるんじゃないかなと思っています。THE ORAL CIGARETTESというバンドと、自分たち自身も向き合うタイミング。お客さんにもそんな僕らの姿を観てほしいです。
●やっぱり俺らは橋渡しをしなきゃいけないバンドなのかもしれない
THE ORAL CIGARETTES
――目の前のステージにはTHE ORAL CIGARETTESしかいない。お互いがお互いを確かめ合う、すごく幸せな時間になるんでしょうね。ホールツアーが終わった後、バンドがどうなっていくのか楽しみですが、今のモードはどんな感じでしょう。
山中:去年アリーナツアーをやるまでは、先輩たちのライブから、いろんなバンドの形を感じさせてもらったんですよね。大きいハコにこだわらずにライブをするバンドもいれば、世界を目指すバンドもいる。そのどれもが正解で。自分たちに一番合うやり方を見つけなきゃいけなかったんですけど、あの頃の俺らは「ライブハウスやロックシーンがもっと日本の音楽シーンで認められてほしい」という気持ちが強かった。日本のロックバンドはこれだ! というものを、俺ら自身が納得していなかった部分がありました。
――なるほど。
フェスでもそういう発言をしていたし、「もっとオレらのシーンを知ってくれよ!」という思いが強かった。その結果、「ライブハウスで生きていく選択肢もあるよな」というモードに入ってたんですよね。でもアリーナツアーをやってみて、そこでしか得られない多幸感やお客さんの空気感を感じることができた。そこで改めてTHE ORAL CIGARETTESというバンドを見直した時に、「やっぱり俺らは橋渡しをしなきゃいけないバンドなのかもしれない」と思ったんです。大きいハコも小さいハコもどっちもやれて、それを繋いでいくバンド。そういう役割があるのかもしれないって思ったんです。アリーナからさらに次の段階の目標を掲げてバンド活動をするほうが、自分たちもレベルアップするし、バンドとしての進化も見えるんじゃないかなって。年末、『RADIO CRAZY』に出演した時に、大阪はオレらにとってのホームやし、次の目標を言っちゃおうと思って。「スタジアムでのライブ」をひとつの目標として掲げさせてもらいました。
――その時のライブを観ていましたが、お客さんの歓声がすごく大きくて、期待が高まりました。
山中:今回のホールツアーも、そこに向けての一環。スタジアムでのライブに向けて、自分たちができることをどう積み上げていくか。THE ORAL CIGARETTESはいまその目標に向かっているんです。
――その目標はすでに見えている?
山中:自分たちの中では見えています。でも、それに対してどれだけ自分たちがステップをクリアしていけるか。それを今後の活動で見せていかないといけないですね。
取材・文=黒田奈保子 撮影=ハヤシマコ