Galileo Galilei Tour 2026 “NAKED HERO”
2026.5.17 KT Zepp Yokohama
どなたかが「青春バンドから人生バンドになったGalileo Galilei」とSNSにポストしていたが、その実感を120パーセント味わえるツアーが今回の『NAKED HERO』だったんじゃないだろうか。活動休止前、高校・大学生だった人、当時は小学生でライブに行けなかった人、活動再開後にファンになった人など、バンドとの出会いは以前よりさらに重層的になっているはずだ。今回のツアーはアルバムリリースに伴うものではなく、その分、さまざまな時期のレパートリー、ライブ初披露曲も含み、しかも近年では最長の全国7都市を巡った。ここでは札幌、大阪を経たツアー3本目の横浜公演を振り返ろう。
Zepp HanedaやZepp DiverCity(TOKYO)、ましてや東京ガーデンホールなどと比べるとずいぶん近い距離に感じられるKT Zepp Yokohama。親密な空気の中、『STAR WARS』などジョン・ウィリアムズの映画音楽が流れる。そこに開演10分前に尾崎雄貴(Vo/Gt)がラグをマントのように羽織って登場。「楽しみすぎて出てきちゃいました」との理由は本編を全力で駆け抜ける意思の表れだったようだ。
登場も新鮮で、ハウシーなSEに尾崎和樹(Dr)のビートが乗り、さらに岡崎真輝(Ba)がステージ前方に出てプレイをアピール、そこに両翼のギタリスト・岩井郁人(Gt/Key)とDAIKI(Gt)、お馴染みサポートメンバーの大久保淳也(Sax/Fl,etc)が加わるライブアレンジのイントロで1曲目が「明日へ」であることが確信できた時のフロアの反応のビビッドさ。雄貴の豊かで深くなったボーカルも、DAIKI、岩井それぞれのリフのカラーも、滑空するような空間を作る大久保のサックスもまさに今のGalileo Galilei(以下、GG)だ。続く「くそったれども」は再始動後『BLUE』に収録されライブでも演奏されているが、この日はギターロックバンドの生々しさが2026年のGGを印象付ける。ステージが明るく照らされた「鳥と鳥」で6人の躍動するアクションがはっきり見えたことで、フロアも一段とプレイに没入。大久保のフルート、珠玉としか呼びようのないギターアンサンブルなどが細胞に染み渡る。
Galileo Galilei
Galileo Galilei
最初のMCでは「今まで一度もやってない曲も盛り込んで。だから『NAKED HERO』ってタイトル」(雄貴)、「まだまだ皆さん硬いですね。もっと裸になってください、心も体も」(岩井)と、緊張を解した。そして2010年代、日本のバンドの中で際立ってインディポップを体現していた『PORTAL』『SEE MORE GLASS』期のレパートリーが続く流れはすでに再録されていた「Imaginary Friends」にも横溢しており、正式メンバー加入後のDAIKIのリリカルかつ燻銀のギタープレイがより全景化。そして《だってね君の居場所はここじゃないから》という前向きな決意にファンの気持ちが集まって昇華されるように感じた。その体感は嬉しさを超える感嘆を含むイントロでの歓声が上がった「サニーデイハッピーエンド」や「Mrs. Summer」にも接続して行き、ティーンエイジャーの瑞々しくも少し危ういマインドを音楽で追体験させる。まさにある時期にファンが愛した誰にも似ていない「俺たちのGalileo Galilei」が蘇ったに違いない。しかも無駄のないタフなバンドアンサンブルはインディポップというより、この日、ストロークスっぽいタイトさまで内包していたのだ。こんなバンド、世界でも珍しいだろう。
Galileo Galilei
「Mrs. Summer」は夏フェスに向けて作ったもののキーが高くて結局披露してこなかったと雄貴が裏話を明かした後、「どんどん新しい曲を作りたくなるけど、どの楽曲も大事にしているし、今バンドの状態がいいのでこのツアーも楽しくやれています」と『NAKED HERO』の核心に改めて触れてくれた。そこからさらに増したパッションで「プレイ!」へ。シンプルなビートとクセになるメロディにテンションが上がり、もはや定番の大久保のサックスから「あそぼ」へ。雄貴のリングアナっぽいメンバー紹介にフロアの空気もどんどん自由になっていく。
