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「この暑さ、異常じゃない?」――気候危機の“いま”を科学で読み解く

今年の夏は記録的な猛暑となり、8月初旬には日本各地で40度を上回る危険な暑さが続きました。もはや気候危機は“未来の話”ではなく、“いま”起きている現実です。
異常気象が続くなか、熱中症のリスクだけでなく暮らしや社会のあり方そのものが問われています。

こうした中で、地球温暖化の影響を“見える化”し、科学的根拠をもって伝える試みが始まっています。 「今日の暑さはたまたまなのか、それとも温暖化の影響なのか?」――そんな疑問に答えるためのデータが、日々アップデートされています。

今回、ハフポスト日本版 Client Partnerships は編集長・泉谷由梨子に、気候危機に関するこのニュースについて質疑応答形式で話を聞きました。

Q1:「今日の暑さは温暖化のせい?」って、どうやってわかるんですか?

泉谷:アメリカの非営利・非政府の研究機関「クライメートセントラル」が提供している「クライメートシフトインデックス」という指標があります。

これは「今日のこの暑さが、地球温暖化によってどれくらい起こりやすくなったか」を示すもので、0から5、あるいはマイナス5までの数字で表示されます。地球全体がカバーされています。

Climate CentralによるClimate Shift Index。日本列島が真っ赤に表示されている様子が見受けられる。「+5」の濃い赤が最高レベル。 Climate CentralによるClimate Shift Index。日本列島が真っ赤に表示されている様子が見受けられる。「+5」の濃い赤が最高レベル。 

例えば8月21日の日本列島は、本州のうち、東海3県や近畿地方の大半部分、関東東部で最高ランクの「5」、中国地方で「1-3」の水準でした。5というのはつまり、「この暑さは、地球温暖化がなければ5分の1以下の確率だった」という意味なんです。

Q2:「クライメートシフトインデックス」の科学的な裏付けは?

泉谷:もちろん科学的な根拠があります。この指標は「イベント・アトリビューション」と呼ばれる手法を使っています。

これは「温暖化がなかった地球」と「現実の地球」で、気象のシミュレーションを行うことによって比較し、両者でどのぐらいの確率でその現象が起きるかを比べます。

現実の地球で、39度以上になる確率が30%、過去の地球では5%とシミュレーションで出れば、この猛暑は「6倍起きやすくなった」という分析結果になります。

実は日本でも今年5月に「極端気象アトリビューションセンター(WAC)」という専門機関が発足していて、日本での現象について細かく分析しています。

日本は海洋国家のため、温暖化だけではなく、エルニーニョ現象などの影響も無視できません。日本に特化して分析できる待望の機関となっています。

たとえば今年6月の記録的な暑さについて、「地球温暖化がなければ起こり得なかった」という分析結果を発表しました。今後、高温だけではなく、災害につながる集中的な豪雨などについても分析が発表される見通しです。

こうしたデータがあることで、私たちは「今日の猛暑はたまたまじゃない」ということを科学的に理解できるんです。

Q3:じゃあ、私たちはどう行動したらいいんでしょうか?

泉谷:地球温暖化の主な原因は、すでにわかっている通り、私たち人間の活動による温室効果ガスの大量排出です。

ですから、人間の行動で止められるというのが科学の立場です。

気候科学者の江守正多(えもりせいた)教授は、「もう止められないと思っている人が多い。でも気候変動は人間が起こしていることなので、人間が止められます」と話しています。

個人としてできるのは、省エネや、ライフスタイルの見直しなど…と、よく言われますが、何よりも政府の政策や企業の取り組みに声を上げ、選挙などで意思を表明することが必要です。これは、既存のシステムによる問題を根本から解決するという「システムチェンジ」という大切な概念です。

例えば、第二期トランプ政権となっているアメリカです。これまで多くの科学的根拠で裏付けられてきた、地球温暖化そのものを否定する動きが活発になっています。

アメリカ環境保護局は7月29日、温室効果ガスが人間の健康と福祉に対して危険をもたらすと公式に認定した判断、いわゆる「危険性認定」を取り消す提案を発表しています。

この危険性認定は、温暖化をもたらす温室効果ガス規制に関する全ての法的根拠になっていますので、今後の世界中の温暖化対策の取り組みに壊滅的な打撃を与える可能性が浮上している状況です。

こうしたことは、選挙の結果とも言えます。今日の暑さが“偶然”ではなく、“結果”だと知ることが、次の行動への第一歩になります。大阪のABCテレビでは、お天気コーナーで「温暖化指数」の情報を伝える取り組みも始まっていますが、まだ一部です。ネット上で「クライメートシフトインデックス」は誰でも見ることができますので、ぜひ活用してみてください。

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編集長の視点

気候変動対策に対して、米国ではバックラッシュの動きも起こっていますが、気候変動は自然災害を頻発させます。政治状況でスピードは左右されますが、必ず、人間社会はもっと抜本的な対処せざるを得なくなる時を迎えます。そうではないと多くの命が失われるからです。

この記事で重要な点は「システムチェンジ」思考が近いうちに新しい時代のスタンダードになるだろうということです。

省エネやサステナビリティに配慮した商品は、重要な一歩ではありますが、消費者側だけにライフスタイルを変更させ、購買に繋げるような方式のマーケティングワードを使うことは「炎上」を招くことになるかもしれません。

この連載では、日々のニュースの背後にある「構造」や「原因」を読み解き、未来へのヒントを探っていきます。気候危機という複雑で大きな問題も、「今日の暑さ」とつながっている。そう気づいた瞬間から、私たちのアクションは始まるのです。

次回も、世界と日本をつなぐ“いま”のニュースを、わかりやすく、そして本質的に読み解いていきます。読んでいただき、ありがとうございました。

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