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心のままに騒いだっていいじゃないか、音楽を自由に楽しもう。子供の心を持つ大人の音楽家集団・H ZETTRIOが企画する『こどもの日スペシャルLIVE』は、3歳以下は膝上鑑賞OK、15歳以下は割引、声を出すのも基本OKというファミリー層に優しいスタイルで10周年を迎える。今年の開催は5月5日、会場はLINE CUBE SHIBUYAで、「LINEを使った観客参加型」という、アニバーサリーにふさわしい特別なライブになることは間違いない。
6月17日にリリースされる11枚目のオリジナルアルバム『QUESTUNE』は、「QUEST MAP(音の探検図)」というコンセプトのもと、昨年配信リリースした楽曲に新曲を加えた全13曲。日本のインスト音楽の最前線をひた走る3人に、ニューアルバムとライブについて訊いてみた。

――2019年から続く月イチ連続配信リリース。この4月に第88弾がリリースされて、いよいよ100曲が見えてきました。

H ZETT NIRE(Ba/赤鼻):ギネス認定、もらいましたからね。(※2023年に「単一音楽ユニットによるデジタルシングル連続リリース月最多数・60曲」世界記録認定)

――誰も真似できないです。でも、どうですか、しんどくないですか。

H ZETT KOU(Dr/銀鼻):全然しんどくないです。真面目な話をすると、コロナの頃とか、ライブができなくてもそれをやることによってお客さんとの繋がりを感じられた、ということがありまして。ライブをやりたくてもできないという歯がゆさがさらに火をつけた感じで、そのまま走り続けているんですね。

NIRE:我々のスタイルに合っていると思うんです。レコーディングしたらすぐ届けたいという気持があるので、まずは配信して。受け取るほうも嬉しいんじゃないですか。

――毎月届くおいしい宅配みたいな。

NIRE:そうそう(笑)。ファンの皆さんも喜んでくれるし、私たちも聴いてもらえて嬉しいという、いいサイクルだと思うので。そしてどんどん配信して、たまったらアルバムを作る、と。

H ZETT M(Pf/青鼻):配信で12ヵ月出して、その12曲を次の年にアルバムで出すというサイクルになってます。

H ZETT M

H ZETT M

――ニューアルバム『QUESTUNE』。どんな感触のアルバムですか。

M:2025年の総決算という感じですね。色々視野が広がったという面で言うと、「Questune」という曲は和音を複雑に入り組ませたところがありまして。それはやっぱり生活していく上で、いろんな人間関係ですとか、いろんな社会情勢ですとか、そういったことを感じていく中で、この和音で複雑性をシンプルに表現してみた、みたいなところはあるかもしれません。

――なるほど。深いです。

M:単純なものをちょっと混ぜるだけで響きが変わったりとか、いろんな響き方を考えたっていうところはありますね。

 

――人間関係を和音にたとえるのがMさんらしいです。

M:和音というのは、ただ単純に綺麗な響きだけではなくて。違う音が混ざるだけで、全然違う輝きになったりするという、その混ぜ合わせというか、重なり具合というか、それが非常に複雑性を持つというところが面白いなと思います。

KOU:音を探求してますね。

――1曲目「Mukashi Mukashi」は新曲ですね。

NIRE:1年配信を続けた曲プラス、新曲1曲が加わって13曲構成にするのが多いんですね、最近のアルバムは。今回は「Mukashi Mukashi」がそれだったという感じです。今のH ZETTRIO感が出ていると思います。

――演奏をエディットしたり、語りが入っていたり、まさに物語の導入部みたいな面白い曲。NIREさんのベースも、パーカッションみたいな面白い弾き方をしていますよね。

NIRE:ベースはなんか変なことやってましたね。新曲というか、デモみたいな感じで、「なんか実験してみようか」みたいな感じで録ったやつが元になって、それを加工しているので、ベースはもう忘れてたって感じなんですよね(笑)。あらためて聴いて「こんなん録ったっけ?」と思いました。でも変な技を出すと割りと好評なんですよ。真面目にウッドベースを頑張ってる人はあんまり出さないような技というか、インチキ技みたいな(笑)。2人からも、お客さんからも、なぜかそういうのが好評で。「自由に弾いて」みたいな雰囲気になると、そういう技を使ってみたりします。

――NIREさんKOUさんは、そうやって自分から曲のアイディアを出すことはありますか。

NIRE:基本的には彼(H ZETT M)の作曲とヘッドアレンジですけど、細かい部分のアイディアをこちらから出すことはあります。「ここの部分はこうしていいかな」みたいな、そういう相談をしてみたりとか。

H ZETT NIRE

H ZETT NIRE

――アルバムに入ってる「熱帯回廊」のベースソロっぽいところ、好きなんですよね。ほんとに熱帯っぽい、けだるい感じがいいなぁと。

NIRE:あの曲は結構ベースが目立ってて、前半でがっつりメロディを弾いて、Aメロ的なところをはさんでソロをやるんですね。メロディっぽいのは彼(H ZETT M)が考えたもので、それを上手く活かすように弾くだけなんですけど、それを受けてのソロなので。いい流れを作って、次のピアノにうまく繋げるにはどうしたらいいか?って、ちょっと悩みながらスタジオに入ったんですけど、意外と1テイク目でいいのが出ちゃって、「あ、これかな」って。

