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青山メインランドファンタジースペシャル ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』が2026年7月27日(月)〜8月7日(金)東京・国際フォーラムホールC(その後、大阪、愛知、山梨公演予定)で上演される。

1981年に榊原郁恵(※榊はキヘンに神)の初代ピーター・パンが新宿コマ劇場に舞い降りて以来、日本の子どもたち、大人たちに愛され続けてきた本作。今回、ピーター・パン役は2023年より4度目の出演で今年が“最後の年”となる山﨑玲奈が務め、フック船長役は内海啓貴が初挑戦する。

どんな思いで、本作に挑むのか。自身初めての“悪役”を演じる、内海に話を聞いた。

ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』

ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』

ーーまず、出演にあたっての意気込みからお聞きしたいです。

実は僕、『ピーター・パン』を去年初めて見たんです。「いつかこういうヒールな役をやってみたいな」と思って見ていたので、まさかその1年後に自分がフック船長になるとは思っていませんでした。僕にとって初めてトライすることもたくさんありますが、一方で、応援してくれているお客様にはいつもたくさんのサプライズをちりばめたいと思っているので、すごく楽しみです。

ーー観劇されたときはまだフック船長をやるとは知らなかったんですね?

はい、何もお話はなかったですし、フック船長もオーディションですからね。ただ、大人でも楽しめる夢がたくさん詰まった舞台だと方々から聞いていて。だから、いつか『ピーター・パン』を見てみたいと思っていて、知り合いも多く出演していたタイミングだったので、見たんです。

ーーオーディションだったんですね!

はい。(演出の長谷川)寧さんと1対1でいろいろ見ていただきました。特に印象に残っているのは、曲が5曲ぐらい流れて、「自由に踊ってみてください」という課題。1曲目が「めざせポケモンマスター」だったんです(笑)。ええ〜!? そんなことある〜!? と思いましたよ(笑)。

後日、寧さんにその課題の意図を聞いたら、「最後まで諦めないかどうかを見ている」と言っていました。なかなか大変な課題でしょう?(笑)。でも、僕は自由ダンスでポケモンを捕まえまくりましたよ! フック船長ではやることはないでしょうけど(笑)。

内海啓貴

内海啓貴

ーーさすがです(笑)。もともと『ピーター・パン』がお好きとコメントもされていますが、好きになったきっかけはありますか?

もともとディズニーランドに学生時代によく行っていたんです。「ピーター・パン」のアトラクションがディズニーランドにあるし、最近ディズニーシーにもできたじゃないですか。あのアトラクションがすごく可愛くて、アットホームな感じがして、大好きだったんです。フック船長も“悪役”なんだけど、どこかチャーミングさもあって、なんというか“愛せる悪役”な気がして、好きでしたね。

だからこそ、子どもの頃から好きな作品を、こうしてミュージカルとして届けることができてすごく嬉しいです。感無量です。

ーーアットホームな雰囲気やキャラクターに惹かれるんですね。

はい。キャラクターも魅力的ですけど、家族の愛情みたいな部分が根底にしっかりあるのもいいですよね。東京で一人暮らしをして、日々ガムシャラに生きているから、子どもの頃に“当たり前”にあった親との時間とかを思い出したりして、ほっこりするんです。僕自身、作品を見終わった後に「おじいちゃんに電話してみようかな」と思い立ったりしたので、僕も恩返しできるように舞台に立てたらいいなと思います。

ーー長谷川寧さんの演出版の感想は?

パルクールが演出にあって、隅から隅まで、端から端まで、もうすごく動き回っていたんですね。もちろん楽曲も好きなんですけど、見てるだけで楽しめました。なんというのかな、演劇的な演出も多くて、例えば、フック船長って、なぜ手がフックになったかというと、ワニに食べられたからなんですけど、そのワニを影で演出していたんですね。実際にワニが着ぐるみで……とかじゃないんです。お客さんを信じて、頭の中で想像させる。それって、すごく演劇的だなと思いましたし、新しい感覚でした。そういう演出がすごく楽しかったですね。

