楽しいニュースをまとめてみました。
米ロサンゼルスのダウンタウンにあるメトロポリタン拘置所の前で抗議する人と警察=2025年6月5日米ロサンゼルスのダウンタウンにあるメトロポリタン拘置所の前で抗議する人と警察=2025年6月5日

【あわせて読みたい】移民を支持するのは彼らが「勤勉」だから?その「褒め言葉」に隠れた弊害(アメリカ)

「もし唾を吐いたら、我々は反撃する。これまで彼らが経験したことがないほど強く反撃することを約束する。無礼など絶対に許されない!」

ードナルド・トランプ

アメリカのトランプ大統領は「外国の侵略」からロサンゼルスを守ると言っているが、私たちの目に映るのは、トランプ氏主導の「侵略」だけだ。

ロサンゼルス統一学区全生徒のおよそ4分の1が、滞在許可証を持たない移民だ。私が教えている高校の生徒はほぼ全員が移民で、そのほとんどが滞在許可証を持たない移民、もしくはその子どもたちだ。

私は同学区のある高校で、政治、経済、そして歴史を教えている。

6月上旬、トランプ氏の移民取り締まり強化による恐怖の最中、私たちの高校で卒業式が行われた。

卒業式の外では、学校警察が移民税関捜査局(ICE)の捜査から生徒を守るためパトロールをしていた。さまざまな措置が噂される中、ロサンゼルス統一学区は一部の学校の卒業式をZoomで配信(動画生配信)する決定を下した。

多くの移民の親にとって、卒業式の日は何十年にもわたる努力と犠牲の集大成である。移民局の捜査の脅威をものともせず学校まで足を運んだ親も多かったが、賢明に自宅から配信を見守った親もいた。

彼らはこんな扱いを受けるべきではない。

それぞれのストーリー

トランプ政権のクリスティ・ノーム国土安全保障長官はロサンゼルスを「犯罪者の街」と呼び、多くのアメリカ人はトランプ氏を応援し、移民を中傷している。

私たちがロサンゼルス統一学区で目にするのは、子どもたちのために懸命に働きながら、母国の家族に送金する英雄的な親たちだ。私たち教師がここで目にするのは、教えがいのある生徒たちと、教師の努力に感謝してくれる親たちだ。

卒業式で生徒たちを見ていると、たくさんのことを乗り越えてきた子どもたちがたくさんいる。私が教えるアメリカ政治の上級クラスを受けている生徒の中には、12歳の頃から週末は家族の仕事を手伝い、UCLAに入学し奨学金を得た少年もいた。

今年ホームレスになった生徒もいる。学習上の問題を抱えた別の生徒は、上級クラスで友人たちに嘲笑されながらも、とにかく夢中で勉強に取り組み、からかっていた他の生徒を追い抜き「A」をとった。

多くの生徒が、アメリカに渡るまでの悲惨で恐ろしいストーリーを持っているが、それを引き出すのは容易なことではない。

エルサルバドルの首都サンサルバドルの集合住宅で育った生徒がいる。そこでは、女の子がある年齢に達すると、その地域を支配するギャングメンバーの「ガールフレンド」になることが強要されていた。その生徒が14歳の時、ギャングが「迎え」に来ると、彼女は覚悟を決め相手を撃った。

彼女はその後、国を脱出し、グアテマラとメキシコを経て、父親を探すためロサンゼルスにやってきた。

保護者面談で彼女がその話をしてくれた時、父親の目には涙が溢れていた。自身が築き上げた小さな会社を娘に継いで欲しいと言う父親と、アーティストになりたいと主張する娘の愛に溢れるやりとりを見て感動した。

撃ったギャングメンバーは死んだのか、生き延びたのか、彼女は今も知らない。

「家族のため」に選ぶ進路

卒業式では、校長が軍隊に入隊する生徒たちに起立するよう呼びかけた。この生徒たちは、米軍にとって予想外の宝となるだろう。私は高校3年生を教えているが、ほとんどのクラスで3〜4人が、卒業後すぐ、もしくは数年以内に軍(多くは海兵隊)に入隊する。

彼らは聡明かつ勤勉で、もし違う環境に生まれていたら、大学に進学していただろう。しかし現実には、経済的徴兵制、つまり学費免除や医療保険加入などの経済的支援を受けるため入隊せざるを得ないと感じることが多い。

