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北海道の大地から生まれ、R&Bとソウルを基軸に、様々な音楽要素を取り込んで自由に羽ばたく4人組バンド。goethe(ゲーテ)のファーストアルバム『circle』は、結成5年の集大成であり、未来へのスタートラインでもある、意欲溢れる眩しい作品に仕上がった。優れたソングライター・樋口太一を中心に、穏やかで寡黙な人柄と、探求心旺盛な音楽センスを共有する4人が、精魂込めて作り上げた存在証明。注目しよう。

ーー半年ぶりのSPICEインタビュー登場です。その間にライブもたくさんやって、知名度も上がって、自分たちでも成長を実感しているんじゃないか?と思います。

樋口太一(Vo&G):本当に地道に進んできたバンドだなと思っていて、最近は大きめのステージに上がらせてもらうことが多いですけど、そこに見合うパフォーマンスができるように、ステージに合わせて成長してきたなという自覚もあるので。最初はライブハウスに似合う感じで演奏しよう、というのもあったんですけど、曲調が幅広いので、ステージに合わせて、お客さんにも合わせて、チューニングできるようになってきたなという自覚はあります。

――やっぱり違いますか。ステージの規模と、音の響かせ方とのバランスは。

樋口:全然違いますね。それぞれ、届けやすい曲がたぶんあって、たとえばライブハウスで化ける曲、大きめの野外のステージで化ける曲とか、色々あるなというのは、やっていて思います。

――特に今回のアルバムの、2、3、4、5曲目あたりは、大きなステージの景色が見えてくるような曲だなぁと思います。たぶん曲作りにもフィードバックしてくんでしょうね、そういう感覚は。

樋口:そうですね。スケール感とか、規模感みたいなものは、曲を作る時にもイメージします。

相蘇勇作(Dr):最近はライブのスタイルもお客さんが踊って盛り上がってくれるのが一番、みたいなことよりは、僕らは曲をお客さんに丁寧に届けられたらいいな、という方向にシフトしているので。無理に煽ったりはせず、好きに聴いてもらって、盛り上がりたかったら盛り上がってもらって、静かに聴いてもらってもいいし、というライブになってきて、自分たちのライブのスタイルが定まってきている段階かなと思います。

――元々、そういう志向のバンドなんですかね。熱く盛り上がるライブ空間もいいけど、どっちかというと、リスニングをしっかりしてほしいというか。

樋口:そういうタイプですね。ライブを見て、ワー!ってなるのも楽しいですけど、自分自身がじっくり聴くタイプなので、来てくれるお客さんにはみんな楽しんでほしいですけど、やる側としては、自分たちのその温度感も伝わってほしいという気持ちはあります。そういう温度感のほうが伝わりやすい曲もあるし、自分たちがライブをする上でも、聴いてもらう側も、お互いに気持ちいいところを見つけたいというところですね。

goethe / Town【MUSIC VIDEO】

――温度感というのはすごく共感できるワードで、実際、goetheの曲を聴いてまず思い浮かべるのは、空気感とか風向きとか、温度とか、そういうものをすごく感じるので。繊細な音楽だなぁと思ったりします。

樋口:そういうものに敏感というか、自分の個人的なことですけど、めちゃくちゃ田舎で育ったので、そういう情景とかも影響してるのかな?と、最近思いました。自分の歌詞を見て。

――曲の中で、よく風が吹いてるし、お日様が出たり沈んだり、時間や季節を感じるんですよね。リスニングの印象はインドアかなと思うけど、楽曲の風景はリスナーを外に連れ出そうとしている感じがします。

樋口:自分的には、インドアな性格の人たちが集まったバンドかな?とは思うんですけどね。

相蘇:拓人は、アウトドアじゃない?

