この8月に結成20周年を迎えるSCANDALがアニバーサリーイヤーのキックオフと位置づける12thアルバム『ECHO』を5月27日にリリースする。
いつも以上に楽器の音圧が高めに感じられ、改めてバンドとしてのかっこよさを印象づける『ECHO』。その一方では、前作『LOVE, SPARK, JOY!』にひきつづき、複数の作家が書き下ろした楽曲をソリッドなバンドサウンドに落とし込むことにトライしている。ラップロックナンバーから壮大なバラードまでという曲の振り幅も聴きどころだ。
それにしてもこの10年、メンバー自ら曲を書いてきた彼女たちはなぜ、このタイミングで曲作りを作家に任せてみようと考えたのだろうか? HARUNA(Vo, Gt)、MAMI(Gt, Vo)、TOMOMI(Ba, Vo)、RINA(Dr, Vo)の言葉から、メンバーチェンジも活動休止もせずに20年間、走り続けてきた“ガールズバンド”の矜持と覚悟を、ぜひ聞きとっていただきたい。
リリース後は、アルバムのリリースツアー『SCANDAL TOUR 2026「ECHO」』、そして8月21日(金)には『SCANDAL 20th Anniversary Live “Chapter 20”』と題した大阪城ホール公演が待っている。
――めちゃめちゃかっこいいアルバムが完成しました。SCANDALがかっこいいということはもちろん知っていましたけど、『ECHO』を聴いて、改めてかっこいいバンドだということを一番に感じたんです。
HARUNA:うれしいです。ありがとうございます。
――まず何と言っても、「Girl is Ghost」「Hurt beat」「Dress to kill」という冒頭のファンクロック3連発にいきなりヤラれました。この曲順はなかなか挑戦的というか、挑発的だと思うんですけど、“どうだ!?”という気持ちもありつつ、この曲順だったんじゃないですか?
RINA:ちゃんと勢いや攻めの姿勢は見せられるものにまとめたいという思いはありました。
――1曲目の「Girl is Ghost」を、アルバムからの先行配信シングルに選んだのはどんな理由からだったんですか?
HARUNA:8月の結成20周年の日に大阪城ホールでライブをやることを踏まえて、自分たちのお客さんはもちろん、いろいろなアーティストのファンの方々にも今のSCANDALを見てもらいたいと思って、2月に対バンツアーを回ったんです。その中で、いろいろな人たちにちゃんと刺さるキャッチーなバンドサウンドの曲が欲しいねという話になって。ライブでやることを前提に、先行配信シングルになる曲を作ってほしいと今回のアルバムに参加してもらった作家さんたちにお願いして、そこで上がってきた曲の中から田中秀典さんが作った「Girl is Ghost」を選んだんです。
――この曲が一番、バンドサウンドとしてキャッチーで、ライブのキラーチューンになるんじゃないか、と。
HARUNA:満場一致で“これ!”ってなりました。
RINA:しかも、タイトルの頭文字がGIGになるんです。
――ほんとだ。全然気づいてなかったです。
RINA:実はそうなんですよ。それも楽しいと思いました。
――ベースソロからのギターソロ。あそこは絶対、ライブで聴きたいです。
RINA:映える場所ですね。
TOMOMI:盛り盛りで。
――2曲目の「Hurt beat」は所属事務所の後輩であるクボタカイさんの作曲です。
TOMOMI:クボタ以外はみなさん、私たちの初期の頃、曲を提供していただいた方々ばかりという中で、クボタと一緒にやってみたらどんなことが起きるんだろう? という興味があったのと、メンバーみんなクボタの曲が大好きなのでお願いしたんですけど、やっぱりおもしろかったです。クボタは普段、生のバンドサウンドじゃなくて、打ち込みDTMで作っているアーティストなので、もらったデモからどんどん生のバンドサウンドにしていくっていうところでも楽しみながら作っていけたんです。それがとてもいい時間だったと思います。
――「Hurt beat」は空間系の音色を使ったギターのカッティングとサステインが長めのラウドなドラムの組み合わせがおもしろいと思いました。
RINA:打ち込みの素材の音に生のドラムのサウンドを寄せるような音作りをしたんです。フレーズそのものはすごくシンプルなんですけど、機械っぽい音色のドラムを人間が叩いているからおもしろく聴こえるんだと思います。
――そういう発想だったんですね。「Hurt beat」のボーカルはラップと言ってもいいですよね?
