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激甚化する自然災害での活躍が期待される、巨大な特殊重機「スパイダー」。伸縮する4本脚の先にタイヤがあり、クモのように脚を伸ばして巨大な落石などの障害物を乗り越えたり、片脚を山の斜面に乗せて、土砂が崩落した狭い山道で活動したりできる。傾斜角45度の急斜面や水深約2mの半水中でも作業が可能だ。

国土交通省・国土技術政策総合研究所(国総研)は、スパイダーを災害現場で広く活用していこうと、12月1日から5日にかけて、災害NPOを対象とした初めての訓練を実施した。

巨大な落石を跨いで前進するスパイダー=石川県珠洲市巨大な落石を跨いで前進するスパイダー=石川県珠洲市

特殊重機「スパイダー」は、クモのような脚で凹凸の激しい地形でも自在に移動できるほか、長いアームの先のアタッチメントを付け替えて、土砂の撤去や運搬、倒木の切断など、さまざまな役割を1台で担える。また、大容量の燃料タンクがあり、無給油で1週間の稼働ができる。

国総研は今年5月、研究用に所有するスパイダーを、能登半島地震で被災した石川県珠洲市の復旧現場に初めて投入。その実力を確認したうえで、災害復旧を支える「技術系NPO」(※)や災害ボランティアと連携してより広く活用していこうと、12月1日〜5日にかけて、NPO向けの操作訓練を実施した。

※技術系NPO…災害現場に小型重機や資機材などを運び入れ、いち早く生活道路を通したり倒壊家屋から貴重品を取り出したりする非営利組織。全国に複数の団体やネットワークがあり、専門知識のあるスタッフやボランティアらが活動している。

スパイダーの操作訓練を受ける藤原茜さん=2025年12月3日、茨城県つくば市の日本財団災害ボランティアトレーニングセンタースパイダーの操作訓練を受ける藤原茜さん=2025年12月3日、茨城県つくば市の日本財団災害ボランティアトレーニングセンター

茨城県つくば市の日本財団災害ボランティアトレーニングセンターで、8人が約40時間のトレーニングを積んだ。

「操縦は難しいけれど、自分にできることを増やしたい」。岩手県花巻市の藤原茜さんは、災害で塞がった道を通すなどのボランティアを続けるなかで「もっと力をつけて支援を引っ張っていきたい」と考えるようになり、訓練に参加したという。

全国の被災地で、小型重機を使って土砂の掻き出しや貴重品の取り出しに奔走している萬代好伸さんは、「重機が入れないような災害現場では、まず重機のための『仮設の道』をつくらないと、実際の作業を始められない。でも自在に現場に入れるスパイダーなら、仮設を整える手間と時間、コストを省ける。1日も早い復旧につながる」と期待を寄せる。

4本の脚が独立して動くスパイダー=2025年12月3日、茨城県つくば市の日本財団災害ボランティアトレーニングセンター4本の脚が独立して動くスパイダー=2025年12月3日、茨城県つくば市の日本財団災害ボランティアトレーニングセンター

訓練のインストラクターで、日本スパイダー協会会長の五島満さんは、受講したメンバーについて「(被災した)人のためにスパイダーを使えるようになりたい、という『思い』があるから上達が早い。一緒に技術を磨いていきたい」と語った。

今回の訓練は、国が推進する事前防災対策の一環。今年5月に災害対策基本法が改正され、国と被災者支援のボランティア、NPOの連携強化がより求められている。

8日夜には青森県東方沖を震源とする最大震度6強の地震が起きるなど、各地で災害が頻発している。

国総研の担当者は「災害が起こったときすぐに駆けつけるボランティアやNPOの人たちに、まずはスパイダーで何ができるかを知ってもらい、『この場所にはスパイダーが有用だ』という視点で、現場からの情報をあげてほしい」と話した。

(取材・文/川村直子)

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