高須クリニック 高須克弥院長高須クリニックの高須克弥院長による、人間ドックでの放射線被ばくを長期間受けたことが自身のがんの原因であると主張する投稿が、Xで拡散されている。
国立がん研究センター中央病院が提供する「がん情報サービス」は、人間ドックで実施されることもあるがん検診(PET検査)について「検査による被ばくの影響を過度に心配する必要はありません」と公式サイトで説明している。
また、国立研究開発法人「量子科学技術研究開発機構」は、健康診断や人間ドックなどで広く用いられるCT検査について「検査で受けるような少量の放射線とがんのリスクの関係については科学的に明らかにされていません」という見解を出している。
高須氏の発言や、医療被ばくのリスク・安全性に関する公式情報を紹介する。
【動画】日本論をアツく語る高須院長
「僕は人間ドックをやめました」拡散したが…
高須氏は、4月6日にXで、エイベックスの松浦勝人会長が人間ドックを受診したという2025年10月のポストを引用したうえで「松浦さんにアドバイスします。僕は人間ドックをやめました」と投稿した。
また「人間ドックで長期間癌の原因となる沢山の放射線被ばくを受けてきました。僕の癌の原因はこれが原因であると確信しています。異常を見つけてくれる総合診療科の医師を主治医にすることをおすすめします」と自身の見解をつづった。
高須氏は、以前より全身がんを公表し、入院や手術などをたびたびXで報告している。
今回の投稿は4月9日現在、4700件以上リポストされ、2.3万ものいいねがついている。
前述の投稿に対し、ユーザーが「人間ドックの放射線被ばくだけがご自身の癌の原因と言うのはどうかと思う」など疑問を投げかけると、高須氏は「最高級の人間ドックは癌を見つけるためのPETと心筋の機能をチェックするPETがついています。放射性同位元素を血中に注入してCTで撮影します。放射性同位元素は腎臓から尿管、膀胱を通って排泄されます。僕の癌の原発巣は腎臓、尿管、膀胱です。一度の被ばくはわずかですが富裕層のお客さんは毎年行うことを希望します」などと返答した。
では、がん検診での放射線被ばくが原因でがんは発病するのか。
がん検診のメリットとデメリット
国立がん研究センター中央病院は公式サイトで「がん検診の最大の利益は、がんの早期発見・早期治療により救命されること」と説明。
一方、がん検診には不利益な側面もあるとし、①がんが100%見つかるわけではない②過剰な検査・治療を招く可能性③心理的影響④検診に伴う偶発症ーーなどを挙げている。
また、検診の不利益として「放射線被曝」がよく取り上げられるとし、「検診の放射線被曝によるがんの誘発や遺伝的影響は極めて低いと考えられるが、全く何も起こりえないと断定はできない」と記述。そのため、放射線被曝による影響の可能性がある若年者(40歳未満)はがん検診の対象からは除外されているとした。
つまり、がん検診による放射線被ばくの不利益は存在しているのは事実だ。だが同時に、人や状況によってはその不利益を上回る利益があり、被ばくへの過度な懸念も不要だと同センターは説明する。
同センターが提供する「がん情報サービス」によると、通常、人の健康に影響することが確認されている放射線の1回量は、100mSv以上という。
CT検査・PET検査での被ばくが心配だという質問に対して、公式サイト上でそれぞれ次のように回答している。
「1回のCT検査で被ばくする放射線量は、検査する臓器や範囲によってかわりますが、おおむね5~30mSvです」
「1回のPET検査でFDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)から受ける放射線量は約3.5mSvです」
いずれの検査も、影響が出ることが確認されている「100mSv以上」という数値を下回っている。
その上で「被ばくによってダメージを受けた細胞のほとんどは、そのたびに修復されて正常な細胞に戻ります。検査による被ばくの影響を過度に心配する必要はありません」と説明している。
国立研究開発法人「量子科学技術研究開発機構」は、「CT検査など医療被ばくに関するQ&A」で、影響などについて解説している。
また「診断を何度も繰り返しています。その度に、がんのリスクは高くなっているのでしょうか?」という疑問には、「理屈としては、高くなっている可能性があります」とした上で、こう説明している。
「しかし、個人の健康を総合的に考えると、検査結果を元に医師が適切な医療行為をすることで、がんのリスクの増加分よりも、検査によって病気の状況がわかることのメリットの方が大きくなると考えられます。また、ある線量を何回かに分けて受けた場合には、同じだけの線量を一度に受けた場合よりもリスクが小さくなることが知られています」
「人間ドック=危険」なのか?
前述の複数のがん研究機関は共通して、がん検診の利益と不利益を勘案するように伝えているが、「がんの原因」とする高須氏の主張のような「過度な心配」は不要という立場だ。
先述の高須氏の投稿に「最高級の人間ドック」とあるが、労働安全衛生法で定められた項目がある定期健康診断や、特定健康診査(いわゆるメタボ健診)とは異なり、人間ドックはさまざまな病院をはじめとする組織がそれぞれの項目で行なっているため、すべての人間ドックでCT検査・PET検査が行われるとは限らない。そのため“人間ドックは危険だ”と一概には言えないだろう。
人間ドックは基本的に任意であるため、含まれる検査項目が科学的根拠に基づくがん検診であるか否かを、厚生労働省の推奨する検診項目、対象年齢、受診間隔を参考に、自身でチェックするのが望ましいと考えられる。たとえば、対象年齢は、胃がん検査は50歳以上だが、子宮頚がん検査は20歳代からだ。また、子宮頚がん検査の場合、20歳代と30歳以上では検査項目が異なっている。受診間隔も、大腸がん検査は年1回だが、乳がんは2年に1回が推奨されている。
「過剰診断」問題化 適切な年齢・受診間隔で
また近年、命や生活に関わらないようながんを検診で見つける「過剰診断」が問題になっている。
たとえば、若年型甲状腺がんは、ある程度で成長を止めてしまい一生患者に悪さをしないものもあり、早期に見つけるメリットはないとされている。だが、発見された場合、本来であれば要らない治療で、身体的、心理的、経済的負担がかかってしまう。
このようながん検診の利益と不利益のバランスに基づき、現在厚生労働省が推奨しているのは、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頚がんの「5大がん」のみとなっている。
厚生労働省は、適切な年齢、および適切な受診間隔で受け、がんを早期に発見し、適切な治療を受けることが重要だとしている。