HARUNA:そうですね。これともう1曲、「クラクラシック」でラップにはじめて挑戦しました。
――「SCANDAL IN THE HOUSE」でもラップしていましたよね?
HARUNA:あれをラップと言っていいのかどうかっていう(笑)。
HARUNA(Vo, Gt)
――なるほど。本格的なラップという意味では初挑戦だった、と。クボタさんに曲を頼んだら、2曲ともラップナンバーだったということなんですか?
HARUNA:そうです。私たちがラップでとオーダーしたわけではないんですよ。SCANDALの曲ではなくて、自分の曲を作ると思って作ってみてほしいと言って、出来上がって来たのがこの2曲だったんです。なかなかチャレンジングですけど、この2曲を選んだ自分たちもすごいと思うんですよ。結成20周年のタイミングで、やったことがないことにチャレンジできるメンタルを持っている自分たちでよかったと思います。
RINA:「Hurt beat」はすごくおしゃれな曲ですよね。
――《なんでも良いから掻き鳴らせ》とHARUNAさんが歌い上げるところが個人的にめちゃめちゃツボで。
HARUNA:ほんとですか?
――あそこを聴くと、グッと来るんです。
HARUNA:ほぼほぼ淡々と歌ってるんですけど、ところどころに感情的な部分もあって、そういうところは自分でもけっこう気に入ってます。
――クボタさんが書いた2曲は、歌詞の世界観が繋がっているようにも感じられます。
TOMOMI:どちらにも《掻き鳴らせ》というワードが入っていて、クボタはどんだけ私たちに掻き鳴らさせたいんだっていう(笑)。
RINA:クボタもバンドが大好きだからね。どちらも音楽のことを歌ってるのもおもしろい。
MAMI:生活感がちゃんとあって、普段、自分たちから出てくる言葉とはまた違う人生というか、1人の人間のストーリーがあって、それを私たちが歌うことで、また違う新鮮さがあるって感じます。
――自分の曲を作るつもりで作ってみてほしいとオーダーはされたけど、クボタさんはSCANDALのことを思い浮かべながら作ったのかもしれないですね。
RINA:私たちのキャラクターも知ってますからね。いろいろなアーティストに楽曲提供していることも含め、世間から認められているすごいアーティストなんですけど、ずっと私たちのファンでいてくれて、ライブにもよく遊びに来てくれたり、音源を出すたび感想をくれたりするんですよ。もちろん、私たちも彼のことはすごいと思ってますけど、私たちにとっては、かわいいすてきな後輩なんです。世代が1つ下ということで、その刺激もありましたね。そういう化学反応もあった気がします。遠慮なく書いてもらえてよかったと思います。
――3曲目の「Dress to kill」はシライシ紗トリさんの曲で、これもファンキーな本格的なラップロックナンバーです。
HARUNA:レコーディングする前に紗トリさんのスタジオに行って、どういうニュアンスでやるかけっこう詰めたんですよ。それもあって、かなり掴んだ状態でレコーディングできたからおもしろかったです。
TOMOMI:クボタの2曲もそうでしたけど、ルーツにラップがあるわけじゃないのにHARUNAが1回のリハでめちゃめちゃコツを掴んできたので、さすがだなと思いました。だから、レコーディングもかなりスムーズだったんですよ。
HARUNA:紗トリさんの指導が的確だったからなんですけど、私自身はこの曲はむしろギターのレコーディングがおもしろかったと思っていて。そんなに弾いてるわけではないですけど、途中のギターソロと最後のヘンテコなギターは、私なんですよ。
――HARUNAさんだったんですか。この曲のギターソロ、めちゃめちゃかっこいいです。
HARUNA:レコーディングで弾いたのは、両方とも2回ずつぐらいで、「パッションでいいんだよ」みたいなところがめっちゃ紗トリさんらしいと思いました。
――じゃあ、フレーズもそんなに決めずにレコーディングに臨んだんですか?
