MUSIC AWARDS JAPAN WEEK SPECIAL LIVE
Surf & Breeze 高中正義/ANRI
2026.6.11 SGC HALL ARIAKE
国内最大規模の国際音楽賞『MUSIC AWARDS JAPAN』のアワードウィーク期間内に様々な公演が開催された。6月11日(木)東京・SGC ホール有明で行われた『MUSIC AWARDS JAPAN WEEK SPECIAL LIVE Surf & Breeze』には、高中正義とANRIが出演。ワールドツアーの各会場が大盛況となっている高中。北米ツアーの一環で行なった5月17日のNY単独公演を大成功させたANRI――ここ数年、海外で高まっている日本のシティポップブームを語る上で欠かせない両者の共演は、「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」という『MUSIC AWARDS JAPAN』のコンセプトを体現していた。このライブの模様をレポートする。
■ANRI
ANRI
BGM代わりの波の音が観客の期待を高めていた開演前。サポートを務めるバンド・BEST Buddiesの演奏が始まり、ANRIが登場すると、客席の全エリアから歓声が上がった。オープニングに届けられたのは「WINDY SUMMER」。白いハットをかぶり、エメラルドグリーンの衣装を揺らしながら声を響かせた瞬間、会場内が明るくなった気がしたのは、錯覚ではなかったと思う。浜辺で海風を頬に感じているかのような開放感だった。続いて、「FLY BY DAY」と「Remember Summer Days」も披露。聴き心地が、海辺で過ごす穏やかな時間をイメージさせてくれる。日常の喧騒から遠く離れた場所へと連れて行く歌声の魅力が、序盤からきらめいていた。
ANRI
「今日は『MUSIC AWARDS JAPAN』に向けて音楽業界のみなさんがドキドキしてる夜。私は受賞の心配がないので(笑)、誰よりもリラックスして歌える気がします。それって、もしかして最強かもしれませんね。最後まで音楽を楽しんでいってください」――MCを挟み、バラードの「YOU ARE NOT ALONE」が披露された。スタンドマイクに向かって立ち、一心に響かせる歌声が、曲に刻まれたストーリーを精緻に浮き彫りにしていく。「SUMMER CANDLES」「Last Summer Whisper」も歌声が語り部となり、言葉を超えた感情を度々滲ませた。凄腕のバンドメンバーたちが作り上げる厚みのあるサウンドにもうっとりとさせられる。ANRIの音楽と共に人生を重ねてきた観客にとって、様々な思い出がよみがえるひと時にもなっていたと思う。
ANRI
「次にお送りする曲は、少しアゲアゲな感じですかね? きっとみなさんがご存知であろう曲なので、もし知ってる曲があったら、ぜひ一緒に歌ってくださいね」と観客に呼びかけてから歌い始めた「CAT'S EYE」。ビートを利かせた演奏が、昂揚感をどんどん高めてくれる。ダンサブルなアレンジによって、雄々しいメロディが一際の熱を帯びていた。そして、「悲しみがとまらない」は、イントロが奏でられた瞬間、歓声が上がった。ANRIがマイクを向けると、観客から届けられた歌声。切ない恋の歌だが、長年に亘って愛される中で、笑顔も誘う曲となっているのを感じた。ファンの人生と共に歩みながら、リリースした当時とはまた別の輝きも放つのが、時代を越えて愛されていく名曲なのかもしれない。
ANRI
爽やかな手拍子を誘った「SHYNESS BOY」を経て、ラストに披露されたのは「オリビアを聴きながら」。エレピの伴奏で歌われた後、他の楽器の演奏も合流。豊かなアンサンブルで彩られた歌声を聴くのは、本当に贅沢な体験だった。歌い終えた後、ANRIはBEST Buddiesのメンバーたちを紹介。植田浩二(Gt)、小松秀行(Ba)、Kenny Mosley(Dr)、斉藤ノヴ(Perc)、小倉泰治(Key)、鈴木明男(Sax)、Gary Adkins(Cho)、VahoE(Cho)……1人1人のメンバーへのリスペクトが伝わってくる。大切にしている曲たちを音楽仲間たちと届けてくれた彼女は、とても活き活きとした表情を浮かべていた。