ーーお子さんもたくさん見るミュージカルだと思うんですけど、大人も楽しかった。

はい。多分そういう演劇的な演出があるからこそ、大人も楽しいんだと思います。

今、稽古をしているんですけど、寧さんは1対1で繰り広げられる会話そのものはもちろんなんですけど、それよりも会話が起こっている空間をすごく大事にされていると思うんです。

例えば、こういうミュージカルの仕事って、製作発表などで歌を歌う機会があるじゃないですか。僕も先日NHKの『はやウタ』でフックの歌を歌わせていただいたんですね。そのときにも、フックの衣裳でもメイクでもないんですけど、フック船長をちゃんと想像してもらわなければいけないから、といろいろディレクションを受けました。僕はMr.Chinldrenが好きで、「みんな、ありがとう!」(※目を閉じて、ボーカルの桜井和寿さんの声真似をしつつ)みたいについついやりたくなっちゃうんですけど(笑)、そうではなくて、目を開いて、体も開いて。寧さんと一緒に、どうしたらフック船長を想像していただけるのかを考えましたね。

まだまだ全部の演出意図を分かっているわけではないのですが、寧さんの演出の意図を一つひとつ紐解きながら、「大人も楽しめる」という部分を僕も作っていきたいですね。

内海啓貴

内海啓貴

ーーでは、役作りはどういうところから?

この間、パルクールを習いに行ったんですよ。そうしたら、4日ぐらい筋肉痛でした(笑)。普段のミュージカルとは使う部分が違うんでしょうね。

例えば、サル歩行をやりましたけど、僕は「これ、フック船長として使うかな?」と疑っていましたけど(笑)、でもそういう動きって、怪我をしないために必要な動きだったりするんですよね。実際にパルクールをやってみるまで、動画でよく見るように、パルクールはすごい人がビルとビルの間を跳んで危ないスポーツだと勝手に思っていたんですけど(笑)、本当はそうではなくて、すごく紳士的で、体の使い方を学ぶのにはとてもいい。

まずはフィジカル的なところから役作りを進めていて、中身については正直これからな部分も大きいんですが、寧さんと話す中で、前回のカズさん(※前回公演でフック船長を演じていた石井一孝さんの愛称)とは年齢もビジュアルも声も性質も全く違うので、僕に合うフック像を探っていきたいなと思っています。役者の良いところを抽出してくれる演出家だと思いますし、僕らしいフックを作っていきたいですね。

ーービジュアルを拝見しても、格好いい系ですよね!

そう。ナルシズムというのかな、「悪党である自分が好き」みたいな部分を強めたらいいんじゃないかと今話しているんです。​目元にラメがついているでしょう? ワークショップを重ねる中で、「悪党している自分に酔っているフック船長」がビジュアルで出せたらいいと感じて、こんなビジュアルになりました。

その方向性は僕としてもやりやすい。確かに悪党だけど、結果的に悪党になってしまっただけであって、絶対にフック船長の核となる正義はあるわけですよ。ピーター・パンから見たら悪党かもしれないけれども、フック船長から見たら自分が正義。そういった部分をこれから作っていけたらいいなと思います。

ヒールな役回りなんですけど、やっていることは——僕は今まで好青年の役が多かったので(笑)、それらと根底はあんまり変わらないのかもしれません。

ーーちなみに、内海さんといえば、SNSの「○○よし」のハッシュタグがお馴染みですが、今回は何になるんでしょうか。

聞いてくださってありがとうございます(笑)。「#フックよし」で行こうと思います。

内海啓貴

内海啓貴

ーーピーター・パン役の山﨑玲奈さんの印象を教えてください。先日は一緒にインスタライブもされていましたね?

はい。ビジュアル撮影やワークショップのときから、本当にピーター・パンをやるために生まれてきたのではないかと思うぐらい、彼女の天真爛漫さがピーター・パンそのものだなと思います。最初は舞台上で拝見して、少しずつプライベートなことも知るようになっていますが、ギャップというか、裏表がないんですよね。寧さんが役者一人ひとりの魅力と役をリンクさせて作っているからかもしれないんですけど。絆はまだまだ深まっていないので、これからもっと仲良くなっていきたいです。

