なぜこうした「悪気のない」発言が問題なのかもし誰かに「もっと笑いなよ」と言われたり、ビュッフェで取った料理の量に口出しされたり、体重についてコメントされたり、意見を言っただけで「偉そう」などと言われたら…
多くの人は「あなたには関係ない」「放っといて」と言い返すことができるだろう。だが、それが大人と子どもの間での会話の場合、なぜかそうしたルールは無視される。
外見へのコメント、性別による固定観念の押し付け、身体的なスキンシップの強要が、何のためらいもなく行われる。
そこには明かな力の不均衡がある。子どもは大人のように言い返すことができないため、境界線を越えた言葉は跳ね返されることなく、心に残る。そしてそれは、「どんな扱いを受け入れるべきか」「自分の体は何のためにあるのか」「自分の価値は何で決まるのか」を形成する内なる声となっていく。
ハフポストUS版は、実際の親たちに、他の大人が子どもに投げかけた最も不快な言葉について質問した。また、心理学者にも取材し、こうした一見無害に見える発言が与える影響と、境界線を越えずに子どもと関わる方法について話を聞いた。
親たちが語る「子どもが他の大人に言われた最も違和感のあった言葉」
「家族の集まりの際、幼い娘がその場に馴染めず、泣きながらも頑張って私に気持ちを伝えようとしいた最中、誰かが娘に『笑顔を見せて?』と言ったのです。娘はその場で動きを止めて『は?』という表情をしました。本当に軽視されていると感じました」
「他にも、プールで他の子と競争していた際、ゆっくり泳いでいた娘に、ある大人が『女の子みたいな泳ぎ方だね』と言いました。娘はそれが侮辱として言われたことに戸惑っていました。『女の子みたい』が悪いことだと思ったことはなかったのです」— Lauren Manakerさん
「『あの子は本当にボス気取りだね』と言われました。私は『自己主張ができるだけです。自分の意見をはっきり言えるリーダーを育てているので』と返しました。子どもはまだ幼児ですよ」— Nicole Cosgroveさん
「言葉ではありませんが、親戚が子どもと無理やりハグをしようとすること。子どもが私の後ろに隠れると、『シャイなんだね』と言われますが、私はいつも『自分の体は自分のものだと分かっているだけ。命令するんじゃなく意見を聞いたら、子どもの反応は変わるかもしれない』と返します。気まずい空気になっても、子どもには自分の境界線より他人の都合を優先する人間になってほしくないですから」— Ashley Staffordさん
「3歳の息子が私の兄に別れ際のキスをしようとしたら、車にいた全員が『男の子は男の子にキスしない』と言い出しました。私は『意見を持つのは自由だけど、私の子どもにそれを教えないで』と言いました。— Del Rey Dorseyさん
「夫は色白のスペイン人で、私は褐色肌。娘は白人寄りの見た目なのですが、夫の友人が娘に『あなたは黒人じゃない』と言ったんです。娘は2歳で意味も分かっていませんでしたが、私はその人に徹底的に説教しました」— Brianna Titus-Gilliamさん
「見知らぬ人が普段は社交的なうちの子に話しかけた時、期待した反応が返ってこないと『恥ずかしがり屋なの?』と言うことがある。子どもに社交的に振る舞うことを求め、できないと『シャイ』などとラベル付けする風潮が嫌です。それと、祖母が子どもの体についてよくコメントします。うちの子はよく食べるのですが、『たくさん食べるね。でも太ってないから大丈夫』などと言われます」— Leah Wagmanさん
「祖母は、私の成長期中の子どもたちに『食べすぎ』『太るよ』と言います。私は若い頃に摂食障害を2回経験し、1回目は18歳で、2回目は20代後半でやっと克服しました。本当に苦しい闘いだったので、子どもに向けられる言葉は胸に刺さります」— Jessie Mayさん
なぜこうした「悪気のない」発言が問題なのか
意外に思うかもしれないが、こうした発言の多くは「悪意ある人」からではない。思春期心理学者でポッドキャスト「Parenting Teens with Dr. Cam」の司会者であるキャメロン・キャスウェル氏はこう語る。
「子どもに向けられる『不快』な発言の多くは、大人の善意から来ています。子どもの視点でどう聞こえるかを理解していないだけなのです」
問題は、古い文化的な価値観が無意識に表に出てしまうことだ。親しみを示そうとして軽い冗談や褒め言葉のつもりで発言するが、大人の言葉は深く内面化されてしまう。
「大人の言葉は、成長するにつれて子どもの内なる声になります。それが自己認識になります」と、家族療法士のオードリー・シェーン氏は語る。
「私たちは、こうした言葉を通して『あなたは何者か』『何を期待されているか』を教えているのです」
影響は言葉そのものにとどまらない。
「体や外見、成果を評価すると、子どもは『存在そのもの』ではなく『何を持っているか』『何をしているか』で価値が決まると学びます」とシェーン氏は話す。
キャスウェル氏も共感し、こう加える。
「外見や振る舞いを評価されると、子どもは『感じる存在』から『評価される存在』に変わります。自分の気持ちより、正しく見えているか、好かれているかを常に気にするようになります」