樋口:そうだね。属性的にはインドアだけど。

――ん?(笑) どゆこと。

加藤拓人(B):外に行っても、自然の中で静かにしているのが好きなので。

――あー。わかる。それは属性インドアだ。それって、このバンドの音楽のイメージも重なるところがあるかもしれない。

永江碧斗(Key):僕も同じです。外はめっちゃ好きで、東京に行っても、川とか海とかに行きたいなと思っちゃうというか。そこで、アクティビティをすることなく、ただ座ってるだけみたいな感じなので。

――その感覚にピンと来る人、けっこういそうな気がする。郊外型の音楽ですね。でも楽曲のセンス的には、シティポップ感とか、例えが古いけど渋谷系とか、そういうニュアンスも感じるんですよね。そのへんの要素って、バンドの中にありますか。

樋口:自分はそこらへんも好きで、オリジナル・ラブとか、よく聴いていました。僕らが高校生の時には、Suchmosとかがガーッと来ていた時期で、みんな聴いていたし、大学のサークルでコピーバンドもたくさんいました。

――間接的な影響はあるでしょうね。それこそ今度のアルバムに入ってる「LIFE」とか、小沢健二っぽいなぁと思う瞬間もあったりしたので。

樋口:フリッパーズ・ギターも、聴いていましたね。

――自然に入り込んでいるんでしょうね。その上で、goetheってどんなジャンル感なのか、自分で思ってることはありますか。

樋口:それぞれがそれぞれのルーツを持っている、デコボコ感みたいなのも一つの特色だと思うんですけど、そもそも曲を作っている僕が、R&Bやソウルが好きで、そこをベースに、それぞれのルーツを出し合う感じなので、ジャンルで言うと難しいなとは思うんですけど。あと、僕が飽き性というのもあって、曲調が結構幅広いので、ひとことで言うのは難しいなと思います。

加藤:自分たちはこのジャンルをやる、ということではないですね。

goethe

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――そこで面白いのは、今回、プロデューサーがたくさん入ってますよね。それぞれのプロデューサーが、このバンドのある部分を強調しているように聴こえて、たとえばknoakさんは弦楽器やコーラスを入れたソウルっぽい仕上がりで、小西遼さんはギターのカッティングとかが入ってきて、クラブミュージックっぽいノリを感じたり。Shingo Suzukiさんは、やっぱりヒップホップ系なのかな。そしてMichael Kanekoさんはロックっぽさも入れて、疾走感があって。みたいな、それぞれのプロデューサーが、このバンドの好きなところを引っ張り出してるのかな、とか、勝手に思ったんですけど、どうですかね。

樋口:本当にその通りだと思っていて、自分たちが欲しいポイントもそういう部分だったりして、そこを出してほしいという思いでお願いするので。各ポイントでそういう話をして、デモの段階から、どこを一番に引き上げたいか?を話し合って、プロデューサーを決めるというのはありますね。

――そしてバンドのセルフプロデュース曲は、それこそ狭い部屋で4人だけでやっているみたいな、自然体を感じたりして。曲ごとにサウンドのアプローチが違っているところが、すごく面白かったです。というところで、アルバムの話に移りましょう。ついに完成したファースト・フルアルバム『circle』。どんな作品になりましたか。

永江:『circle』というタイトルにはいろんな意味があって、タイトルを元にアルバムを制作したという進め方ではなかったんですけど、曲数の枠を設定して、それぞれの枠にこういう色の曲が欲しいよね、というものを当てはめて、完成したものを『circle』と呼んでいます。それぞれの曲がすごく立っている、全体の流れもすごくいいなと思っていて、満足のいく作品になりました。

加藤:活動を始めてからちょうど5年で、ひと区切りというか、そんな大々的にテーマを掲げてやってはいないんですけど、自分たちの中にはそういう思いもあったりして。この5年間を、きれいにまとめられたアルバムだなと思っています。

――樋口さん、『circle』というタイトルはどこから?