ーーまずは今回の作品だとは思いますが、今後、俳優として目指されていることを教えてください。

今までいろいろな役をいただいてきましたが、なんとなく“バランサー”が多かった気がするんですよ。例えば、ベンヴォーリオ(『ロミオ&ジュリエット』)を演じたときは、作品の中でどうバランスを取るべきか、物語を俯瞰してみることが多かった。今後は、なんていうのかな、バランスを取る“バランサー”よりも、そのバランスを自ら崩していくような役回りもやってみたい。物語の核となるような、インパクトのある役どころだったり、もちろん作品の主役だったりに挑戦していきたいと思っています。

……そういう意味では、フック船長は主人公のピーター・パンに影響を与える役割が大きいですよね。物語の真ん中を担う、インパクトのある存在だと思うので、今回のフック船長を機に、自分の役幅を広げていきたいと考えています。あ、もちろんミュージカルだけではなくて、ストレートプレイ作品や映像作品でのお芝居もどんどん挑戦して、お芝居の勉強をしていきたいです。

ーー俳優としての野心といいますか、内海さんの原動力は何ですか。

うーん、何なんですかね? でも、俳優である以上、この野心って消えたらダメだと思っているんです。役者が舞台に立つときに、その野心というか思いの強さみたいなものは、絶対に宿るから。だからこの野心は、何歳になっても持ち続けたいです。

余談ですが、先日、先輩の鹿賀丈史さんと食事に行かせてもらったんです。いやはや、大先輩ですけど、男らしさも優しさもあって、やっぱり格好良くて、刺激を受けました。そういうプライベートな部分もきっと舞台には滲み出てくる。舞台に出たら、もう全部、頭の上から指の先、足の先まで映像を撮られているようなものですから。だから仕事はもちろんですけど、プライベートな部分も大事にしていきたいと思っています。

ただ、今振り返れば、20代の頃の自分はすごく自分勝手で自由奔放でした。すべて自分中心に考えていたし、言葉にするのも恥ずかしいですけど、作品よりも自分を見てほしいと思っていたし……だからこそ突っ走る役どころができていたとは思いつつ、やっぱり若かった。30代になって、中間管理職的なポジションになってから、少し落ち着いたんでしょうね。お客さんがいないとこのエンタメは成り立たないからこそ、しっかりお客さんに作品を届けたいと考えるようになったんですよね。そういう意味だと、ありきたりかもしれませんが、原動力はお客さんと、一緒に作品を作る仲間との時間が楽しいからです。

内海啓貴

内海啓貴

ーーこの『ピーター・パン』で初めてミュージカルをご覧になる方も多いです。内海さんが考えるミュージカルの魅力やおすすめの楽しみ方を教えてください。

歌もダンスも芝居も全部詰まっているのが、ミュージカルの魅力だと思います。日常では感じ取れないものが劇場にはたくさん詰まっているんです。ほら、ジェットコースターもそうじゃないですか。何故あんなに怖いのに、人はジェットコースターに並ぶのか。それは日常では体感できないものからこそ、怖いけど乗っちゃうわけでしょう。僕はミュージカルの魅力は、それとあまり変わらないと思っています。

僕、今回初めて、親戚の子どもを招待しようと思っています。「年末に会うときにお年玉くれるおじさん」ではなくてね(笑)。いい意味で、子どもたちの心に傷跡を残したい。それが大人になるまでにかさぶたになって、ふとかさぶたが取れたときに、「ああ、こんなミュージカル見たなぁ」とか「今は全然思わないけど、あのとき“怖い”と思っていたなぁ」とか「フック船長、チャーミングだったなぁ」とか、どこか懐かしさを感じたり何かを持って帰ったりしてくれたら、きっと大人になったときにまた見たいと思ってくれると思うんです。

劇場にはほぼ等身大パネルもありますので、一緒に写真を撮ってくださいね。

ーー最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

とにかく皆さんが子ども心を思い出せるように、そして、今までにない内海啓貴を見せたいと思いますし、見せられる役だと思います。それから、フック船長以外にダーリング氏として、子どもたちのお父さんの役もやります。僕にとって初めてのお父さんの役。遂にこの年齢になったかとは思いつつ(笑)、今まで生きてきた過程をまた思い起こしながら、丁寧に役を作っていけたらと思います。劇場に見に来てくだされば嬉しいです!

内海啓貴

内海啓貴

取材・文=五月女菜穂     撮影=iwa