M:彼は常にほぼ1テイク目です。テイクワン男。

NIRE:そんなことはない(笑)。でもこの曲はたまたまそうなったという。

KOU:僕はテイクファイブ男です(笑)。

――ジャズメンっぽくてかっこいいですね(笑)。

NIRE:だから曲によりけりですね。「なんとなくこういう感じで弾きたいな」までは決めるんですけど、3人で合わせてみたら「思ってたのと違うかも」みたいになって、悩むことも多いので。そのへんはライブ感があるというか、レコーディングしながら方向性を決めていく感じですね。

――解釈に余白を残しておくというか。

M:余白は重要ですね。

――重要ですね。“余”っていう字がいいですね。余暇とか、余裕とか。

M:その“余る”がミラクルを生みますから。

NIRE:今年の漢字、それでいきたいですね(笑)。

H ZETT KOU

H ZETT KOU

――ドラムもそうですか。今回、余白がありますか。

KOU:ありますね。その余白のところで色々やったりして、「それもいいね」「これもいいね」みたいな感じがあるので、余白を大事にしてます。その余白によって、ミラクルが確かに起きてますから。

NIRE:KOUさんはかなりダイナミックに、テイクごとに全然ガラッと変えてきたりするんですね。私はなんとなく決まってきたら固めちゃう方向に行くんですけど、「さっきまでと全然違うドラムだぞ」ということもあって、面白いなと思います。それこそ余白の影響ですね。

KOU:余白を与えられてるので、割りと自由にできるんです。

――NIREさんは余白をきっちり埋めていくタイプで、KOUさんは余白をどんどん広げるタイプ。面白いです。

M:さっきKOUさんが言った「テイクファイブ男」っていうの、意外と冗談じゃなくて。1回でズバッて切って、もう1回同じ切り方をするか?というと、KOUさんはしないんですね。ズバッと切って今度はグサッみたいな(笑)。個性的というか、そのプレイスタイルはもっと世に知れ渡っていいんじゃないかなと思ってます。

 

――同感です。ドラムだけ聴いていてもめっちゃ楽しいです。「Mangalitza」で聴こえる、パーカッションみたいな音とか。

KOU:ボンゴですね。余白があるんで、楽しくやらせてもらってます。

 

――「夏のGravity」も、あれ、普通のドラムの音じゃないですよね。

KOU:あれはドッグボウルっていう、ワンちゃんのご飯のお皿です。まさかドッグボウルを叩いて、それが作品になるとは想像もしてなかったんですけど。

――そもそも楽器じゃないですよね。

KOU:楽器じゃないです。楽器じゃないものを叩いた時に、鳴らないものがほとんどなんですけど、鳴った時にすごくいい音がするものもあって。ワンちゃんを10何年飼ってた時に、ご飯をあげるたびにいい音がしていたので、「これ叩いたらいいんじゃないかな」ってずっと思っていて。ワンちゃんが亡くなって、そのドックボウルを叩いてみようかな、レコーディングしちゃおうかなっていう感じです。

――なんか切ないですね…。追悼ソング的な。

KOU:そういう気持ちも入ってます。あと、12曲目の「Mood in the Dancing feat. Yucco Miller」は、10年前の我々の曲にゲストでYuccoさんに入ってもらった、その曲をブラッシュアップして、新たな見え方として面白いかなと思います。

 

――NIREさん、アルバムの中で特に思い出のある曲、ありますか。

NIRE:さっき言っていただいた「熱帯回廊」は良かったですね。あとはバラードっぽい「Airglow」「All Will Be Fine」とか。バラードは難しいんですよ。勢いで押しきれる曲はそのまま行けるんですけど、バラードとか、ミドルテンポよりちょっと遅いぐらいになってくると難しい。勢いのある曲では目立たなかった部分がはっきり聴こえてしまうので、可能な限り自分の中のベストのニュアンスを出したい、というふうになるんですね。かなり神経を使って集中しながら弾くので、「Airglow」「All Will Be Fine」は難しかった記憶があります。

 

――反対に、「Nite Phase」のように、ずっと同じフレーズを弾き続ける、みたいな曲もあって。

NIRE:あれはあんまり頭を使わず音楽に乗ってればいいみたいな、そういうニュアンスで弾けてしまうので。楽と言うと言い過ぎになっちゃいますけど、この音楽に身を委ねる、みたいな感じです。繰り返すから大変とか、そういうのはないですね。

 

 

――『QUESTUNE』は「QUEST」=探求と「TUNE」=曲の造語ですけど、まさにH ZETTRIOにぴったりのコンセプトだと思います。そもそもバンド活動自体がクエストですもんね。何年も何十年も、探求の旅を続けている。

