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『GEMNIBUS vol.2』に収められた短編の一つ『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』を手がけた大川五月監督『GEMNIBUS vol.2』に収められた短編の一つ『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』を手がけた大川五月監督

東宝が才能ある新鋭を発掘するプロジェクトの第2弾『GEMNIBUS vol.2』が3月6日よりTOHOシネマズ 日比谷にて1週間限定公開中だ。

全6編のうちの一つ『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』の主人公は、広告代理店で働く菜摘(黒島結奈)。ニューヨークから帰国後、妊娠していることに気づいた彼女は、キャリアとの間で揺れながら、出産を決意する。しかし母・登紀子(浅野温子)に「子どもの父親はアメリカ人」と伝えたことで、思わぬ方向に転がっていく。

3月4日に開催された完成報告会で、大川監督は「子どもが生まれるのは人類が進んでいくために必要なことなのに、子どもが生まれた次の段階で影響を受けるのは主に女性。子どものいる男性に“生き方の多様性”とはあまり言われないけれど、女性には言いたくなってしまうこの感じは何なんだろう?と思っていました」とコメント。自身も出産後の変化の最中、焦るように書いたのが本作だと言う。

「ただ、このような女性が抱える課題を真面目に書きすぎるよりは、真実や避けられない問題を笑ってしまおうと思いました。鋭いメッセージだけど真剣になりすぎずに考えてみてほしいです」(大川監督)

同様に、作品のタイトルも勢い重視で決めたそう。「You Cannot Be Serious!=ふざけるな!」とは、往年のテニスプレイヤー、ジョン・マッケンローがプレー中に審判に向かってぶつけていた名台詞だ。切実な問題に笑いをミックスした意図や、今後の創作に向けた展望を単独インタビューで掘り下げた。

『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』

女性が漠然と不安を抱えるのは日本だけじゃない。普遍的な、どこにでもある問題

―『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』は女性のキャリアと出産・⼦育ての両⽴がテーマのひとつになっている作品ですね。物語の設定には監督の体験が反映されているのでしょうか?

大川五月監督(以下、大川):私自身は映画作りを続けたいという気持ちもありましたが、年齢を考慮すると「今産まないと、もう後がない!」という想いもあって、子どもを産もうと決心しました。

ですから予期せず妊娠して、キャリアがどうなってしまうんだろう…という菜摘とはバックグラウンドが違いますね。ただ、欲しいと思って産んだ人も、そうでない人も、子どもを持つことに対する漠然とした不安というのは共通してありますよね。だから状況は異なっても、私のリアルな想いは強く反映されています。

しかもこの不安って、日本の女性だけが抱えているわけではなく普遍的な問題だと思うんです。私の夫はスコットランド人で、彼の妹も長くインテリアデザイナーとして働いていたのですが、子どもを2人産んだあと、キャリアを諦めざるを得なかったという話も聞いています。だから本当に“どこにでもある話”なんですよね。

―主人公の菜摘が、母の登紀子に対しても、はっきりと主張するのが印象的でした。どのようにキャラクターを思い描いたのでしょうか?

大川:菜摘のキャラクターは、私個人というより、アメリカで映画について学んだことが大きいですね。映画を作る上では主人公を能動的に動かすことが理想的な形だとよく言われてきたんです。それは女性であるとか子どもがいるとかに関わらず、一般論としての話です。

菜摘にしても、彼女に何かハプニングが振りかかって…の連続だと受け身になってしまいがちなところを、うじうじしてほしくないという気持ちもあって、登紀子ともぶつかっていくキャラクターにしました。

『ダイ・ハード』だって、主人公が目の前にある危機に対して行動を起こしていくから面白いわけで。

『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』の一場面より。黒島結菜さん演じる「菜摘」『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』の一場面より。黒島結菜さん演じる「菜摘」

真面目なテーマも、笑いを混ぜて伝えることで、受け入れやすくなる

―真面目なテーマだけど笑えるものにしようという気持ちは、映画を製作される手前の段階で意識していたのですか?

大川:そこもやはり海外に住んでいたときの経験が大きいですね。渡英して間もない頃、まだ英語が流暢に話せなかったときは、なかなか周囲の輪に入れなかったのです。

自ら話しかけなくても周囲が寄ってくるような魅力があればいいけれど、私にはなかったので(笑)、自分から笑いを取りにいったら、周りが私を認識してくれるようになったんです。そのほかも、普段から派手な格好をしていると、話しかけてもらうきっかけになって、自分も意見を言いやすくする助けになっていると思います。

相手のガードを下げるためにも、笑いが果たしてくれる役割って大きいんですよね。

『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』の一場面より。浅野温子さん演じる「登紀子」『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』の一場面より。浅野温子さん演じる「登紀子」

―対人関係を柔和にしてくれる側面がありますよね。

大川:また、スコットランドで暮らしていた時には、ケン・ローチ監督に取材するご縁をいただいたことも心に残っています。

ローチ監督は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』『家族を想うとき』など労働者階級や貧困などの社会問題を扱うことが多く、当時制作した『SWEET SIXTEEN』も貧困層の少年たちを描いた深刻な物語です。だけど、見てみるとすごく笑えるシーンもあります。

