日本で働く外国人が職場で経験する「困りごと」や「やりがい」とは…?
都内でこのほど、日系企業で活躍する外国人が対談するイベントが開かれた。
イベントは一般社団法人「Cultural Diversity推進協会」が主催。多様な文化的背景を持つ人が力を発揮する「職場づくり」について共に考え、情報交換をする場をつくりたいとの思いで開かれた。
(左から)アブナ トゥヒンさん、マヘルさん、龔 軼群さんこの日、登壇したのは、インド出身・アメリカ育ちで日本在住13年のアブナ トゥヒンさんと、シリア出身で日本在住12年のマヘルさん。
主催のCultural Diversity推進協会・代表理事で中国出身の龔 軼群(キョウ イグン)さんがファシリテーターを務めた。
3人とも日系企業で長く勤務しており、それぞれの経験を踏まえて、日本で働く上での難しさや楽しさ、いま感じている課題などについて語った。
イベントには、外国人が働く日系企業の人事担当者など約30人が参加した。
「難しい」「大丈夫」、日本語の微妙なニュアンス。空気、行間を読む難しさ
インド出身のアブナさんは父親の仕事の関係で様々な国で育ち、大学はアメリカで卒業した。卒業後はアメリカで金融系の仕事に就き、その後、日本に移住。2020年に不動産事業などを展開する「日本エイジェント」に入社し、現在は関連会社のwagaya Japanで働いている。
合格率は十数%と、日本語ネイティブ話者でも難易度が高い資格「宅地建物取引士(宅建)」にも一発合格し、2025年には不動産売買チームの責任者に抜擢された。
同社は在日外国人向けの不動産事業にも力をいれているため、様々な国籍の同僚がおり、「日本人も外国人も一緒に働ける環境がとても良い」と話した。
インド出身のアブナ トゥヒンさん日本語も非常に流暢に話すアブナさんだが、以前は日本語の微妙なニュアンスを含むコミュニケーションに苦労したこともあったとし、こう話した。
「例えば、何かを提案した時に、『少し難しいです』という返事は『頑張ればできる』ということかと思ったけど、ダメという意味ですよね。他には、最初は空気を読むことも難しかったです」
そんな経験に対し、会場からは、「『大丈夫』という日本語も、OKの意味の場合もあれば、NOを意味する時もありますよね」と難しさを語る声も上がった。
物事をストレートに伝えず、ハイコンテクストなコミュニケーションが取られることも多い日本では、特にビジネスシーンで難しさを感じる外国人も多いようだ。
来日直後は、人材・IT関連の大手日系企業でエンジニアとして働いていたマヘルさんも、「行間を読むこと、空気を読むことは最初は本当に難しかった」と同意する。
「周りをよく観察し、行間を読む・空気を読むことも徐々に学びました。初めはそこまで重要だと感じていなかった、段階を踏んで物事を進めることや、空気を読むことなどが、仕事をしていくうちに日本ではとても大切なことだと気付いたんです」
日本語のニュアンスや、雰囲気を察知し状況を判断することなどは、教科書や授業で日本語を学ぶだけでは習得できないスキルで、実際に働いてみて初めて身につけることができたという。
「違いが強みに」異なるバックグラウンドの人々が共に働く意義
マヘルさんは大手でエンジニアとして働いた後、出身国・シリアと日本を繋ぐような仕事がしたいと考え、ITベンチャーの「BonZuttner(ボンズットナー)」(東京都渋谷区)に転職。
同社は、日本国内の企業から請け負ったITシステムの開発などを、トルコやレバノンなどで難民として暮らすシリア人ITエンジニアらに委託し、難民問題をはじめとする社会課題の解決を目指すソーシャルビジネスを展開している。
マヘルさんは創業期から約7年参画していて、現在はCIO(最高情報責任者)を務める。
「優秀なシリア人IT人材がたくさんいますが、情勢を理由に海外に働きにでることが難しい人も多くいます。私たちは小さな会社ですが、その人たちと日本のビジネスを繋ぎ、就労の機会を作っています。
BonZuttner経由の仕事で経験を積んだ後に、ヨーロッパの大企業と仕事をする機会を得た人もおり、誇りに思っています」
