太田光さん爆笑問題の太田光さんが3月10日の『火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)で展開した、1時間を超える反論が、SNSなどで「神回」「正論すぎる」と反響が広がっている。
【画像】光代社長&蓮舫の仲良しハグ写真。スパイ陰謀論者「出回ってる」に太田「自分が載せたの!」
安住アナ「素晴らしい放送」「立ち上がっちゃった」
太田さんは、自身を「工作員」「非日本人」と決めつけるネットの言説を否定。反論を展開しながら、多くのリスナーを惹きつける話芸にもなっていた。
反響はラジオリスナーだけに留まらない。TBSの安住紳一郎アナウンサーは、3月15日放送の『安住紳一郎の日曜天国』(TBSラジオ)の中で触れ、「素晴らしい放送」「横になって聞いていたけど、もう最後、立ち上がっちゃったもん。深夜にジャンプしながら聞いちゃった」と語った。太田さんに感化され、今までは言われ放題だったSNS上の言説に対して「反論してやる」と息巻いた。
太田さんは、歯に衣着せぬ言動が取り沙汰されたり、批判の対象になったりすることが多いが、今回の件は1人の芸能人をめぐる“騒動“を超えて、政権を疑問を呈する人物に対して、「日本人じゃない」と排除しようとする、いまの社会の風潮が潜んでいる。
太田さん夫妻をスパイ扱いする陰謀論を一撃
太田さんが批判の的となったのは、スペシャルキャスターを務めた衆院選選挙特番(『選挙の日』TBS系列2月8日放送)で、高市早苗首相に「消費減税ができなかった場合にどう責任を取るのか」などと追及したやり取りがきっかけだった。
首相は「出来なかった場合とか暗い話しないでくださいよ」と答えた後、表情を一変させ「なんか、意地悪やなあ!さっきから」と応じ、緊迫ムードの場面があった。
番組放送中より、言論人やSNSユーザーからの批判が殺到。中には、批判の域を超えて、太田さんへの人格攻撃や「工作員」だとする根拠のない言説も目立った。例えば、所属事務所名のタイタンについて“太田を中国語読みした発音からとった”とするデマや、妻の太田光代社長が蓮舫議員をハグする写真をもとに、太田さん夫妻を外国のスパイだと決めつける投稿だ。
他にも、麗澤大学教授の佐々木類さんは、YouTube『デイリーWiLL』動画内で、太田さんの風貌を「ネズミ男が服着たよう」と揶揄(やゆ)。光代社長と蓮舫議員との関係や所属事務所名についてのネットに出回る言説を紹介した。
太田さんはラジオ放送で事務所名をカート・ヴォネガットの小説『タイタンの妖女』から取ったことは以前から公言してきたと反論した。
加えて、「(妻の)光代社長が帰化したなんてデマも出回っているけど、彼女の家系を調べれば明らかなこと。そんなわけねえだろ! 」と否定。その際、「日本人以外であることがよくない」という意味ではないことを強調した。
「日本人かな?」踏みにじられた家族のアイデンティティ
今回の騒動において、太田さんが「一番腹が立っている」としたのは、元外交官で同志社大学教授の山上信吾さんによる「この人は本当に日本で育った日本人かな?と疑問を持たざるを得ない」(YouTube「文化人放送局LIVE」動画より)という言葉だ。
太田さんは放送で、「山上、お前はたった一言で、俺だけじゃない、俺の親父やお袋、親戚も全部、おじいちゃん、おばあちゃんも(中略)アイデンティティを踏みにじったんだよ。分かる?」と投げかけた。
続けて、亡き父・三郎さんの遺品整理で見つけたノートの記録を明かす。
ノートには東京都板橋区で枕の問屋を営む父(太田さんにとって祖父)と子の、戦時下日本を必死に生きた姿と、後年それを振り返る三郎さんの痛切な思いが綴られていた。
山上さんによる「たった一言」の「日本人かな?」という言葉は、生きた人間のたしかな記憶やファミリーヒストリーを書き換えようとするものだろう。激動の昭和史の一端に父や祖父が息づいていたことをエピソードを交えて語る太田さんの言葉は、デマへの力強い反証になっていた。
