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MANKAI STAGE『A3!』ACT3! 2025 前期B公演：第10幕『夢の跡』が、2025年3月27日（木）KAAT神奈川芸術劇場で開幕した。前期A・B公演＆後期C・D公演の４連作で構成される本作、その２作目はいよいよMANKAIカンパニー初代メンバーが本格登場。過去と今と未来を繋ぐ物語がさらに大きく動いていく。

B公演の主軸は初代MANKAIカンパニーメンバーと新生MANKAIカンパニーメンバーとの交流。劇団旗揚げのメンツがどんな思いを抱いてこの劇団を立ち上げたのか、どんな気持ちで今の劇団を見つめているのか。これまで明かされていなかったMANKAIカンパニーの歴史が当事者の口から語られていく。その内容に驚き、感心し、リスペクトとシンパシーを感じる現役陣の思いは、客席にいる私たちも同様だ。「円熟」を迎えた大人世代とまだまだ成長中の若者世代、それぞれが放つパワーと輝き、その違いがまたそれぞれに多彩で素敵。花畑で咲き誇る花々をいつまでも眺めていたくなるような豊かに満ち足りた気持ちで、ただただ舞台上の出来事に釘付けになってしまう。

A公演で大きなきっかけを投げかけた神木坂レニ（河合龍之介）に続き、今回はこれまでずっとMANKAIカンパニーを見守り導いてきてくれた鹿島雄三も中枢へ。演じる鯨井康介は今回も「一番声がデカいやつが一番芝居が上手い」を貫き、終始舞台上にいる人間全てを鼓舞しながら、MANKAIカンパニーに関わる人々が今より一歩先に歩み出るよう気持ちで背中を押していく頼れる先輩だ。

初代春組リーダー・雛森霞を演じるのは永山たかし。演劇雑誌の編集長だがフェミニンで乙女な心を持つ故にちょっと拗らせた大人を、ふんわり優しく表現。初代夏組リーダー・日向紘は映像で活躍している現役俳優。演じる鈴木裕樹は役者としての力強さと不器用なオフの顔を巧みに使い分けていく。初代秋組リーダー・栗生善はショーレストランのオーナー。演じる南圭介はちょいワル親父風の洗練さと切れ味で、ピリッとした空気を添えてくれる存在。初代冬組リーダー・乙宮柊を演じるのは新木宏典。大衆演劇出身、気風の良さと漢気が滲む兄貴としての振る舞いが気持ちいい。

新たなエーステの展開と可能性を感じ続ける中、皇天馬（陳内将）のスランプを励ますべく夏組みんなで考えた合宿、一面の向日葵に囲まれた青春の１ページは「これぞエーステ！」と感じた光景。夏組はこうでなくちゃ！

そして再びのタイマンACTである。しかも今回は初代MANKAIカンパニーvs新生MANKAIカンパニーという奇跡のカード！　初代は時を超えて手元へやってきた大切な脚本『夢の跡』を、新生は春夏混合メンバーで『新説クロウ伝』を上演。今の自分たちが持てる全てを注ぎ込んだ舞台、作風も演出も全く異なる２本のガチのぶつかり合いはひたすらに熱かった。

斑鳩三角（本田礼生）の家族の話、皆木綴（前川優希）の座付作家兼役者としての“成長痛”などなど、今回のタイマンACTをめぐる周囲のドラマ、見どころはほかにもたくさんある。とはいえ、A公演同様やはり今回も一番は「まずは観て欲しい」というシンプルな一言に尽きる。特にエーステを観続けてきた人はさらなる意外なストーリー展開に胸が高鳴るはずだし、メインで起きている以外の舞台上のキャスト同士の細かなやり取りを楽しんだり、今まで触れていなかった“行間”へのささやかな回答を発見する瞬間もあるはず。また、これもエーステの大きな特徴だが、舞台上の出来事と演じている俳優たちの状況＝物語とリアルとの数々のリンクやそこから生まれるメタ的感動も多く、受け取れるものが本当に膨大なのだ。

ちょっとしたクエスト要素も楽しみながらの４部作。余韻と共にもう一度A・B公演のあれこれをじっくり反芻し、後期２作との出会いに備えておこう。

取材・文＝横澤由香