樋口:アルバムのタイトルを何にしようか?と考えていて、『circle』というワードを見た時に、しっくり来るものがあったので。なんでしっくり来るんだろう?と思って、色々調べたんですけど、そもそも僕の曲や歌詞観が、個人の生活や暮らしにスポットを当てているものが多くて、人それぞれのパーソナルな部分や、パーソナルスペース、空間や事象をサークル=円に例えて、一人一人の円が重なるところにスポットを当てている、みたいな頭の中のイメージがあって、『circle』がしっくり来るなと思ったのと。あとは、サークル=全体、仲間という意味で、いろんなプロデューサーが関わってくれたり、レコーディングスタッフと仲良くさせてもらったり、周りの人たちとのご縁もあって、支えられてアルバムができているなということを、曲を並べた時に、あらためて実感できたということもありますし。

――はい。なるほど。

樋口:あとは、季節に関しての曲がとても多くて、季節の循環という意味のサークルと、5年間のひと区切りみたいな意味のサークルもあって。調べていくうちに、自分の中ですごく腑に落ちるワードだなと思って、『circle』というタイトルしました。

――めちゃめちゃ意味が重なってる。ぴったりですね。これ、ジャケットは美瑛あたりの景色ですか。

加藤:いや、これはイラストです(笑)。でも確かに、美瑛あたりにありそうですね。

――相蘇さん、どんなアルバムですか。

相蘇:最初は、今までの曲をまとめてアルバム1枚作りたいね、ぐらいの話だったんですけど、「LIFE」という曲ができた時に、今までのgoetheの歩んできた道というか、色々あっての今ということを、デモを聴いた時に感じて、いろんな意味を含めて『circle』というタイトルにしたいとなった時に、アルバムに入れたいと思っていた曲たちが、一つにまとまった感じが僕にはあって。この1枚を僕たちが出しました、というよりは、このバンドはいろんな人に助けられてきたという感謝と、おかげさまで僕たちはこうなりました、みたいな感じになったと思います。

――いい話。恩返しですかね。その、大事な曲になった「LIFE」は、どんなふうにできた曲ですか。

樋口:アルバムのリード曲を作ろうと思って、何曲も作ったんですけど、満場一致でみんながしっくり来てくれたのが「LIFE」でした。勇作が言ってくれた通りに、今まで5年間のバンド活動を思い返して作った曲で、アルバムにはそういうテーマが似合うかな、と思ったので。曲調的に、いい意味で僕ららしくないというか、内側に向く曲がずっと多かったんですけど、「LIFE」はそういう感じでもなくて、今をかみしめて前に向かうみたいな、外向きな曲ができたなと思っていて、集大成感はありつつも、次に向かう曲でもあるなと思います。

――曲先ですか。

樋口:曲先です。歌詞の内容も含めて、テーマを決めてはいるんですけど、歌詞とメロディはオケを作ったあとですね。頭の中に設計図があって、それを起こしていくみたいな作業です。

goethe / LIFE【MUSIC VIDEO】

――「LIFE」の設計図は、なんというか、ジャクソン5的なというか、明るめのソウルポップ的なサウンドが、最初から頭にあった。

樋口:そうですね。そこからどんどん付け足して、いろんな仕掛けというか、曲自体は4分弱なんですけど、飽きさせない工夫というか、いろんなギミックを入れたりして、人生の紆余曲折を表現したいというのがあって。気づいたら転調しているとか、気づいたら違う楽器出て来るとか、それを僕たちの5年間になぞらえて、と言いますか。

――言われてみれば、確かに。そこまで意識して聴いていなかったけれど。

樋口:コード進行も、順番は一緒なんですけど、区切る位置を変えて、Bメロに聴こえるとか。そういうギミックも、色々入れたりしています。

――すごい。パズルみたい。聴けば聴くほど、ってやつですよね。謎解きのヒントが散りばめられている。

樋口:探してほしいですね。隠し味がいっぱいあるので(笑)。

――昆布なのかかつおなのか。それ、すごくいいです。リスニングの楽しみが増えました。

永江:僕らも、そこを気づくところからスタートする、みたいなところがあるので(笑)。表現するにあたって。まずデモが送られてきて、それに対して解説はないんですよ。ある種、僕らの解釈を自由にさせてくれるので、そういう面白い、ちょっとした隠し味を自分たちが見つけるところか始まる、というのがあります。