また、市民権取得や家族の入国審査に役立つといった理由で入隊する人もいる。

数年前、ある優秀な生徒が大学に行かず海兵隊に入隊すると言った。私は少し驚き、理由を尋ねると、「両親の書類審査の役に立つから」と答えた。

移民は建設や農業、接客業など、多くの産業を支えている。介護業界でも欠かせない存在だ。私の両親をこれまで介護してくれた数十人は、すべて移民だった。私たちが歳をとり、病気になり、最も弱っている時に世話をしてくれる人々を見下すのは、とても不愉快な気持ちになる。

彼らはアメリカの経済と社会に織り込まれている。隣人、同僚、友人であり、コミュニティになくてはならない存在だ。普通のロサンゼルス市民は、移民とさまざまな場面で絶えず交流し、その際に彼らの在留資格の有無など気にすることはない。

移民はまた、税金を納めることなく公的給付金をもらっているとして悪者扱いされている。保守派コメンテーターのマット・ウォルシュ氏は「合法・違法問わず、すべての開発途上国からの移民を禁止すべき」と呼びかけ、「我々はもう世界の人々を無料で養うことはできない」と述べた。

筆者のグレン・サックス氏筆者のグレン・サックス氏

ロサンゼルスでアメリカの政治について教える者として、低所得者向けの医療費補助や食料品補助制度などにかかる費用を、納税者たちが移民のせいにしているという現象について説明しないわけにはいかない。

自分たちのために多くの犠牲を払ってきてくれた両親を、多くのアメリカ人に「横取りしている」と思われていると理解した生徒たちは傷ついている。

しかも、それは事実ではない。

カリフォルニア州民はアメリカで最も高い州売上税を支払っている。特にロサンゼルスでは、これに地方税を合わせ、合計で9.75%も支払っている。これは逆進税で、ロサンゼルス統一学校区の生徒とその親は購入品全てに対し、億万長者と同じ税率を支払わなければならないということだ。

また、移民のほとんどは賃貸住宅に住んでおり、家賃を通じて非公式的に固定資産税を払っている。カリフォルニア州の平均固定資産税納税費は全米7位だ。

州政府は、移民が州税と地方税で500億ドル以上、連邦税で800億ドル以上を支払っていると推測する。これに彼らの莫大な労働力の価値を加算すると、アメリカは随分と得していることになる。

連行された移民は、どこへ行くのか

現在の抗議活動の原動力のひとつは、もし誰かが移民局に連行されると、家族はその後の運命を知ることができないという不安だ。どこに送られるのか?適切な手続きが行われるのか?それともエルサルバドルの巨大刑務所に収監され、たとえ帰還命令が下されてもトランプ氏は戻せないふりをするのだろうか?

デモの多くがロサンゼルスのダウンタウンにあるメトロポリタン拘置所に集中しているのはそれが理由だろう。

トランプ大統領は移民局がなぜロサンゼルスにいるのかさえうまく説明できないのに、この一連の騒動は何のためなのか?

トランプ氏の国境管理責任者、「国境の皇帝」とも呼ばれるトム・ホーマン氏は、今回の強制捜査は滞在許可証を持たない就労者の雇用を禁止する法律を執行するためだと言い、「この国の歴史上、見たこともないような労働現場での取り締まり」と脅している。

一方、国土安全保障省のトリシア・マクラフリン広報担当次官は、捜査の目的は「殺人者、小児性愛者、麻薬密売人」などの「滞在許可証を持たない移民の犯罪者の逮捕」だと述べている。

そして抗議が激化した今、トランプ政権はそれを、ロサンゼルスに対する措置を拡大するための正当な理由として利用している。

このような状況の中、卒業する生徒たちは、自分の目標に集中しようと奮闘している。約4年前、ほとんど英語も話せない状態でエルサルバドルからアメリカにやってきたある生徒は、私の上級クラスでAを取るという快挙を成し遂げた。

彼は時々、学校が始まる前に質問しにきたり、受け取った移民関連の書類を理解するために助けを求めにきたりした。多くの場合、どの書類も彼を励ますような内容ではなかった。

彼はカリフォルニア大学の生物医学工学科に合格した。いつか医薬品を開発し、今移民に反対している人々の誰かを救うことになるかもしれない。

卒業式を終えお互い別れの言葉を交わしたとき、これまで何度も彼に伝えてきたこと以外の言葉が見つからなかった。「ただ黙々と集中し、前進し続けなさい」と。

「分かりました」と彼は答えた。

▼▼▼

筆者のグレン・サックス氏はロサンゼルス統一学区で政治、経済、そして歴史を教えており、多くの著名雑誌にコラムを執筆している。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

…クリックして全文を読む