■高中正義
高中正義
手拍子と共に起こる「タカナカ!」という声に出迎えられて高中正義が登場。「BRASILIAN SKIES」がオープニングを飾った。斉藤ノヴ(Perc)、岡沢章(Ba)、宮崎まさひろ(Dr)、宮崎裕介(Key)、井上薫(Key)、大滝裕子(Cho/AMAZONS)、斉藤久美(Cho/AMAZONS)によるサウンドに加わるギターの旋律は、鮮やかな色彩のよう。2曲目「トーキョーレギー」は、歌声でも魅了してくれた。落ち着いたトーンに温もりも添える彼の声質は、何処となく郷愁も誘う。ペンライトを揺らす観客の間に漂うムードがとても和やかだった。
高中正義
約2ヶ月前のNY公演でのエピソードが語られた最初のMC。ポール・マッカートニーの娘である有名デザイナー、ステラ・マッカートニーが高中の大ファンである息子と観に来るのを知り、ビートルズの曲をライブ内に盛り込むことにしたのだという。中1の時にビートルズと出会い、ギターを弾き始めた彼にとって、あらゆる曲への思い入れはとても深い。しかし、あまりにも有名なナンバーだと彼女たちがお忍びで来ていることがばれてしまう。「アンド・アイ・ラヴ・ハー」「アイ・フィール・ファイン」「涙の乗車券(チケット・トゥ・ライド)」「ノルウェーの森(ノーウェジアン・ウッド)」など、いろいろ候補を考えた末に、本番で引用してプレイしたのは「ディジー・ミス・リジー」の一節。しかし、終演直後にスタッフから「ステラさん、体調悪いそうで来なかったです」と聞き、肩を落とす結末となった。「丸1日かけて考えたのに……」とぼやいた瞬間、観客は大爆笑。
高中正義
ビートルズナンバーの短い一節の演奏も時折交えたのが貴重だったMCタイムを経て、ライブが再開された。「SHAKE IT」「渚・モデラート」「Saudade」「Finger Dancin’」「TAJ MAHAL」「THUNDER STORM」「READY TO FLY」……多彩な音色、繊細なニュアンス、躍動するメロディの全てに温もりが宿っているギタープレイに、うっとりとせずにはいられなかった。少年少女時代に高中に憧れてギターを弾くようになり、今でも人生の喜びとしている人はたくさんいる。何度も繰り返し聴きながらコピーしたフレーズを永遠のギターヒーローが目の前で輝かせるのは、そんな人々にとって何とも言えないくらい感動的だったに違いない。そして、「みなさま、楽しい夏をお過ごしください。僕たちはまだ夢が終わってなくて、楽しいロンドンに行ってきますので」という言葉を添えて、本編を締め括ったのは、「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」。起伏に富んだドラマチックな展開を辿り、安らぎに満ちたエンディングに到達した瞬間、大きな拍手と歓声がステージを包んだ。
高中正義
アンコール1曲目「Jumping Take Off」の演奏をバンドメンバーたちがスタートさせると、サーフボード型ギターを弾きながら高中がステージ袖から登場。ファンにはお馴染みのギターだが、何度観てもインパクトがものすごい。『Surf & Breeze』というタイトルの今回の公演にまさしくぴったりでもあった。そして、ラストを飾ったのは「BLUE LAGOON」。綺麗なブルーのギターを奏でながらステージの両端まで移動し、情熱的なプレイを隅々にまで届けていく。会場内が穏やかなエネルギーで満たされていたのが思い出される。演奏が終了してから横1列で並んだ高中とバンドメンバーたちは、肩を組み合って深くお辞儀。人々を幸福にできる彼らのサウンドは、これからも国内外で賞賛を浴びるに違いない。
取材・文=田中大
写真=(C)MUSIC AWARDS JAPAN