どうしてこんな笑いを起こせる物語ができるのかと監督に聞いてみたら、「被写体の彼らと過ごしていたら、君も笑顔になると思うよ。彼らはとても面白いから。ありのままの彼らを描くことで自然と笑いに繋がるんだ」と言っていたんです。

人生って悲しいことだけでも、楽しいことだけでもないですよね。笑いの中に辛い現実をそっと入れてみるという手法は私もすごく好きだな、私もやってみたいと思えた出来事です。

この作品を見る人も、女性がキャリアと出産、子育てで板挟みになるようなテーマを全く知らないわけではなくて、見聞きしたことくらいはあると思うんです。そこで怒るとか、説教するような作品を投げかけても、観客には響かないし、むしろ拒否反応を起こるというのが現実です。

伝わるものも伝わらなくなるのはもったいないから、見る人にとって「こういうことあるある」と思ってもらえる、ちょっとスッキリした気持ちになってくれるものになればいいなと思います。

女性には自分たちが経済を動かしている自信を持ってほしい

―『GEMNIBUS vol.2』は6作品中4作品が女性監督でした。とはいえ映画産業では女性監督による作品は圧倒的少数派というのも事実です。管理職や政治家、起業家などもやはり女性の割合が少ないこの状況に何か課題を感じていますか?

大川:日本人女性はもっと自信を持っていいし、もっと要求していいと思うんです。先日、子どもの授業参観に行ったら、子どもたちの着ている服や、持ち物の8割か9割はきっと母親が選んだものだろうと思ったんです。それらの原資がどこから来ているかはさておき、女性が選んだもの、いいと思ったものが大きくトレンドになるとか、経済を動かしている自覚を持っていいと思います。

映画製作に関しては、女性監督の波が来ているから、その波に乗ってやるぞ!と考えているような人はそんなにいないんじゃないでしょうか(笑)。そんな余裕を持って作れるわけでもないというのが実情ですかね。

自分はこういう作品を作りたいと考えているところに、社会の流れが合致して、結果としてそこに乗れたらいいね、程度の感じかもしれません。それよりも、作品を選ぶ決定権を持っている人たちの意識がこちらに向いてくれたことが素晴らしいことだと思います。

大川五月監督大川五月監督

人種やアイデンティティにも踏み込んだ長編に広げていきたい

―短編の『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』は長編としても掘り下げられる余地がある作品だと感じました。長編として制作する際には、どのような部分をより膨らませたいですか?

大川:元々、長編として構想していた作品をプロジェクトの開発経緯によって短編にしたものなので、そう言ってもらえると大変嬉しいです。短編では菜摘の出産に対する葛藤をメインに描きましたが、お腹の子どもの父親はアメリカ人ということで、人種が裏のテーマでもあります。なので、長編を描くときは、菜摘と登紀子、そして生まれてきた子どものその後と、アイデンティティの物語を描いていきたいです。自分の中にある偏見をどう受け入れるかまで、今後踏み込めたらいいですね。

映画『GEMNIBUS vol.2』

Ⓒ2026 TOHO CO., LTD. 

TOHOシネマズ 日比谷にて一週間限定公開中

■タイトル:『青い鳥』
■監督・脚本・撮影:増田彩来 
■出演:森七菜、黒川想矢/井浦新
■音楽 : haruka nakamura


■タイトル:『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』
■監督・脚本:大川五月 
■出演:黒島結菜、浅野温子、清水美砂、坂口涼太郎、
葵揚


■タイトル:『顔のない街』
■監督・脚本:村上リ子
■出演:吉田美月喜、香椎由宇、金沢友花、
木内舞留、川口ゆりな、窪田彩乃
■原案:西田充晴(ペンネーム:奇多郎)「顔のない街」(東宝×ワールドメーカー短編映画コンテスト 大賞受賞作品)


■タイトル:『インフルエンサーゴースト』
■監督・脚本・編集:西山将貴
■出演:西野七瀬 本郷奏多/武田玲奈/カルマ 青島心


■タイトル:『ソニックビート』
■監督・脚本:関駿太
■出演:西垣匠 山﨑天(櫻坂46) 戸塚純貴


■タイトル:『もし、これから生まれるのなら』(アニメーション)
■監督・脚本:土海明日香
■出演:林咲良 松村くるみ
■音楽:原摩利彦
■主題歌:坂本美雨「Lullaby」(Universal Music)
■制作:騎虎
公式X:@moshikore_anime

東宝が才能ある新鋭を発掘するプロジェクトの第2弾『GEMNIBUS vol.2』。3月6日よりTOHOシネマズ 日比谷にて1週間限定公開中東宝が才能ある新鋭を発掘するプロジェクトの第2弾『GEMNIBUS vol.2』。3月6日よりTOHOシネマズ 日比谷にて1週間限定公開中

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