いわさきちひろさんを中心に世界の絵本作家の作品を展示する「ちひろ美術館」の公式Xが、日本国憲法の前文と9条について発信し、注目を集めている。
1918年に生まれ、戦争を経験したいわさきさんは、生涯を通じて平和を祈り作品を描き続けた。同美術館では「憲法カード」も制作している。
【動画】「殺したり殺されたりするのは…」ちひろ美術館の“憲法9条”動画や憲法カード
「軍隊や武器の力で かたづけてしまうやり方は選ばない」
同アカウントは憲法記念日の5月3日、いわさきさんが絵を担当した「井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法」の朗読動画を投稿。同書は、作家の井上ひさしさんが日本国憲法の前文と第9条を子どもにも読める言葉に「翻訳」した絵本で、2006年に刊行。版元の講談社によると、20年が経った今、2026年2月の第二次高市内閣発足後にネット書店で注文が急増したといい、連続重版が決まるなど関心が高まっている。
朗読動画は、ちひろ美術館が2020年に発表したもので、「憲法の大切さを子どもたちに伝えたい」という井上さんの思いと、平和と子どものしあわせを願って絵を描き続けたいわさきさんの思いが込められている。
戦争の放棄や戦力の不保持などを定めた9条について、動画では「もう二度と戦はしない」と表現。「だから私たちは どんなもめごとが起こっても これまでのように、軍隊や武器の力で かたづけてしまうやり方は選ばない」「殺したり殺されたりするのは 人間らしい生き方だとは考えられないからだ」などと読み上げている。
ちひろ美術館がXで「ご家族や身近な方と憲法について話すきっかけに、書籍や、朗読動画をご覧いただければ幸いです」と呼びかけると大きな反響が広がった。
高市政権の改憲の動きに反対する声が広がっていることを背景に、「憲法を考える、優しい第一歩をありがとうございます」「心に響きます」「子どもと一緒に、この動画を観ました」などのコメントが多数寄せられた。
国策に協力した両親。「二度と戦争を起こしてはならない」
いわさきちひろさんは、1918年に生まれ、子ども時代から20代半ばまでを戦時下で過ごした。
公式サイトによると、父親は陸軍の建築技師、母親は教師の職を辞した後、大日本連合女子青年団の主事となり、両親ともに国策に協力する立場だったという。戦後に、太平洋戦争が日本の侵略戦争であったことや、両親が国策に貢献していたために恵まれた生活を送っていたことを知った。
このような自身の戦争体験から、「二度と戦争を起こしてはならない」と強く決意し、平和な世界の実現と、子どもたちの幸せを願った。1960年代から70年代前半にかけてベトナム戦争が激化する中で、戦争をテーマにした絵本を多数手がけ、悲惨な場面を詳細には描かない形で、戦争のなかで生きる子どもの姿や表情をとらえた。「戦火のなかの子どもたち」を発表した翌年の1974年、原発性肝ガンのため55歳で亡くなった。
「ちひろ美術館・東京」や「安曇野ちひろ美術館」では、世界の絵本画家たちが平和や反戦を祈って描いた作品の展示会をたびたび開催してきた。
公式サイトでは「憲法カード」も配布。「今、この憲法を変えて、日本を戦争ができる国に変えようとする動きが急激に進んでいます」とし、「子どもや孫を、戦争の被害者にも加害者にもさせないために、また戦争ではなく話し合いで平和をつくる世界に変えるために、ちひろ美術館では、ちひろが今生きていたらどうしただろうと考え、憲法についてのカード(「前文」、「9条」)を作りました」と説明している。