――敵をあざむくにはまず味方から。違うか(笑)。

永江:で、自分で気づいたところを、「ここは良かったんじゃない?」という話をしたら、「そうなんだよ、実は、ここはね」みたいな会話が始まる(笑)。

――バンド内でそれをやるって、めっちゃ楽しいじゃないですか。

永江:5年間、曲を作っていく中で、こっち側の気づきも増えてきたのかな?と思っていて。そういう会話ができるようになってきて、もっともっといい曲にしよう、というふうになってきたのかなと思います。

――歌詞はどうですか。「LIFE」では、何を伝えたかったのか。歌詞も外向き、前向きではあるけど、これまでの道のりの苦労や悩みもしっかり背負って、だから“嵐の中を駆け抜けてく僕らの物語”と歌ってるのかなって、思ったりします。後味が、ピリッと苦い気がする。

樋口:過去の悲しみとか、後悔していることとか、全部一旦認めて、前を向くためにはそれを無視できないし、そういうことを抱えてこそ前を向ける、というところが個人的にはあるので。それって、不安を抱えてるようにも見えるんですけど、それが乗り越えるということだし、めちゃくちゃポジティブな状態というか、悲しみもポケットに入れちゃうみたいな、自分なりの前向きな応援ソングなんですね。

――このメッセージは、刺さる人はかなりいると思いますね。季節的にも、4月とか5月とか、新生活が始まって少し経った頃の、若干不安な気持ちを抱えている人の、背中を押すような曲という気がします。

樋口:今回、春の曲が多いんですよね。意識はしてないですけど、「Dear」とか、「Friendship」とか。僕は春が苦手で、そわそわする感じが苦手なんですけど、曲ではなぜか多くて、なんでだろう?と思っていたんですけど、春が苦手な自分を元気づけたいとか、鼓舞してる感じなのかな?って、勝手に最近考えてました。

――春が苦手な人に薦めたい曲。メンバーのみなさん、ほかに、お気に入り曲はありますか。

永江:全部好きですけど、その中でと言われたら、「Town」が好きです。切なさと、明るさと、何かいいんですよね。さっきの、自分たちがどんなジャンルか?という話ですけど、ナチュラルなものがやっぱり好きなんだな、というのがあって。ルーツになる音楽の影響を色濃く受けたもの、自分たちのそのナチュラルさみたいなものが、「Town」には一番出ていると思っていて、お気に入りですね。

加藤:僕は、 5曲目の「Friendship」です。ギターのバッキングが、最近あんまりなかったので、そういうのも良かったですし、また新しい一面だなと思います。プロデューサーで入ってもらった、Michael Kanekoさんのギターソロもかっこよくて、頼れる兄貴って感じでした。あと、「Friendship」のデモが上がった後に、太一と街なかを歩いていて、ビル群の光の照り返しとか、噴水の水面の光とかを見て、「こういうイメージでこの曲は作ったんだよね」と言っていたのが、すごく印象に残っていて、その情景もセットで、自分の中ではすごく好きな曲になりました。

相蘇:僕も「Friendship」と言おうと思ったんですけど、かぶっちゃったんで、「煙管」にします。「煙管」は、この中だと一番バンドの初期に録っている曲だと思うんですけど、スタジオで一人ずつ録っていたみたいな、セルフでレコーディングしていた時期に出来た曲なので、バンドの歴史が感じられるし、でも今ある曲に全然負けない強さを持っているし、「これがgoetheが始まった初期の雰囲気だよ」みたいに感じてくれたらいいかなと思います。

――という、全14曲。長さを感じない、スムーズな流れのある、アルバムらしいアルバムだなと思います。ライブで早く聴きたいですね。次は、5月30日、東京・恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブ。どんなライブになりますか。しますか。

樋口:リキッドルームという場所で初めてやるんですけど、活動初期から、ここでやれたらいいなとみんなで話していて、今回ついにやれることにすごくわくわくしています。あとは、メンバー編成がちょっと豪華になって、ホーン隊とコーラスも入るので、ツアーでは味わえないような、特別な日になる予感がします。

――スペシャルメニューなんですね。ワンデイオンリー。

樋口:そうです。僕らも楽しみですし、みなさんも、楽しみにしていただけたら嬉しいなと思います。

取材・文=宮本英夫

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goethe / Friendship 【MUSIC VIDEO】