Music Splash!! ゲスの極み乙女 indigo la End
2026.5.11 SGC HALL ARIAKE
数々の音楽番組制作や音楽ライブ主催、また六本木EXシアターの運営を行ってきたテレビ朝日傘下のEXエンタテインメントがプロデュースする空間として、3月27日にオープンしたSGC HALL ARIAKE。オープニングシリーズとしてクラフトワーク(KRAFTWARK)やTHE YELLOW MONKEY、電気グルーヴなどのライブが行われてきたが、今回紹介する『Music Splash!!』はEXエンタテインメントがこれまで横浜、六本木で開催してきたシリーズの第三弾。5月11日にゲスの極み乙女とindigo la End、5月12日にくるりとマカロニえんぴつの2マンライブが行われた。ここでは5月11日のライブをレポートする。
ゲスの極み乙女とindigo la Endの2マンは昨年7月に仙台で開催した2 days公演『馳せ合い vol.6』以来。この顔合わせは『Music Splash!!』が先に決定していたが、各々の活動も多忙なメンバーたちが結集したこのタイミング。せっかくだからと、2日後の豊洲PITでの『馳せ合い vol.7』も決定したそうだ。
ゲスの極み乙女
ゲスの極み乙女
先攻はゲスの極み乙女。昨年のツアー『アニバーラリー13』以来のライブとなるファン待望のタイミングでの登場だ。サポートメンバー二人とともに登場し、オープナーはちゃんMARI(Key)の跳ねるピアノがテンションを上げる「シアワセ林檎」。曲中、ほな・いこか(Dr)に代わってindigo la Endの佐藤栄太郎(Dr)がドラムを叩き、川谷絵音(Vo,Gt)といこかがフロアを煽るという展開に。川谷の「1曲目からこういうのって珍しいよね」の一言でステージもフロアも一気に空気が解れる。ファンク×サイケにゲスの個性を感じる「いけないダンス」、四つ打ちのキックに自ずとクラップが起きた「猟奇的なキスを私にして」ではサビのメロディの強度と川谷の強度の増したボーカルが相まって、もともとキメラ的進化を果たしてきたゲスならではのJ-ポップをさらに底上げしていた。しかもシンセのレイヤーが今のバンドアレンジを実感させてくれる。
ゲスの極み乙女
ゲスの極み乙女
ゲスの極み乙女
今のライブアレンジという意味では、ポストロック的なリズムチェンジを聴かせた「オトナチック」、川谷がスクラッチ奏法も披露し、かなりグランジっぽいギターサウンドになった「ロマンスがありあまる」にも瞠目。また、初期ナンバー「アソビ」と「momoe」の並びも今のスキルだからこそ拡張されるイメージが出現。特に「momoe」での休日課長(Ba)の動き回るベースラインはファンク/ジャズがポップミュージックに浸透した今、よりその凄さが理解できるのだった。変拍子の「午後のハイファイ」でサポートを含む6人のアンサンブルの確かさに唸っていると、終盤に向けて「まだまだ行けますか? 有明!」と煽る川谷にダブルヘッダーを物ともしない彼の胆力を見る。あらゆるジャンルを放り込んでも成立する大きな鍋のごときゲスの音楽性は「だけど僕は」「キラーボール」と目まぐるしく味付けを変えていく。
ゲスの極み乙女
「今日はindigo la Endさんにお誘いいただいて」との川谷のMCに笑いが起き、「せっかくなんで新曲を」と、細部はまだその段階で聴き取れなかったが、世界の情勢と日常の不可分さを感じる歌詞と強力なビートを持った新曲がライブ初披露された。この『Music Splash!!』へのオファーはありがたかったと語り、ここで翌日5月12日がゲスの極み乙女の結成日であること、だがこの組み合わせで行うもう1本のライブは5月13日なので「明日は家の大掃除でもやろうと思います」と、また笑わせる川谷の抜けの良さも印象的。ゲスは新曲も制作中で年内にワンマンライブも予定しているというアナウンスにフロアも大いに湧いた。ラストは原点を再認識させるような川谷のモノローグと伸びやかなボーカルが空気を含んで場内を満たしていくような「bye-bye 999」で、さまざまな時期のレパートリーを凝縮した1時間のセットを締め括った。
