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オリンピック選手たちも編み物にハマっているオリンピック選手たちも編み物にハマっている

SNS時代のオリンピック観戦で増えた楽しみの1つが、選手たちがTikTokやInstagramで公開する“選手村の舞台裏”だ。チームウェアや開会式の衣装といった話題に混じって、今年の大会ではある投稿が目立ったーー。

編み物だ。

編み物好きのオリンピック選手といえば、イギリスの元飛込競技選手のトム・デイリーさんが有名だが、実は他にもたくさんいる。

アメリカ代表チームの中では、銀メダリストのスキーヤー、ブリージー・ジョンソン選手とベン・オグデン選手が編み物好きを公言している。スノーボーダーのマディ・マエストロ選手も大会前に新作ニットを披露した。スピードスケートのグレタ・マイヤーズ選手は、ミラノに応援に来る母のためにアメリカ国旗柄のバッグをかぎ針編みで制作した。

マイヤーズ選手はハフポストUS版に、「とても癒されるんです。スケート以外に集中することができました。完璧にいかないこともあるけど、その過程を大事にしています」と語る。

コロナ禍に編み物にハマったというジョンソン選手はチームUSAの動画で、「メダルを取り始めた頃、良い結果を出せた時はいつも新しいヘッドバンドや帽子を身につけていることに気づいた」と言い、編んだ作品は試合での“お守り”のような存在になっているという。

カナダ代表では、バイアスロンのアダム・ルナルズ選手が自身を「2026年公式ニッター」と名乗っており、セーター制作の進捗を投稿したところフォロワーが急増したという。チームメートのジャスパー・フレミング選手も「編み物クラブ」に仲間入りした。

編み物は、手作りのギフトを作ったり時間をつぶしたりする手段というだけではない。こうした趣味は、マインドフルネスや集中力、リラクゼーションを高める効果があることが示されており、オリンピックのような強いプレッシャーがかかる環境では重要なスキルとなる。

専門家によれば、編み物のような趣味には他にも、同じ関心を持つ仲間と繋がったり、メダルが懸かっていない場でも達成感を得られたり、さまざまな利点があるという。

メンタルヘルスへの影響

オリンピックに向けての準備において、多くの人は身体的なトレーニングを思い浮かべるだろう。しかし実際には、精神状態も成功を左右する極めて重要な要素だ。とりわけ「立ち直る力(レジリエンス)」は欠かせない。

体操のシモーネ・バイルズ選手やテニスの大坂なおみ選手は、メンタルヘルスのために競技から距離を置いた時期があった。

金メダル有力視されていた米フィギュアスケーターのイリア・マリニン選手も、メダルを逃し8位に終わった後、「強く見える人も内側では闘っている」とSNSに投稿している。

アスリートの感情調整などに従事するケンタッキー大学健康科学部のアシュリー・サムソン教授はこう説明する。

「身体能力や才能はもちろん重要ですが、脳の状態が整っていなければ、体を正しくコントロールすることはできません。感情が過度に乱れると、論理的・戦略的に考えるのが難しくなります」

強いプレッシャーの中で、ストレスにうまく対応するスキルを持っていることは極めて重要だ。

マイヤーズ選手は2025年、五輪出場枠を争う中でスケートのブレードが壊れるというトラブルを経験したという。新しいブレードに替えたものの、慣れるまでには時間がかかる。

「自分がどんな結果を出せるのか、不安でいっぱいでした。でも、母のために“アメリカ国旗バッグ”を編むことで、落ち着くことができたんです」

「リンクではストレスを感じても、家に帰ると『今日は持ち手を仕上げよう』『今日は星を縫いつけよう』と考えるんです。そうやって少しずつ、気持ちが切り替えられるようになり、ストレスを前向きに発散できる手段になっていったと思います」

競技以外に大切にしているものを持つ

勝負の世界である以上、全員が勝者として帰れるわけではない。そして、その敗北を受け止めるのは、世界中の視線が注がれる舞台ではなおさら難しい。

競技以外に大切にしているものを持つことは、アスリートがより健全に「負け」に対処する助けになる、とサムソン氏は説明する。

「アスレチック・アイデンティティ(アスリートとしての自分)に関する研究は数多くあります。アスリートが自分という存在を定義するうえで、“アスリートの自分”の割合が大きくなりすぎるほど、問題に直面しやすくなります。それは、自分のアイデンティティが“アスリートであること”に支配されると、あらゆるパフォーマンスの結果によって、生きるか死ぬかのように感情が左右されてしまうからです」