再びムードはじっくり曲のストーリーを味わう「嵐のあとで」で転換する。進んでいくストーリー、雨のテクスチャーが感じられるギターの音色。ジャンルを超えて生音のバンドアンサンブルの粋を極めた演奏に息を呑む。そしてフラジャイルな物語性を湛えたアルバム『ALARMS』からの2曲「フラニーの沼で」と「パイロットガール」のイントロへのリアクションの大きさ。10代の潔癖と少しの毒が、ひんやりとしたGG流のシューゲイザー的アンサンブルに薄いサックスの音色も重なり、特に今の音になった「フラニーの沼で」には大いに覚醒させられた。そしてさらにムードを変える小品「Sea and the darkness」を経て、霹靂のようなサックスソロ。なんて大胆なライブアレンジなんだ?と驚いていると、新しい解釈で更新された「サークルゲーム」につながるという、この日最もダイナミックなセクションが展開されたのだった。「プレイ!」からの7曲の体感の速さと時空を行き来する不思議は今回のセットリストの特徴だろう。
尾崎雄貴
岩井郁人
DAIKI
岡崎真輝
尾崎和樹
メンバーの手応えはダイレクトに「リトライ」でのパワフルな演奏と雄貴の揺らぎないボーカルに感じられたし、近作「青陽潮」のカントリーを独自解釈したアレンジや、サビの2ビートの新鮮さにも明らか。こんなにジャンプしたりすずめちゃんペンライトがずっと揺れているフロアも初めてかもしれない。さらにオリジナルはAimerのボーカルも馴染みの「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」はイントロのサックスで今はブルース・スプリングスティーンの「Born to Run」を想起するぐらい、このライブメンバーのスタイルに定着した印象だ。
Galileo Galilei
そして最新曲「木漏れ日坂」は音源の穏やかでフォーキーなタッチを超えてきた。というのも、雄貴の歌の始まりにしてピークを提示するエネルギー然り、歌う旅人の姿を借りてバンドという人生を謳っているようにもとれる歌詞然り、Galileo Galileiを続けてきた今だからこそ放たれた表現として受容できたからなんだと思う。さまざまな時間、感性を巡ってきた時間の締めくくりは音の重なりにメンバーの息遣いが込められた2曲。自然にシンガロングが起きた「Birthday」ではラストのヴァースを前にバックライトだけになり、一瞬ステージ上が見えなくなる演出がむしろシンガロングの起爆剤にもなっていた。そして本編ラストの「星を落とす」はスターゲイズのようなギターサウンドもGGならではの透明度で、その質感のまま熱量を上げていくエンディングに込み上げるものがあった。
尾崎雄貴
アンコールでは5月生まれの雄貴、和樹、DAIKIを岩井の指揮による「Birthday」のシンガロングでお祝い。さらにまだツアー途中だが「絶賛かなり力を入れてアルバム制作中です。GGはアルバムが出て、それがみんなとの会話になってるんで」という雄貴からのアナウンスに湧き返るフロア。なお、アルバムは年内リリース予定で11月には再び東京でのライブも実現するという。
素朴なアレンジがむしろ新鮮な「稚内」、この日最大ボリュームの悲鳴まで混じった歓声を記録した「ボニーアンドクライド」では岩井、DAIKIという両翼ギタリストに個人的にはジョン・スクワイアやジョニー・マーといったUKロック至宝級ギタリストに通じる感性を見たし、「Sea and the Dakrnss II」の深みはさらに増していた。と、じっくり深い余韻を残すエンディングがこれまでのGGだとすれば、今回のツアーではなんとダブルアンコールにも応答。最後に思い切りジャンプしてペンライトを振り回す「SPIN!」をセットしたのも今のバンドのテンションを示唆していた。
封印を解かれた楽曲へのファンの深い没入、さらにツアーを完走した先にどんなアルバムが待っているのか。どの時期とも違う今のGGに期待は尽きない。
Galileo Galilei
文=石角友香
撮影=Masato Yokoyama @yokoyamarock