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イランの最高指導者ハメネイ師が2月28日にイスラエルの攻撃で死亡した後、「Magamyman」というアカウント名の人物が、Polymarket(ポリマーケット)で55万3000ドル以上の利益を手にした。

Polymarketは自らを世界最大と称する予測市場だ。

Magamymanはこの市場で、イラン戦争の開始やハメネイ体制の終焉がいつ起こるかなどについての予想を当てて、大金を手中に収めた。

【画像】Polymarketで実際に行われているイラン軍事行動に関連する賭け

予測市場とは?

予測市場は、将来何かが起きるかどうかに賭ける「イベント契約」と呼ばれる仕組みで運営されている。

賭けの対象には、アカデミー賞受賞者やワールドカップ優勝チームからイランの最高指導者が失脚する日まで、さまざまな出来事が含まれる。

スポーツでの賭けは新しいものではない。しかし、匿名の参加者が戦争で巨額の利益を得るというのは、これまでにない領域だ。

Polymarketには現在、イラン戦争に関連する賭けが100件以上存在している。一方で、最近では核攻撃から利益を得ることには難色を示しており、「核兵器はいつ使用されるか?」という賭けをアーカイブ(公開停止)した。

Polymarketはアーカイブの理由を明らかにしておらず、ハフポストUS版は決定理由を質問したが、これまでに回答はない。

匿名で戦争から利益を得られる

アメリカでは連邦の商品取引法で、暗殺や戦争に基づく取引は禁止されている。

しかしPolymarketのほとんどは、規制の及ばない海外の取引所として運営されている。同マーケットは顧客情報を収集しておらず、暗号通貨ウォレットさえあれば利用できる。

イラン戦争によって利益を得ているのはMagamymanだけではない。Polymarket上では、アメリカのイランへの軍事攻撃の賭けで総額5億ドル以上が取引されている。

ラトガース大学ミラーセンター研究員のアレックス・ゴールデンバーグ氏は、顧客情報の欠落により「インサイダー取引や市場操作の特定が、より困難になっている」とハフポストUS版に語った。

実際、イラン戦争に関連する賭けに関与した一部の人たちが、機密軍事情報を利用したインサイダー取引の疑いで訴追されている

Polymarketの競合で、連邦当局の規制のもとに運営されているにアメリカの予測市場「Kalshi(カルシ)」は、指導者の死に関わるような地政学的な賭けには慎重な姿勢を示している。

Kalshi上では、「ハメネイ師がいつ最高指導者の地位から外れるか?」という賭けがあった。しかしKalshiはこの賭けの配当金を支払わない決定をした。

Kalshiのタレク・マンスールCEOはXでこの決定について、「我々は死に直接結びつく市場は扱いません」と説明している。

「原油先物のように、戦争や死を代理するようなものは従来の市場の中に多く存在します。しかし私たちは、それと誰かの死によって直接決まるような市場は、異なるものだと考えています。また、そのような市場はアメリカで規制を受ける事業体には認められていません」

同社は、支払いを取りやめた取引の賭け金を、ハメネイ師が死亡する前の最終取引価格で払い戻したが、賭けの参加者から訴えられている

「死」そのもので勝ち負けが決まる賭けをしていないとしても、イラン戦争で生じる「死から利益を得ていない」というわけではない。

さらに、戦争関連の賭けは、人々が富の築き方や世界の出来事の捉え方をめぐる心理そのものを大きく変えつつある。

軍事攻撃や政権交代が「勝ち負け」として扱われるようになると、それに伴って生じる苦しみさえ、応援する対象になってしまう。

「ミサイル攻撃が(賭けの)結果や配当につながるものになれば、真剣な議論を生むべき出来事が、興奮を感じる対象になってしまいます」とゴールデンバーグ氏は指摘する。

「それが何度も繰り返されれば、人々と現実とのつながり方そのものが、根本的に変わってしまうと思います」

戦争への賭けは人にどう影響するか

イラン戦争の攻撃に関連する中東関連の市場について、Polymarketは「社会にとって最も重要な出来事について、正確で偏りのない予測を生み出します。そのような能力は、現在のような胸が張り裂けそうな時代において特に貴重です」と主張している。