M:それは頭で考えているだけではなくて、3人で音を出して初めて現実に現れるものなので、そこがやっぱり重要かなと。現実に音を出してみて、現れる何かを探しているというのはありますね。 

――何を探している旅だと思いますか。最後のお宝って何でしょう。

M:何があるんですかね? 見当つかないです。

NIRE:音楽には正解がないですからね。割りとあやふやというか、次の日に聴いてみたらちょっと違うフィーリングに聴こえるとか、あるじゃないですか。「これはかっこいいぞ」と思っても、「あれ? こっちのほうがもっとかっこいいかな」とか、形が続々変わっていくので。なぜ変わるのかはわからないですけど、周りの何かに影響を受けやすいんですかね。時代情勢とか。

――それは間違いなくありますね。

NIRE:形が変わるから、ずっと追い続けるしかないんですよね。ゆっくり形が変わるのかもしれないし、1日経ったらすごい変わってるのかもしれないし、正解がよくわからないことが面白いところかな?と。でも多分音楽だけじゃなくて、いろんなものがそうなんじゃないかなと思って、やり続けるしかないんですよね。

M:これだと思ったものがゴールであり、そこからまたスタートである。みたいな感じなんでしょうね。

――金言です。素晴らしい。

KOU:今、見出しが見えましたね(笑)。ゴールはスタート。今の連続配信は、一応100曲までは行きましょうということになっているんですけど、そこに行くとまた新たな到達点というか、何か見えてくるだろうなと思いますね。そういう期待はあります。

――そして今年もすでにライブが目白押しで。恒例の『Jazz Club Tour』は3月の東海編を経て沖縄に行って、6月には関西編、7月には北関東編、9月には北陸編とネバーエンディングで続いていきます。ライフワークですね。

KOU:『Jazz Club Tour』がどんどん拡大していってるのは、モチベーション的にも上がりますよね。どんどんいろんなところに行ってやりたいです。

NIRE:九州に行った時とか、2020年代にできたような新しいお店もいくつかあって、いいなぁと思いました。そうかと思うと、ここはすごい昔からあるんだろうなみたいなところもあるし、面白いですね。

――さらに、毎年恒例の『こどもの日スペシャルLIVE』は5月5日、東京 LINE CUBE SHIBUYAでの開催が決まりました。10周年ですよね。

M:そうです。

KOU:10周年ということで、色々な試みをやっていこうかなと思っています。ライブタイトルが『Playin' Swingin'!!! Everybody!!!』というんですが。

M:参加型のライブですね。アルバム名『QUESTUNE』にちなんで、「QUEST MAP」というテーマにして、一部はお客さんと一緒に作るライブにしたいと思っています。会場内でいくつかの曲のコース(セットリスト)や演奏の雰囲気も一部選択していただく感じにしたいなと。会場の皆さんと一緒に作って進んでいく、そんなイメージです。

NIRE:他にも、会場がLINE CUBE SHIBUYAなので、LINEを活用して、お客さんに何かクエストをやってもらうのはどうかな?という。

――それ、めっちゃ楽しそうじゃないですか。

KOU:H ZETTRIOとしても、新たなチャレンジです。当日行くまでどうなるかわかんないということがありますから。LINEを駆使して、お客さん参加型で。

――ゲーム感覚ですね。

M:もしかして、私たちがステージでLINEしてるかもしれない(笑)。

KOU:当日どうなるかわかんないという、そのスリルをお客さんと共有したいですね。10周年ということで、気合い入ってます。大家族祭りにしたいです。小さなお友達から大きなお友達まで巻き込んで。

M:参加型ライブというのは、ライブの内容が参加者によって変わっていくかもしれないということですね。

KOU:それはドキドキしますね。やってるほうもドキドキですね。

NIRE:今年もサイン会やる?

KOU:えっ!? 今、NIREさんから提案がありましたけど。

NIRE:終演後にサイン会をやることがあって、皆さん喜んでいただけるので。今年もやれたらいいなと思ってます。アルバムの先行発売もやりますので。

――これは必見です。あらためて、行ってみようかなと今思っている方へ、呼びかけてもらっていいですか。

NIRE:『こどもの日スペシャルLIVE』を10年も続けられるとは、最初は思っていなかったんですね。第一回はティアラこうとうで、ホールの方とお話をして、「試しにやってみますか」という感じだったんですけど、非常に評判が良くて。お子さんのいる親御さんからも、「普段なかなかライブに行けないので、本当にありがとうございます」みたいに言っていただいて、続けようという感じでやってきて、10周年を迎えたのは非常に感慨深いです。来てくれたお客さんのおかげだと思いますし、続けていくうちに地方のホールとかから「うちでもやってほしい」というお話をいただくようになって、こどもの日以外でも『こどもの日スペシャルLIVE』をやるようになって、それもすごく嬉しいですね。ここで10周年を迎えますが、またこれがスタートだと思って、続けていけたらいいなと思います。5月5日は大人であってもこどもの日、子供の気分で楽しんじゃってもらいたいですね。

取材・文=宮本英夫 撮影=菊池貴裕