それは、うつや不安障害といったより深刻なメンタルヘルスの問題につながる可能性もあるという。

「一方で、よりバランスの取れた自己認識を持つアスリートの場合は、『今日は競技が思うようにいかなかったけど、自分には他にも価値を感じられる側面がある。だから、それだけで完全に打ちのめされはしない』と考えられるのです」

カナダのフレミング選手も編み物にハマっている1人カナダのフレミング選手も編み物にハマっている1人

なぜ編み物が効果的なのか?

アスリートが編み物に安らぎを見いだす理由には、いくつかの要因がある。

編み物による治療効果について講義やイベントを行うイギリス在住の臨床心理士ポーラ・レッドモンド氏によると、編み物は心を落ち着かせ、考えすぎを遮り、リラックス反応を引き出すことにつながるという。

実際、2024年の研究でも、メンタルヘルスの問題を抱えている人は、編み物をすることによって「思考が明瞭になり、ストレス管理がしやすくなる」と報告している。

リズミカルで反復的な動きはリラックス反応を活性化させ、思考の整理やストレス軽減につながる。初めは難しく感じるかもしれないが、慣れれば1列編む間、容易に集中ゾーンに入ることができる。

一方で、自己表現や創造性を発揮し、作品を完成させる達成感も感じさせてくれるという。

「編み物は、もし失敗しても、ほどけばいい。最初に戻るだけです。日々の中で、小さな失敗の機会を持つことはとても重要です。ミスに対してそのままにするのか、直すのか…など、違う対応を試すことができるからです」とレッドモンド氏は語る。

完璧主義に悩む選手にとって、これは重要だ。

マイヤーズ選手は、「私を含め、アスリートの多くは完璧主義に苦しんでいます。高い基準を掲げ、小さなミスでも許せません。でも編み物や絵画などではミスは当たり前なんです」と話す。

レッドモンド氏はまた、編み物は手軽で持ち運べるため、「いつでもどこでもできるし、作品の完成へと進めることができる」とその長所を述べた。

オリンピックのように自分ではコントロールできない要素が多い環境の中では、糸の色から何を作るのかまで、自分が主導権を握っている編み物のようなアクティビティは助けになる。

つながりをもたらす

最後に、趣味を始めることは、同じ関心を持つ仲間と出会うきっかけにもなる。強い社会的つながりがもたらすメンタル面でのプラス効果も期待できる。

「文化的ルーツに触れたり、誰かのために贈り物を作ることで、他の人への思いやりを表現することにもつながります」とレッドモンド氏は話す。

カナダのフレミング選手は、遠征中の空き時間を有意義に過ごせるよう、コーチがチームに編み物道具を用意してくれたと明かしている。

フレミング選手はハフポストUS版に、「私たちカナダ代表チームは本当に結束が強いですが、共通の趣味があるのはクールなことだと思います」とメッセージで綴った。

実際、カナダ・バイアスロン代表のInstagramには、フレミング選手やルナルズ選手らチームメートが大量の毛糸に囲まれて編み物をしている写真が投稿されている。

もちろん、編み物の恩恵を受けられるのは、オリンピック選手だけではない。たとえ作品が完璧でなくても、自分が編んだものを身につける喜びや、そこから生まれる達成感やコミュニティとのつながりは、誰にでも味わえる。

マイヤーズ選手は編み物の魅力についてこう語る。

「なんというか、心が落ち着くんです。スケート以外で自分を幸せな気持ちにしてくれるこがあるのはうれしいですね。だって、スケートはうまくいく日もあれば、そうじゃない日もある。それがエリートスポーツというもの。でも、かぎ針編みは……いつもそばにいてくれる」

トップアスリートたちが、誰にでもできる素朴な趣味に夢中になっている姿を見るのは、とても新鮮だ。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

【画像】みんなうますぎる!オリンピック選手たちの編み物作品はこちら

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