しかし、政権交代を単純な「二択」で予測し、戦争を消費するという行動は、人々に長期的な影響を及ぼす可能性がある。

リスクの高い賭けは、「自分が求める結果になるよう、他者に危害が及ぶことを望んでしまう」など最悪の衝動を引き起こす危険性をはらんでいる。

ファイナンシャルプランナーでマネー心理学専門家のハンナ・ホルヴァート氏は「世界を取引の場所として捉えることが、共感や社会的行動の欠如につながることが往々にしてある」と指摘する。

数時間で何百万ドル単位の勝ち負けが起きる状況について、ホルヴァート氏は「人々のリスクとの向き合い方を変え、よりリスクの高い行動を取るようになると思う」と語った。

ジャーナリストへの殺害予告

イスラエルのジャーナリストであるエマニュエル・ファビアン氏は3月、Polymarketの賭け手から、殺害予告や嫌がらせを受けたと明かした

ファビアン氏は3月10日に「イランのミサイルがイスラエルに着弾した」という記事を執筆したが、嫌がらせをしてきた人物は、この報道をミサイルが迎撃されたと変更するよう圧力をかけたという。

Polymarketでは「イランがイスラエルを攻撃するのはいつか?」という賭けが行われており、「迎撃された場合は攻撃と判定するのに十分ではない」というルールが設定されていた。

ファビアン氏が着弾を報じた3月10日には、1400万ドル以上が賭けられていた。

ファビアン氏は、様々な人物から情報は不正確だという指摘が寄せられたと明かしている。

その中の1人で「ハイム」と名乗る人物は、「私たちに90万ドルの損失を生じさせれば、それ以上の金額を投じてお前を始末する」というメッセージをWhatsAppを通してファビアン氏に送ってきたという。

この1件について、Polymarketはファビアン氏に対する脅しを非難。「関係者すべてのアカウントを禁止しており、関連当局に情報を提供する」というコメントをXに投稿した。

ハフポストUS版は、過去に同様の事例があったか、今後こうした脅迫を防ぐためにどのような対策をとるかをPolymarketに尋ねたが、回答はなかった。

専門家たちは、このような嫌がらせは他にも存在すると見ており、ゴールデンバーグ氏は「この問題は拡大していくでしょう」と指摘する。

「私たちは同様の事例をスポーツベッティングでも目撃してきました。金銭的なインセンティブが、選手を含め結果を左右しうる人々に対する嫌がらせや腐敗を引き起こすのです。同じ動きが、今起きている紛争を報道しているジャーナリストにも及んでいます」

「暗殺市場」になりうる

お金がかかっている賭けでは、賭け手が攻撃的になることがある。

大学バスケットボールの選手を対象とした2025年の調査では、3分の1が「過去1年でスポーツベッティングに関連したソーシャルメディア上の誹謗中傷を経験した」と報告した。

また戦争に関して言えば、「部隊の進入」「追放」「政権崩壊」といった直接死に関わるのではないと思える表現でさえ、誰かの命に対する脅威を含み得る。

予測市場を扱うサイト「ベットブレイキングニュース」に掲載された「暗殺の意味論」に関する記事は「誰かが権力の座にとどまる、公に発言する、どこかに姿を現す、特定の職に就いているかで勝ち負けが決まる市場は、その人の生存に結びついた動機が潜在的に付随している」と指摘している。

この記事の共著者である認知神経科学者のショーン・ギロリー氏は、勝ち負けが誰かの生死によって決まるような賭けは「暗殺市場」になりうると強調している。

「予測市場では、世界全体が競争の場です。自分は結果に影響を与えられると考える人が、実際に行動を起こす可能性があります」

 「死の賭け」は禁じられるのか?

