サーキュラーエコノミーの実現に向けて、異業種同士の横のつながりの構築が重要なキーワードとなっている。
伊藤園とツムラは、漢方製剤の製造工程において発生する生薬残渣(生薬を抽出した後に残る残渣)を活用した「生薬リサイクル紙」の共同開発に成功したことを発表した。
伊藤園とツムラ、異業種連携のきっかけは「ウェルビーイング」
生薬残渣を紙原料に混ぜて製造した生薬リサイクル紙は、和紙に近い風合いが特徴だ。一般的な紙と比べて質感や強度、色合い、香りが異なり、またさまざまな生薬残渣を利用するため、製紙時期によって紙の風合いが変わることも特筆すべき点だ。また、紙原料に生薬残渣を混ぜることは、パルプ使用量や木材由来原料の削減にもつながる。
生薬リサイクル紙の製品をはじめとするアップサイクル品にはZanCycle(ザンサイクル)マークが表示され、今後、さまざまな取り組みに活かしていくという。2025年4月からはツムラグループの従業員の名刺にも採用されており、9月には封筒の制作も予定されている。
伊藤園は近年、日清との「ラウンド輸送」をはじめ、多岐にわたる異業種連携で注目を集めている。
今回の異業種連携の背景には、両社の「人・社会・地球環境のウェルビーイングに貢献したい」という考え方の合致があるという。両社は2022年度より共同開発を開始し、茶系飲料の製造過程で排出される茶殻の一部を、日用品や工業製品の原材料に有効利用する伊藤園の独自技術「茶殻リサイクルシステム」を応用することで「生薬リサイクル紙」の開発に至ったと説明している。
またツムラグループでは、漢方製剤を製造する過程において、年間約3万8000トンの生薬残渣を排出しており、サーキュラーエコノミー構築への重要課題となっている。
これまでも堆肥化や火力発電所のバイオマス燃料化、一部有償化にて100%リサイクルをしてきたが、漢方製剤の需要拡大により生産量の増加が見込まれるなか、今回の共同開発は新たな打ち手となりそうだ。
強みを活かして、新たな価値の創造へ
ツムラ取締役Co-COOの杉井圭さん(左)と伊藤園取締役専務執行役員の中野悦久さん(右)今回の異業種連携について、ツムラ取締役Co-COOの杉井圭さんは「伊藤園様独自の茶殻利活用技術を生薬残渣に応用させていただき、社会課題の解決に向けた大きな一歩となりました」「今後は残渣の利活用に加えて他の共通課題にも双方向での協働を広げるとともに、サーキュラーエコノミーの構築に向けた取り組みを強化してまいります」とコメント。
また、伊藤園取締役 専務執行役員の中野悦久さんは「当社の独自技術がツムラ様の課題解決に貢献できたことを大変嬉しく思います。自然由来の製品を主たる事業としている点、川上から川下までのバリューチェーンの各段階で様々な取り組みを行っている点など、ツムラ様と当社の親和性が高く、今後も両社のもつそれぞれの強みを生かして新たな価値の創造を行いたいと思います」とコメントを発表している。


