レアル・マドリードのジュード・ベリンガム選手。アメリカでは2025年6月から7月にかけて、クラブワールドカップが開催されたが、記録的な暑さに選手たちはその状況を「不可能」と表現していた=2025年クラブW杯、米フロリダ州世界中が熱狂に沸くFIFAワールドカップ。
北米で開催される2026年大会は、もう来年に迫っている。
一方、開催に向けて心配なニュースが入ってきた。会場の多くが「すでに安全なプレー環境の気候基準を超えている」というのだ。
サッカー選手やファンからも心配の声が上がっているが、果たして、この暑さの中、ワールドカップを開催できるのか。そもそもサッカーができる環境なのか。そう思う人も多いだろう。
そしてその疑問は当然だ。
スタジアムの気候リスクを調査した報告書発表
2026年のサッカーワールドカップは、6月から7月にかけて北米(アメリカ・メキシコ・カナダ)の全16の会場で開催される。
しかし、そのうちの10会場では「すでに安全なプレー環境の気候基準を超えている」とする調査報告書が9月9日に発表された。
調査を実施したのは、気候評価団体「Jupiter Intelligence」、サッカーを通じて気候変動問題の解決を目指す非営利団体「Football for Future」と「Common Goal」の3団体。
調査は、①2026年ワールドカップの16の開催スタジアム、②2030年・2034年ワールドカップの開催候補地2カ所、③有名選手が過去にプレーしたなど18の「草の根クラブ」のサッカー場ーーを対象とし、酷暑、干ばつ、異常気象(洪水)の3つの主要なハザードを、Jupiter Intelligenceの気候モデルをもとに評価した。このほか、選手や北米ファンにもヒヤリングなどの調査をした。
報告書では、「気候変動リスクに対する大規模な適応策がとられなければ、これが北米で開催される最後のワールドカップとなるだろう」という見方も記されている。
ワールドカップのほか、子どもらが所属する草の根クラブは、さらに深刻な影響を受けているという結果も明らかになった。
報告書によると、調査対象となった18の草の根クラブのサッカー場すべてが、猛暑や豪雨など複数の気候リスクの要因評価において、「既に安全なプレーができる基準値を超えている」という。
例えば、元日本代表選手・本田圭佑さんが少年時代に所属していた摂津FC(大阪)は、「ピッチや周辺地域は、洪水、豪雨、強風、猛暑など、複数の気候リスクに大きくさらされている」と言及されている。その上で、「これらの脅威は、サッカー活動を長期にわたり中断させる、深刻かつ現実的なリスクをもたらしている」と分析し、これらの災害、特に猛暑と豪雨は、今後数十年で大幅に激化すると予測している。
また、世界的に見ると、主に南半球の新興国・途上国を示す「グローバルサウス」は特に脆弱で、経済的に豊かな北半球の国々「グローバルノース」と比べて、平均7倍の「プレー不可能な暑熱日」が予測されるという指摘もある。
UEFA欧州選手権2024のスコットランド対ジョージア戦では豪雨でピッチが水浸しになり、試合が一時中断された=2023年6月20日、スコットランド・グラスゴー選手の声
調査の結果を受け、世界のトップ選手も声を上げた。
9月4日に行われた同報告書の記者会見で、アメリカ代表でフランス・トゥールーズFC所属のマーク・マッケンジー選手は、「ワールドカップにおいて観客が求めるものは、ピッチ上の選手たちのプレーや試合、ゴールや歓喜の瞬間。しかし、それも安全でなければ、ワールドカップの意義そのものが失われてしまう」と懸念を示し、「私たちが愛するこのスポーツを楽しむことができるかどうかは、気候が大きな指標となる。だから、まずは試合そのものを脇に置き、気候に目を向けることです」と述べた。
コロンビア代表でイギリス・アーセナル所属のアレクセイ・ロハス選手は、今後暑さで安全にプレーできない草の根ピッチが増えることについて「子どもたちが好きな時に外で自由にサッカーを楽しめなくなれば、ボールに触れる機会や試合を経験する機会を失う。私たちがこの問題に対して行動を取らず、影響を最小化しなければ、今後あらゆるレベルのサッカーにとって極めて有害な結果をもたらすことは間違いない」と警鐘を鳴らし、サッカー界のトップスターたちが、ワールドカップという大きな舞台で持続可能性について声を上げることの必要性を示唆した。
サッカーファンも対応を求めている
アメリカ、カナダ、メキシコのサッカーファン3600人を対象にした意識調査では、その91%が「ワールドカップはサステナビリティの世界的な模範となるべき」と回答。86%が「クラブや統括団体は気候問題について発言すべき」と回答しており、気候対策を求める声が圧倒的多数であることがわかった。
こうした調査や懸念の声を受け、報告書はサッカーコミュニティに以下の行動を呼びかけている。
・統括団体は、2040年までのネットゼロ排出目標を掲げ、IPCCの目標に沿った、信頼できる脱炭素計画を公表すること。
・大会主催者は、適応基金やコミュニティ主導の気候変動対策を通じて、草の根サッカーを支援すること。
・プロ選手は、自身の声の影響力を活用し、気候変動対策を促し、行動を喚起すること。
・ファンは、自身のクラブで持続可能性チームを立ち上げ、下から気候変動対策を推進すること。


