「死にたい」「いじめ」「自殺」ーー。
子どもたちが学校で1人1台配布されている端末で調べた、「深刻な心の悩み」に関連する検索キーワードの中で、最も多かった3つの言葉だ。
子どもの自殺を防止するブラウザ拡張機能「SOSフィルター」を提供するNPO法人「OVA」が今夏、同機能をインストールしている端末のデータを集計し、発表した。
2024年に自殺で亡くなった児童生徒は529人。統計を取り始めてから過去最多となっている。
子どもたちが検索した悩みに関するキーワード「SOSフィルター」は、学校で支給されるタブレット端末にインストールすると、子どもが自殺関連用語などを検索した時、相談先やセルフケアの情報をまとめたポップアップが表示されるというブラウザ拡張機能だ。
10年にわたり自殺防止活動に取り組んできたOVAが開発し、2024年7月から提供を開始。児童生徒に配布される1人1台端末に、約15万インストールされている。
自殺関連用語などを検索すると画面に表示される、SOSフィルターのポップアップ教育委員会などが管轄の学校の全児童生徒の端末に無償でインストールできる。個人が特定できる情報は収集せず、誰が検索したかなどの通知が、学校や管理者に届くことはない。
1人1台端末は近年、教育への利用だけでなく、子どもたちの心の健康状態の観察や、自殺リスクの把握に活用することが政府の政策でも求められている。
「助けて」検索ワードから見える、子どもたちのSOS
OVAは7月、そのうち約7万台の利用データを集計し、2025年1〜3月のデータを公開した。
発表された内容からは、子どもたちが抱える深刻な悩みが浮き彫りになっている。
検索キーワードは、「自殺」「学校での人間関係（いじめ等）」「家庭での人間関係（虐待等）」「性暴力」「自傷」「精神疾患」と計6つのカテゴリーで、約5000個を設定。
カテゴリー別の検索ユーザー数を見ると、「精神疾患」が40.1％（1543）、「自殺」が22.0％（846）、「学校での人間関係」が19.0％（731）、「性被害」が7.2％（277）、「自傷行為」が6.3％（244）、「家庭での人間関係」が5.3％（204）だった。
悩みを検索してSOSフィルターが表示され、外部リンクをクリックした児童生徒のうち、20.3％が「しんどい気持ちを抱えた人向けのWEB空間」、14.7％が「チャット相談窓口」、11.7％が「気持ちを吐き出せる掲示板」を利用。
悩みを抱える子どもたちに対し、SOSフィルターが相談先や支援情報に繋げられたことが明らかになった。
「セルフケアの方法を紹介した動画」や「精神疾患の情報まとめサイト」なども多くクリックされていた。
児童生徒が求めている情報の詳細悩みに関するキーワードで、最も多く検索されたのは「死にたい」で、「いじめ」と「自殺」が続いた。
その他、「オーバードーズ」「助けて」「リスカ」「うつ病」「自律神経失調症」といった言葉も多く検索されていた。
児童生徒が検索した悩みに関するキーワードOVAによると、検索データから明らかになった厳しい現状に対し、小児科専門医で子どものこころ専門医の山口有紗さんは、「子どもの自殺を防ぐためには、多層的な取り組みが欠かせない」とし、以下のようにコメントしている。
「『周りの大人が忙しそうだった』『たいしたことないって言われた」――だから、ひとりでなんとかするしかないと思った。死にたい気持ちや自分を傷つけていることを伝えてくれた子どもたちの声です。ひとりで端末に向かい、検索する子どもたちは、どんな想いでいたのでしょうか。その画面の向こうに、本当は何を求めていたのでしょうか。
私たちには、端末のもっと手前で声を受け止める仕組みを整えると同時に、そうした子どもたちを今度こそ『ひとり』にしないために、検索を通じて届いた心の声に、真摯に応える責任があります」
子どもの不調に気づき、自殺を防ぐためには、「家庭、学校、地域、民間、行政がそれぞれの立場から知恵と力を集め」対応していく必要があるとしている。
自殺関連用語などを検索すると画面に表示される、SOSフィルターのポップアップOVAOVAは8月、要望が多かったiPad版もリリース。さらに多くの児童生徒に必要な相談先情報などをリーチできるよう、サービスも拡充している。
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