HARUNA:もちろんデモはあったんですけど、雰囲気だけやって、みたみたいな感じで。「もう1回、弾いてもいいですか?」って言っても、「いや、いいよ。これで十分だよ」って紗トリさんが言うので、「ほんとに大丈夫ですか?」って聞いたら、「何回も録り直しするような曲じゃないよ。真面目だな」って言われちゃいました。でも、楽しかったです。
MAMI(Gt, Vo)
――さて、話の順序が逆になってしまったんですけど、今回はいままでお話を聞いてきたように、前作の『LOVE, SPARK, JOY!』と同じように、さまざまな作家の方々から提供してもらった曲をSCANDALが演奏するというトライをしていますが、それは前作の手応えが大きかったから、ひきつづきやってみようということなんですよね?
TOMOMI:前作の制作が楽しかったっていうのはあります。あとやっぱり20周年って、自分たちにとってはかなり特別で。もちろん自分たちで楽曲を作るというやり方もあったとは思うんですけど、自分たちで作ったら、内向的というか、シリアスな方向に進んでいくような気がしたんです。それはそれでありだったかもしれないけど、もっと明るく、軽やかな気持ちで、20周年を迎えたかったっていうのがあって。それで、作家の方々には“20周年を迎える私たちに演奏させたい曲”というオーダーをしたんですけど、初期の私たちを作ってくれた作家さんたちは、今の私たちをどんなふうに見ていて、それをどういう楽曲で表現してくれるのか?ということに興味があったっていうのが大きかったと思います。
――出来上がってきた曲を聴きながら、今のSCANDALをこんなふうに見ているんだ、という驚きもあったんですか?
TOMOMI:驚きもありましたけど、上がってきた曲が多種多様だったというのがまずうれしかったです。これまでいろいろな曲にチャレンジしてきて、自分たちってどういうバンドなのか一言で言えずにいたんですけど、それが正解でもあったんだって思えたんですよ。作家さんたちと一緒にやってきた中で、自分たちだったらこういう演奏をするとか、この歌詞は絶対に思いつかないとか、そういう発見をすることで、自分たちらしさみたいなものが、うまく説明はできないけど、知らない間にできていたんだって気づけて。とてもいい制作だったと思います。
――他のバンドも外部の人に曲を書いてもらったら、自分たちのことがわかるんじゃないかって、いまお話を聞きながら思ってしまいました。
TOMOMI:自分たちのことを客観的に見ることができるっていうのがおもしろいですよね。
RINA:でも、その勇気を出すってなかなか難しいかなとも思います。メンバーで完結する良さもあると思うんですよ。どちらも違う良さがあるって、両方やってきたからこそ実感としてあるんですけど。そういう柔軟性がバンドを続けるという選択をするなら、いまは必要だったし、ガールズバンドを20年やるって、こういうトライを拒まない気持ちが大事なんだって、いますごく思います。曲は作家さんたちに作ってもらってはいるんですけど、いま、どういう気持ちでいるかっていうことはお話しさせてもらったし、何よりもいままでのストーリーがあるっていうことが大きかったし。だから、これは自分たちでちゃんとプロデュースした一枚だっていう感覚もちゃんとあるんです。
TOMOMI:自分たちはバンドを始めた頃、楽曲を作ってもらっていた経験があるから、柔軟にできるんだと思います。
――そうですよね。
TOMOMI:最初から自分たちで制作しているバンドだったら、作家さんに作ってもらうって、そう簡単にはできないんじゃないかな。
RINA:勇気が要るよ。
――ところで、「Heaven」と「Stay Holy」は、それぞれRINAさんとTOMOMIさんが詞を書いていますが、なぜ、おふたりが書くことに?
TOMOMI:2曲とも川口(圭太)さんの楽曲なんです。いままでアレンジャーとして、ずっとお世話になってきたんですけど、今回は曲も作ってくださって。ただ、川口さんは歌詞を書かないんです。他の作家さんはデモの段階で歌詞もあるんですけど、川口さんはラララだけで。でも、川口さんが作ってきてくれたメロディーが自分たちにとって、かなり新しかったので、この2曲は絶対やりたいねってメンバー全員が思ったんですけど、そうなると、誰かが歌詞を書かなきゃいけない。誰が書いてもよかったんですけど、だったら書いてみようかって。
――「Stay Holy」の歌詞のアイデアは、曲を聴いてから思いついたんですか?