こういった事態を避けるためには、予測市場自身が独自のルールを作るだけでは不十分だ。

急成長するこの業界に一定の歯止め(ガードレール)を設けるかどうかの判断は、規制当局に委ねられている。

イラン戦争に関する賭けの問題を受けて、アメリカ議会では「死に関する市場(デスマーケット)」への監視が強まっている。カリフォルニア州選出の民主党議員は3月10日、「テロ行為や暗殺、戦争、個人の死に関係・関連・言及するいかなる契約も禁止する」法案を提出した。

しかし、予測市場に対する連邦の規制は、トランプ政権下で鈍化している。

トランプ大統領は、バイデン政権下で始まったPolymarketに対する2件の連邦調査を打ち切った。また、トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏はKalshiとPolymarketの顧問も務めている。

Polymarketは、予測市場を監督する米商品先物取引委員会(CFTC)との2022年の和解により、アメリカ国内での運営が認められていなかった。

しかし2025年11月に規制当局の承認を受け、現在はCFTCの規制下にあるアプリをアメリカのユーザー向けに展開している。

CFTCは3月、「イベント契約が公共の利益に反すると判断された場合、暗殺や戦争、テロに関連する契約を阻止する可能性がある」という新たな指針を発表した。ただし全面禁止には至っていない。

ゴールデンバーグ氏は「CFTCが、現在主にPolymarketで取り扱われている戦争関連市場が『公共の利益に反する』かどうかについて明確な判断を示すまで、これらの市場は急激に拡大し続けるでしょう」と語った。

大きなリスクも伴う

多くの人が予測史上に関わっているのを見ると、自分もやってみたいと思うかもしれない。

Polymarketはトレーダーのウォレットを見て、特定の賭けで得た利益を知ることができる。中には大金を得ている人もいる。

「Betwick」というユーザー名でPolymarketに参加しているヨーロッパのテック関係者も、ランキングで上位の参加者が数百万ドルを稼いでいるのを見て、取引を始めたという。

Betwickは、サブスタックに2月に掲載されたPolymarketのインタビューで、80万ドルの利益を得たことについて語っている。

ただしもちろん、戦争に賭けることには金銭的な代償も伴う。

Betwickは「イスラエルがイランを攻撃する」という賭けで資金の70%を失ったと明かし、その原因をポーカー用語で感情的になり判断力を失う状態「ティルト」だったと語っている。

経済的な先行きが不透明な時代に、長期的な投資ではなく、戦争のような大きな出来事から短期的に利益を得ようとする人がいるのは、驚きではない。

ホルヴァート氏は「多くの人は、一晩にして富を築いているわけではありません。ゆっくりと、何十年もかけて行われるものです。しかし多くの人、特に若い人たちは、オンラインで、同世代が24時間で大金を稼いでいると主張している、あるいは実際に稼いでいるのを見て、『自分もそうしたい』と思ってしまう」と指摘。

「『煽られている状態だ』と頭では理解していても、脳がその状態を内面化し、ある程度のことを普通であるかのように感じ始めてしまうのです」と語った。

また、予測市場自身は「誰もが公平に扱われる」と主張しているが、必ずしも勝てるわけではないという点も忘れてはならない。

ホルヴァート氏は、「こうしたプラットフォームで最終的に利益を得るのは、内部情報を持っている人たちだと思っています」と述べた。

CNNは3月24日、Polymarketで取引しているトレーダーの1人が、イランに対する軍事行動に関連して、2024年以降約100万ドル近くを稼いだというBubblemapsの調査結果を報じた

このトレーダーは、Polymarketで行った5桁の金額の賭けの93%を的中させたとという。

成功した賭けの一つは、2月28日にアメリカとイスラエルがイランに対して軍事作戦に踏み切る数時間前に行われていた。

ちなみに、トランプ氏が3月23日にイランの発電所への爆撃を5日間延期するとトゥルースソーシャルに投稿する前に、数億ドル規模の原油先物や株式の取引が行われていたことも判明している。

CNNの報道は、予測市場でのインサイダー取引の可能性や、政治的なイベントへの賭けの拡大に、新たな疑問を呈するものとなるだろう。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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