「二言目には『お前日本人か?』と疑う」排他主義を批判
太田さんが放った最大の警鐘は、日本をめぐる排他主義に対してだ。
「ナショナリストとか愛国者とかよく言うけど、なんで二言目には『お前日本人か』って疑うの?」「自分が大切に思ってるものを、相手も大切に思っているっていう…当たり前じゃないか!」
この問いかけは、ナショナリストの陥りやすい排他主義という罠を指摘しているだろう。
そもそも、ナショナリズム研究で著名な米国の政治学者ベネディクト・アンダーソンによれば、「国民」という連帯は、実際には顔を合わせたこともない誰かを仲間として思い描く「想像の共同体」によって支えられている。本来、私たちは一生会うことのない他者を、メディアを通じた開かれた想像力によって、同じ国民だとイメージできるはずだった。
しかし実際の私たちの社会では、想像力を働かせた連帯よりも、ナショナリズムによって、自分たちと異なる意見を持つ者を「日本人ではない」と排除する動きが目立つ。
太田さんはラジオで、保守系YouTube番組での自身に対する威圧・侮辱的な発言にも触れた。
元衆議院議員の長尾たかしさんが自身について「八つ裂きにしたい」と言っていたと紹介。元TBS記者の山口敬之さんが、高市首相の質問者に太田さんを起用したことを疑問視した上で、太田さんとTBSに対して「クズ中のクズ」と言い放ったことに触れた。
『デイリーWiLL』の動画の中では、『WiLL』編集長の山根真さんが「ビートたけしは笑えて太田は不快」として、2人の違いを共演者に尋ねたシーンがあった。
太田さんはラジオでその点に触れ「自分の一番大事な価値観だよ!何が笑えて、何が笑えない、この違いは何だろう?というのは」「お前の価値観じゃないかよ。(中略)そんなのは自分で決めろよ」と、笑える/笑えない、美しい/醜いをはじめ、自分自身の価値観を人に委(ゆだ)ねず、自分で判断する重要性を訴えた。
太田さんは「俺だって、なんでビートたけしさんが笑えて俺が不快なのか、40年近くずっと考えてること。それでも答えが出ないの!(中略)これからも多分答えは出ないし、ずっと考え続けること」「お前と話したい」と語り、異なる意見を持つ人とも対話したいという姿勢を見せた。
事務所「言論を生業とされている比較的著名な方々までも」
太田さんに寄せられる批判の数々は、高市首相とのやり取りから1カ月以上経っても止まなかった。
所属事務所タイタンは、3月19日に同社サイトにて「SNS 等の利用に関するお願い」と題した、タレントへの誹謗中傷についての声明を公表した。同社タレントに対し「憲法によって保障された表現の自由の範囲を明らかに超えた人格攻撃」が確認されているとした。
「最近は、言論を生業とされている比較的著名な方々までもが、平然と当社タレントの名誉等を侵害する発言を繰り返しており、(中略)中には単にネット上で語られているいわゆる都市伝説の様なものについてまで、あたかも事実であるかの如く発言されているケースも存在します」としている。
太田さんは、出演した『サンデー・ジャポン』(TBS系3月22日放送)で、「僕はタレントとしての立場なので、タイタンの社長としての立場を代弁することになるんですけど、うまく言えるかどうかわかんないですよ」という前置きで、この声明に触れた。
「事務所としては、もちろん、表現の自由はもちろんある上で、それ以上だと事務所が判断したものに関しては法的措置をとるということだと思います。それが違法であるかどうかは司法の判断にまた任せるということだと思います」と述べた。
「同時に、僕はカミさんから言われているのは、あなたもそうだからね、と。要するに私たちがこういう態度を取るってことは、あなたも気をつけなさい、と。私も誹謗中傷をしがちだから、と強くクギを刺されております」とも話している。