TOMOMI:そうです。とても広い空間で歌っているイメージがあったので、大きい曲にしたかったんです。もうすでにほとんどの曲の歌詞が出来上がっていたので、そこにラブソングが入っていたら、アルバムとしての幅も広がるし、深みも出るんじゃないかと思って、ラブソングにしようと思いました。
TOMOMI(Ba, Vo)
――大きな曲とおっしゃったんですけど、歌詞の内容は1つの部屋、もっと言えば、《光纏うシーツの中》の出来事じゃないですか。そのコントラストがすごくおもしろくて。
TOMOMI:そうですね。固定されたワンカメのシチュエーションではあるんですけど、愛という意味では、ものすごく広いものだと思っていて。特定の誰かに向けているようにも取れるけど、人間愛みたいなものを歌えたらいいなと思って。30代に入ってからは、そういうラブソングを書きたいモードで。恋と言うよりかは。なので、そういうものをイメージしながら書きました。この曲は讃美歌みたいなイメージもあったから、みんなでハモっているんですけど、それも川口さんが歌割を決めてくれて、そういうのも久しぶりだったからおもしろかったです。この曲だけじゃなくて、今回のアルバムはいろいろな楽曲で、みんなの歌声が入っているんですけど、その歌割も自分たちでは決めてなくて、それぞれの作家さんに、ここは誰に歌ってほしいって決めてもらって。そういうやり取りも懐かしくて、楽しかったんです。
――「Stay Holy」はアレンジも川口さんですが、ほぼバンドサウンドだけじゃないですか。大きなバラードだから、ストリングス含め、いろいろな楽器が使えそうですけど、バンドサウンドというこだわりが川口さんにも、みなさんにもあったんですか?
RINA:削ぎ落としたアレンジですよね。最初からこの形でしたけど、川口さんは基本的にシンプルなロックとか、編集しないまま仕上げる荒さとかが好きなので、久しぶりにこういうピカピカしすぎていないエモーショナルな曲を作れて、気持ちよかったです。実は、楽器のレコーディングの時は、まだ歌詞が出来上がってなくて、どういう曲になるのかわからないままレコーディングしなきゃいけなかったんですけど、前日に大きな愛の歌にしようと思っているってTOMOMIがイメージをくれて。それを共有しながらレコーディングに臨んだんですけど、歌詞がなかったにもかかわらず、すごく感情を込めながら演奏できたっていう体感があって。一発録りだったんですけど、私、2回しか叩いてないんです。
――なんと。
RINA:ほとんど同じビートをずっと叩いているという、川口さんにしては珍しいアレンジになっているんですけど、後半になるにつれて、めちゃめちゃ感情が入っていって、歌詞がないのにちょっとうるっと来るような感覚があるという。なんだか不思議なレコーディングでした。その後、歌詞が出来上がってきたら、《魔法にかけられてる》というフレーズに重なるギターがほんとに魔法をかけてるみたいな音だなって思ったし、《愛しい日々に慣れてきても 大事な日には花を飾るの》ってフレーズも大人の女性らしい細やかな愛情を表現している描写に思えて、すごく好きですね。
――絶妙に揺れが加えられたリードギターの音色は、確かに魔法をかけているみたいですね。
MAMI:あれはめっちゃ川口さんっぽい。「Heaven」もそうだけど、川口さんならではってアレンジなんですよ。
TOMOMI:レコーディングの時はかなりビビるんですよ。私たちの想像をはるかに超えたアレンジになっていることが多くて。でも、音源になったらめっちゃかっこいいんです。
――それを言ったら、「Heaven」なんてまさにそうですね。この曲、普通にアレンジしたらキュートなポップソングだと思うんですけど、なんでこんなにエキセントリックなアレンジなんだろうって。いや、そこがいいんですけど。
RINA:この曲は難しかったです。ジャズの要素をリズムに入れたかったそうです。おもしろいアイデアだと思いながら、めっちゃ練習しました。すごくかっこいい、きれいな曲ですよね。大好きです。
――音階が下がっていく2番のバッキングも、どうしたらこんなアレンジを思いつけるんだろうって。
RINA:めっちゃ気持ち悪くて、めっちゃ気持ちいい(笑)。
――すごいと思いました。サビでミヨーン、ミヨーンって鳴っているギターは?