意図よりも、どう受け取られるかが重要だ。
シェーン氏は、「子どもへの言葉はすべて、社会的な規範や期待を伝えています」と語る。
「伝えたいメッセージと、実際に伝わっているメッセージは違うことが多いのです」
なぜこのパターンは続くのか、そしてどうやって断ち切るのか
問題だと分かっているのに、なぜ繰り返されるのか。
「人は自分の育ち方から学びます。意識的に変えようとしなければ、同じことが続きます」とシェーン氏は言う。
なぜなら、これは悪意ではなく、無意識の繰り返しだからだ。
「育児で当たり前にしていることは、ただ自分の経験や他の例から学んだことであり、それがベストなものとは限りません」とシェーン氏はいう。
キャスウェル氏は、大人は子どもの前では「自分が上の立場だ」と感じやすく、視点を鈍らせると指摘。大人は、子どもの不快感よりも自分の善意が勝っていると考えていることが多い。そのため子どもの意見を聞かず、会話を逸らしがちで、それが繰り返されるのだ。
だが、より良い関わり方はある。
キャスウェル氏の助言はシンプルで、「上から話すな。見下して話すな。一緒に話せ」だ。
大人が敬意と好奇心を持って子どもと向き合えば、信頼関係が築かれ、子どもは「無理に取り繕わなくていい」「ありのままの自分でいても安全だ」というメッセージを受け取るのだ。
シェーン氏は、「行動や努力に目を向けてほしい」と話す。「よく頑張ったね」「工夫していたね」といった声かけだ。また、外見や愛嬌ではなく、努力や好奇心、優しさを褒めることも勧めている。
身体的なスキンシップに関しては、子どもの意思を尊重することが重要だ。
「子どもがハグを嫌がるなら、グータッチを提案したり、手を振るだけでもいい。そして反応を期待したり、強要したりしてはいけない」とシェーン氏は語る。
キャスウェル氏も同意し、「大人が子どもの『ノー』を尊重すると、『あなたの気持ちは大切だ』『あなたの体はあなたのものだ』『何が安全かは自分で決めていい』という明確なメッセージが伝わります。こうした日常の小さな選択の積み重ねが、同意の感覚や自己信頼を育てるのです」と付け加えた。
身体的なスキンシップは、多くの大人が無意識のうちに境界線を越えてしまう領域だ。親族にハグをするよう子どもに促したり、命令口調であいさつをさせたりすると、私たちはおそらく意図していない教訓を教えてしまっている。
「他人を喜ばせるために、自分にとって何が一番心地よいかを無視することを教えているのです」
この背後にあるより深い教訓は危険だ。それは「自分の快適さよりも、他人の快適さのほうが重要だ」というメッセージを子どもに伝えてしまうからだ。「子どもが不安や違和感を覚える感覚を無視するよう促されるたびに、身体のサインを信じるのではなく、それを押し殺す練習をしてしまう」とキャスウェル氏は語る。
「それが積み重なると、特に女の子において、『ノーと言うのは失礼だ』と感じたり、自分の境界線や身体を守ることよりも、他人の気持ちを守ることのほうが大切だと信じてしまったりするなど、危険な行動パターンにつながる可能性があります」
もう一つ注目すべきパターンがある。自己主張が強く決断力のある女の子は「偉そう」と呼ばれがちなのに対し、同じ特性を持つ男の子は「将来のリーダー」として評価されることが多いという点だ。
シェーン氏は、その言葉を使いそうになったら、一度立ち止まり、実際に何が起きているのかを考えるべきだと推奨する。もし女の子が単に自己主張が強く、決断力を発揮しているだけなのであれば、それを強みとして捉え直すべきだ。性別に基づく批判をするのではなく、彼女のリーダーシップや自信を認めるべきだという。
一方で、子どもが本当に他人を支配するような態度を取り、それが人間関係に悪影響を及ぼしている場合は、きちんと向き合う必要がある。「他人に何をすべきか、どうやるべきかを命令されることは、気持ちのいいものではないということを理解させるのです」とシェーン氏は語る。
「そうした態度を取れば、一緒に遊びたいと思われなくなるかもしれない。それは、行動が周囲にどのような影響を与えるのかを学ぶための、重要な学びの機会となります」
キャスウェル氏が挙げるそのほかのポイントには、本音の会話を引き出すオープンエンドな質問をすること、無理に写真を撮ったりからかったりせず境界線を尊重すること、そして子どものエネルギーに合わせることが含まれる。子どもが静かであれば落ち着いた対応を心がけ、よく話すタイプであればその流れに乗るとよい。
この変化を起こすために、完璧である必要はない。ただ、他人の子どもに話しかける前に一度立ち止まり、次の問いを自分に投げかけることが大切だとキャスウェル氏はいう。
これは相手が大人でも言うだろうか。
自分はこの子に何を教えているのか。
相手の境界線を尊重しながら、どうすればつながることができるのか。
「それこそが子どもたちの記憶に残る関わり方であり、自分の声を理解し、それを信じられる大人へと成長する手助けになるのです」
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。


