西武鉄道が、外国人支援事業のグローバルトラストネットワークス(GTN)と連携し、外国人が安心して暮らせる沿線・まちづくりのプロジェクトを実施している。
10ヵ年のプロジェクト「Japan Life with Seibu」は今年、折り返しを迎えた。過去5年間では、西武沿線沿いに外国人が入居可能な不動産物件を増やしたり、魅力を伝えるために沿線沿いに住む外国人のインタビュー記事を公開したりしてきた。
沿線沿いに約60の大学・短大などがあり、留学生も多く住むという西武鉄道ならではの、インクルーシブな取り組みを取材した。
留学生から社会人になっても「長く住んでもらえるように」
西武鉄道とGTNによる「Japan Life with Seibu」西武鉄道によると、沿線には約60カ国・地域出身の外国人が住んでいる。
大学や日本語学校、専門学校などに通う留学生たちを筆頭に、卒業後に就職しても、新宿や池袋へのアクセスもよく、住み慣れた西武線沿線に住み続ける外国人も多いのだという。
最寄り駅でみると、高田馬場駅には留学生の多い早稲田大学(早稲田キャンパス)、武蔵境駅には国際基督教大学などがある。
日本では外国人が部屋探しをする際、国籍を理由に入居を断られるケースが後を立たない中、このプロジェクトでは外国人向けの不動産事業も展開するGTNと連携し、沿線沿いで賛同する不動産会社を徐々に増やしていった。
参加の不動産会社は、初年の200社から3倍の600社以上に上っている。国籍に関わらず、安心して住まい探しをしてもらう環境を整えることで、外国人も住みやすい街、そして沿線をつくることを目指している。
マイノリティである外国人が住みやすい街は、誰しもにとって住みやすい街をつくることにも繋がる。
経営的な視点からも、少子高齢社会で沿線人口が減り、鉄道会社としては定期券収入などの減少にも繋がる中、打開策として外国人住民に目を向け、定住施策を推進している形だ。
GTNは都内でこのほど、5年間のプロジェクトを振り返るイベントを開催。イベントに登壇した、西武鉄道・運輸部スマイル&スマイル室の栗城(くりき) 充さんは「少しずつ色々な種を蒔いてこられた5年間だった」とし、こう語った。
「留学生から社会人になり、結婚したり家族ができたりしても、様々なライフステージで長く住んでもらえる沿線にしたいです。そしてその過程で、出身国のご家族にも遊びにきてもらえたらと思います」
西武鉄道の栗城充さん(左)人のあたたかさや暮らしやすさが魅力。住み続ける理由
留学時代から卒業後、結婚を経ても、なぜライフステージが変わっても同じ町や沿線に住み続けているのか。特設サイト「Japan Life with Seibu」では、これまでに17人の様々な国籍の外国人にインタビューをしてきた。
「Japan Life with Seibu」のサイトに掲載された外国人住民のインタビューサイトに掲載されたインタビュー記事では、沿線に住む中国、アメリカ、メキシコ、フィリピン、ジンバブエなどから来た人たちが、住む町や沿線の魅力を語っている。
初めはアクセスなどの利便性から住み始めた人も、コミュニティや人のあたたかさや安全・安心な街並み、暮らしやすさ、自然が身近であることから、気に入って住み続けているという声が多い。
インタビューで撮影した外国人住民の写真は、駅のデジタルサイネージ広告としても展開。近年は日本でも排外的な声が見受けられる中、包括的な街を目指しているというメッセージを伝えている。
プロジェクトを担当してきたGTNの執行役員でグローバル保証営業部部長の馬場勇さんは「西武沿線沿いでは、日本人と外国人という垣根を越えた、人としての町づくりができてきていると感じる」と話す。
外国人への情報発信として多言語でのInstagramアカウントを開設し、約4年にわたり、沿線の英語や中国語でも投稿している。
また、町の治安に加え「地盤」の安定性も、外国人住民に打ち出しているポイントだ。
沿線は標高が高く、地盤が安定した武蔵野台地に走っており、「西武鉄道のじまんはじばん(自慢は地盤)」というキャッチコピーで、災害への強さもアピールしている。
大地震があまり発生しない地域の出身の外国人も多いため、地震への警戒心は強い。そのため、揺れにくく、液状化しにくい台地に安心感を感じる人も多いようだ。
プロジェクトは折り返し。次の5年へ
沿線の外国人の声に耳を傾け、住みやすい街を目指してきた5年。現在は、駅前で海外の文化を紹介するイベントなども開催している。
3月上旬には、西武秩父駅前で台湾の食や文化についてのイベントを開き、多くの人々が訪れたばかりだ。
次の5年は、展開中の取り組みをさらに拡大しつつ、日本人住民と外国人住民の“架け橋”となるようなプロジェクトを目指していく。
(取材・文=冨田すみれ子)
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