MAMI:あれはオートワウです。あれも川口さんらしいですね。もう慣れました(笑)。毎回、どうやって弾くの!?ってアレンジを考えてくださって、かれこれ18年ぐらいのお付き合いなるんですけど、ちょっとずつ私たちをレベルアップさせてくれるフレーズを次々に考えてくださって。今回も「Heaven」と「Stay Holy」の2曲でかなりレベルが上がったと思います。
――サビ前のベースのフレーズもどうかしていますよね?(笑)
TOMOMI:最初に聴いたとき、ライブどうするの!?って思ったけど、演奏するとやっぱり楽しいんです。弾いていると、最終的に楽しくなるっていうのが、川口さんの魔法なんですよ。
RINA(Dr, Vo)
――RINAさんが書いた「Heaven」の歌詞は、バンドのことを歌っているようですね。
RINA:まさに。作家さんたちがいろいろな歌詞を書いてくれたので、バンドに対する正直な気持ちを書けるのは私しかいないと思って、そこにトライしました。その作業がちょっと辛くなってるからっていうのも、作家さんにお願いした理由の1つだったから、またそれをやるの!?っていう気持ちもあったんです。でも、いまやるべきだと思って、いろいろなことを思い返したり、メンバーのことを思い浮かべたりしながら書いていったら、すごくいい涙が流れてきて。歌詞を書きながら、久々にめっちゃ泣いちゃいました。常に未来に向かって、進んできたと思うんですけど、20周年という大きな区切りの前で一呼吸ついて、後ろを振り返った時に、自分たちはすでにいっぱい宝物を持ってたということに気づいて。素敵なものをもっと先に見つけなきゃっていう気持ちも大切だけど、いまあるものに目を向けて、それを抱きしめる作業も同じぐらい大切だと思って、その探しにいく作業と、満ちてることを実感する作業の両方がいまの自分には必要なんだって初めて感じました。その気持ちを曲にすることができて、うれしかったと思うのと、かなり真っ直ぐに全部書いたと思うんですけど、ダンススクールでこの4人が出会って、バンドをしていく中で、こういうことをしてみたいとか、プライベートでこういう経験をしてみたいとか、きっとそれぞれのタイミングでいろいろあったと思うんですよ。それはこれからも絶対あると思うんですけど、4人ともバンドを第一に選んできたんですよね。それがあるからこの20年があるわけだし、1つのものを4人で大切に愛してこられたのは、ほんとに奇跡だし、メンバーに感謝だしって、いますごく思います。
――《今やっと音になってきた》以外、バンドを表現する具体的な言葉は使っていませんけど、それでもバンドのことを歌っているとわかるのは、絶妙な言葉遣いをしているからですよね。
RINA:うれしいです。レコーディングの直前に川口さんが電話をくれて、「言葉に合わせて、メロディーをちょっと変えたいんだけど、こういうのはどう?」って電話口でギターを弾きながら歌ってくれたので、「そのコードでそのメロディーにするんだったら、ここの語尾をこう変えたらどうですか」って、その場で作詞作曲するみたいなことがあって。その前のめりの感じが私はすごくうれしかったですし、「曲を作るって楽しいね」っていうすごいピュアな会話もあって、それもうれしかったです。感動に満ちた、すごく楽しい作業だったんですよ。
――そんなことがあったんですね。ところで、今回、エキセントリックなアレンジの曲も含め、幅広いいろいろな曲を歌ったHARUNAさんはボーカリストとして、どんなふうにアプローチしていったんですか? また、その中ではどんなチャレンジがありましたか?