ゲスの極み乙女
indigo la End
昨年結成15周年を迎え、今年1月には日本武道館2 daysを成功させるなど、活動を活発化させているindigo la End。近年の川谷のバンド活動の軸足もインディゴに置かれていると見るのは妥当だろう。リリースも精力的でこの公演の翌々日には新曲「ワールプール」をリリースしている。ゲスの極み乙女が真っ赤なライティングでスタートしたのと対照的に、インディゴのテーマカラーである藍色を思わせるステージにメンバーが現れ、洒脱な「夜行」でスタート。音の良さに定評のあるこのホールのポテンシャルを存分に発揮する各々の楽器の味わい深さに浸ると同時に、当然ではあるのだがゲスのアタックの強さから柔らかなグルーヴへの変化も身をもって体感する。長田カーティス(Gt)の音色の柔らかさに聴き惚れていると、意外にも陽のテンションでクラップが起きた「名前は片想い」、そして「そのままの冷たさで」では長田と川谷のツインギターの絡みや、佐藤の精緻なハイハットワーク、リムショットの輪郭もクリアに聴こえることで、演奏への没入感を高めてくれた。
indigo la End
indigo la End
この日、初期曲にも新曲にも感じられたのは、彼らのポストロックやマスロック的なルーツだ。デビュー作『あの街レコード』収録の「billion billion」が長田のループするリフに始まり、佐藤の激しく打ち鳴らされるドラム、後鳥亮介(Ba)の裏打ち的なフレーズのフィジカルに来る強さ。バトルス(Battles)とポリス(The Police)が邂逅したような怒濤のプレイで圧倒した。かと思えば「雫に恋して」や「砂に紛れて」の抒情性、「通り恋」でのオーセンティックなバンドアンサンブルが川谷の声の少年性を際立たせる。一転、今のタームの新曲「カグラ」ではグランジ色すら漂うコードカッティング、インストセッションのごとき長めのイントロに覚醒。ソリッドな時代認識を内包する歌詞もあり、2026年のインディゴがこの後の新曲群にもつながっていく。
indigo la End
indigo la End
川谷からの「デジタルな世界になっても生々しいものを作っていこうとしてる。それはインディゴもゲスも」という現在地の表明は何よりファンにとって嬉しい肉声だったことだろう。昨年は復活後のthe cabsの2マンにも召喚されたインディゴ。まさに生々しいバンドの初期衝動と彼らならではの洗練と抒情が融合したら、他のバンドにはない新境地に達するのではないだろうか。と、言いつつ「やりすぎと言われてもやっておきたい」と前置きして「夏夜のマジック」もしっかりセットリストに盛り込み、ゲスのサポートも務めるえつこ(Key,Cho)とささみお(Cho)のコーラスのスモーキーさが新鮮に届いた。
indigo la End
続いて新曲「ワールプール」も披露し、ジャズや時にはダブっぽいセクションもあるこの曲は「カグラ」と曲調は違えど歌詞にはソリッドなニュアンスもあり、そこは通底するのかもしれない。本編ラストを前に6月24日リリースのニューアルバム『満ちた紫』と今月から年末まで続くツアーを改めてアナウンスし、新曲はもちろん、これまでのナンバーも新しいライブアレンジで臨むと川谷。本編ラストはこれぞザ・オルタナティヴな「心ふたつ」を大きなグルーヴで鳴らし切った。
indigo la End
アンコールでも新曲を披露したのだが、演奏前の川谷の「個人的な曲」という前振りにフロアの集中がより高まる。ここまでストレートにロックと太字で書きたくなる曲は初めてかもしれない。大ラスは初期ナンバー「抱きしめて」が、この曲が纏う終末観とは違うベクトルの強さを湛えていたように思う。
2バンドとも、2026年、さらに風通しがいい活動を見せてくれそうな期待が更新された夜になった。
本番前のバックステージにて
取材・文=石角友香 撮影=岸田哲平