シリア出身のマヘルさんファシリテーターからの「Cultural diversity(文化的多様性)がうまくいっている会社はどんな職場だと思うか」という投げかけに対しては、こう答えた。
「多様な職場を実現するには、外国人と採用する側、双方に柔軟性が必要だと思います。『違い』は強みになるし、会社にとっても財産。
変化は時に怖いかもしれないけれど、変化を恐れずにお互いに違いを受け入れ、どうしたらその人が活躍できるかと柔軟に考えていくことが大切です」
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「外国人が働きやすい日本になっている?」→正直な意見は…
イベントでは、会場からも多くの質問が投げかけられた。
「日本で働く外国人が増えている中、働きやすくなっている?」という質問に対しては、マヘルさんは「AIの発達により言語の壁を越えることは以前に比べ簡単になったかもしれない」とした上で、「それでも周囲の外国人はまだまだ様々な困難を抱えている」と話した。
また、「これからも日本で住み続けたい」と話すアブナさんは、高市政権で急速に推し進められる在留資格申請の厳格化や手数料の大幅値上げについて言及。
「高度人材(高度専門職)のビザも取りにくくなっているので、今後その点は心配です。日本に働きにくる人が減ってしまうかもしれないと思っている」と懸念を示した。
質問には、ファシリテーターの龔さんも、就職活動の視点で回答。
龔さんは自身が中国籍として就職活動した際は、日本語で書類を準備しても、エージェントには国籍を理由に「あなたに紹介できる仕事はない」と差別的な対応をされるなどの経験をしたという。
現在、プロボノで難民の背景がある2世の若者の就職活動をサポートしている中では、そのようなあからさまな差別は減ってきている一方で、やはり就職が難航することも多いと語った。
一般社団法人「Cultural Diversity推進協会」代表理事の龔 軼群さんさらに、会場からは「日系企業では、外国人が『日本人的』に振る舞うことが求められることもあると聞くがどうか」という質問も。
アブナさんとマヘルさんは、そこまで強く感じることはないと回答したが、龔さんは「中国や韓国など、名前を言わない限り外国人だと分かりにくいケースでは、『日本人化』を求められることも多くあるかもしれない」と述べた。
龔さんは、5歳の頃に家族と来日。日本で育ち、中央大学を卒業後、LIFULLに入社した。
現在は、外国人や高齢者、LGBTQの人々などの「住宅弱者」の物件探しをサポートする「FRIENDLY DOOR」事業責任者を務め、活躍している。
龔さんは、「違いを出すことで評価されるならそれがベストですが、キャリアアップのために合わせることを選ぶ外国籍も多い」とし、こう語った。
「見た目がいわゆる『日本人っぽく』なかったら最初からその期待は低いのかもしれないけど、中国や韓国などの出身の場合は、日本人と同様に振る舞うことへの期待値が高いケースは多いかもしれないです。
私は若手の頃、営業としてお客様と会食する時などは、食事を取り分けたり、お酌したりしていました。特に女性だということもあって、空気を読んで動いていたところはあったかもしれません。『ほとんど日本人と一緒じゃん』と言われることもあるけど、それは私がそう努めているからなんですよね」
誰もが働きやすい職場ってどんな職場?
外国人が感じる職場での困りごとから改善案まで、様々なトピックが飛び交った対談は、一般社団法人Cultural Diversity推進協会が開いた初めての一般参加型のイベントだった。
同協会では、国籍・文化・言語など多様な背景を持つ人材が安心して働ける職場環境を整えている企業を評価するために、組織の文化的多様性にフォーカスをした社会包摂の指針「Cultural Diversity Index」を創設。
国籍・民族・人種・肌の色・文化や習慣・言語・宗教など、さまざまな多様性の要素に着目し、多様な人々がともに活躍できる環境の包摂度合いを39項目で測定。5つのランクで認証し、積極的に取り組む企業を称えていくという取り組みを行なっている。
(取材・文=冨田すみれ子/ ハフポスト日本版)
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