HARUNA:SCANDALのボーカルとして、自分の歌が一通りじゃないということは、ものすごく意識して、ずっとやってきたんです。それはメンバー全員で楽曲を作り始める以前に楽曲を提供してもらってたからこそ、SCANDALの楽曲にはいろいろな幅があるということで、一通りの歌い方では、曲の魅力を引き出せないことに気づいたからなんです。それ以来ずっと自分の限界にチャレンジするじゃないですけど、ボーカリストとして、引き出しを増やしてきた感覚があったんです。今回は、そんなふうにいろいろな曲をやるごとに新しい歌い方にチャレンジして、自分の中に貯めてきた引き出しの中から、この曲にはこういうアプローチかもって引っ張り出してくる作業をしながら、ラップという新しい引き出しを増やして、というインプットとアウトプットがちょうどいいバランスでできたと思います。
――1つ確認なんですけど、爽やかなポップロックナンバー「Strawberry」のボーカルは?
HARUNA:途中でTOMOMIの歌が入ってきたり、RINAのウィスパーボイスが重なったりするんですけど、基本は私です。
――なんですよね。自分の耳が悪いのかな、一瞬誰なんだろう?って。
MAMI:そう思いますよね?
――さらに歌の引き出しが増えたということなんでしょうね。歌謡ロックナンバーと言える「SPOTLIGHT」もかなりかっこいい曲ですね。
TOMOMI:うれしい。
――まさに初期のSCANDALを思い出させる曲ですよね。
TOMOMI:作詞作曲の大久保友裕さんが今回の作家さんたちの中で一番久しぶりだったんです。それこそ15年ぶりなのかな。それくらい久しぶりにご一緒したんですけど、大久保さんがかつて書いてくれた曲って、ほんとに人気があるんですよ。大久保さんがアレンジした「ひとつだけ」っていう1stアルバム(『BEST★SCANDAL』)の曲は、たまにライブでやると、お客さんみんなほんとによろこんでくれるんです。そういうエネルギーがあるものを作ってくれるので、もう一度そういう楽曲をお願いしますとお話をして、何曲か上げてくださった中から真っ直ぐすぎて、涙が出ちゃうようなとこころが大久保さんらしいこの曲をやるべきだと思って。やってみたら、こういう楽曲ってやっぱりHARUNAのボーカルがめっちゃ活きるなってなりました。
MAMI:他の曲がちょっとトリッキーすぎるからね(笑)。
TOMOMI:歌声を自由自在に操れるって、HARUNAの強みではあるけど、HARUNAの一番真ん中の声は、ここにあると思います。この曲のHARUNAの声が大好きです。
――サビの頭でギューンって鳴るギターのフィードバックがかっこいいです。
MAMI:ワクワク感が増しますよね。そういう引っかかりを作るのも大久保さんはじょうずなんですよ。
――「Blue bus」の多彩なフレーズをパートごとに使い分けているドラムも聴きどころではないですか?
RINA:ありがとうございます。サビの細かいフレーズは、鼓笛隊みたいなかわいさと気持ちよさがあるんですよ。でも私、この曲をいただいたとき、歌詞がものすごく刺さったんです。(この曲の作詞・作曲の)田鹿ゆういちさんがこういうことを言うのがちょっと意外だったというか、田鹿さんのキャラクターを知っているからこそっていうのもあるんですけど。《変わらないことだって恐れない》とか、《新しいことがすべてじゃない》とか、いままで言ってきたことと反対のことを言っているようなフレーズは、大人になった自分たちが歌うからこそ伝わるなのかなと思って、すごく素敵だなと思いました。田鹿さん自身は何て言うんだろう、カルチャー感があって、ロックンロールな人なんですけど、作品はいつもすごく繊細で。田鹿さん自身、50歳の節目や仕事の変化があった時期らしくて、それでいつもとは逆の歌詞が出てきたそうです。田鹿さんと私たちの節目が重なって、いい曲ができたところがおもしろいと思います。
――この曲は音が途切れ途切れになるギターソロもおもしろい。
MAMI:そのヤバい感じも川口さんです。
――ほんとだ。「Blue bus」のアレンジは、川口さんでした。
MAMI:その音からはせつなさも感じられて、この曲のエモさを際立たせてくれてるなって思います。
――あれ、どうやって弾いているんですか?
MAMI:トレモロを掛けながら、サステインを短く設定しつつ、その掛かり加減は、弾きながらどうにかしなきゃいけないんですけど。川口さんは聴いたことがないような音になるのが好きだから、ちょっと失敗したかなって思うようなテイクが採用される時もあるんですよ。
TOMOMI:発想がオルタナだよね。
MAMI:だから、いつもちょっと変わった音色は、メインのフレーズやソロはいろいろ試行錯誤しながらやってます。
――さっきもちらっと「Stay Holy」のところで言いましたけど、今回は全体的にバンドサウンドにこだわっていますよね?
RINA:結果、そうなりましたね。
HARUNA:作家さんたちは、私たちにちゃんとそれをやって欲しかったんでしょうね。
RINA:そうだね。
――そういうことか。
MAMI:ライブの再現性は、そんなに考えなくていいですって、曲をお願いする時に作家さんたちに伝えていたんですよ。対バンツアーをやっていたから、ライブ曲にしたいという気持ちもありつつ、大きな枠組みとしてはアルバムを作るということも伝えていたので、ほんとに自由に作ってくださいという感じではあったので。バンドサウンドにしたいとか、メンバー全員で歌いたいとか言ったわけではないんですけど、上がってきたら、そういう曲が多くて。これを今のSCANDALにやってほしいっていうことなんだろうなって、言われなくても伝わってきました。
――その結果、冒頭でもお伝えしたようにバンドとしてめちゃめちゃかっこいいと思えるアルバムになりました。
MAMI:ありがとうございます。がんばりました(笑顔)。
――『ECHO』というタイトルはどんなところから?
TOMOMI:20周年のタイミングで作った曲が反響していったらいいな、みたいなイメージです。
RINA:それだけ命をかけて、作ってきたってことだって思うし、音楽を作り続けるって、それぐらい気力が必要なんです。自分を豊かにしてくれるものであるけど、削ったりもする。その両面があるものなんだっていうのは思いましたね。
TOMOMI:そういう状況になったら、多くの場合、活動休止という選択になるのかもしれないですけど、初期の頃の作家さんと一緒にやることがいま、めっちゃ楽しいと思えるマインドでいられるって、自分たちの強みだと思うんですよ。
HARUNA:続けてきたからこそ、いま、ちゃんとそうマインドでいられるんだと思うし、その前に潰れなくてよかったと思うし。
――さて、6月9日からアルバムのリリースツアー『SCANDAL TOUR 2026 「ECHO」』が始まりますが、計4本ってちょっと少なめじゃないですか?
RINA:はい。かなり少なめにしました。しかも、場所的には3か所しか行かないんです。
――そうか。東京2デイズですね。
RINA:でも、8月21日の大阪城ホール公演まで、時間があまりないので、負担になりすぎてもっていうのがあって。ツアー自体やらないかもっていう可能性もあったんですけど、せっかくいいアルバムができたので、少なくてもやりたいという4人の意思でツアーを組みました。これがマックスのスケジュールではあるんですよ。なので、4本しっかり大切に楽しく回っていきたいと思っています。
――なるほど。いただいた『ECHO』の資料に「結成20周年イヤーのキックオフを告げる最新作品」と書かれていましたが、大阪城ホール公演以降、20周年記念のイベントの予定もあるんでしょうか?
TOMOMI:もちろん考えています。
RINA:城ホールに来てもらえたらわかります(笑)。でも、まずは城ホール公演を見てほしいです。いまはもうそこを目掛けて、生きているので。
TOMOMI:ファンのみなさんはもちろんだけど、一度でも私たちに関わってくださった関係者の方全員に来てもらいたいと思ってますので、お願いします。
――どんなライブにしたいと考えていますか?
TOMOMI:さすがにメモリアルなライブになると思います。20年やってきたすべてというか、どの時代の、どんな日の自分たちも肯定したいので、どの時代の曲もやる可能性もあります。できることをすべてできたらいいなって思ってます。
取材・文=山口智男 撮影=大橋祐希