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イオンモール幕張新都心(千葉県美浜市)イオンモール幕張新都心(千葉県美浜市)

インフレが進む中、新NISAなどで投資先を選ぶ際、「株主優待」が決め手になる人も多いだろう。充実した優待で人気の高い企業の一つが、小売の「イオン」。2026年1月に発表した2025年3〜11月期の連結決算では過去最高益を更新し、株価も好調だ。

同社では、買い物客が使うアプリに株主優待の機能も統合。さらに2026年4月からは、議決権行使などもアプリ上でできるようになるなど、先進的な取り組みも進めている。同社にとって個人株主とは。ブランディング部の小林哲也部長らに話を聞いた。

イオン ブランディング部 小林哲也部長イオン ブランディング部 小林哲也部長

イオン ブランディング部 小林哲也部長

1991年野村證券入社後、事業法人・企業金融領域を経てウェルスマネジメント部門を歴任し東大阪支店長などを務める。2017年に株式会社アイデア入社、2018年より株式会社ポストウェイ代表取締役(兼任)。2020年にイオン株式会社入社。戦略部マネージャーを経て、2021年にブランディング部を創設し部長(現職)。

「暮らしの変化」への対応で過去最高益

―イオンは、直近の営業利益が過去最高益を更新しました。本業のスーパー事業も好調ですね。

広報:一言で申し上げれば、市場環境の変化に的確に対応しているからだと考えています。現在の物価高騰は家計に直接影響しており、節約思考や生活防衛意識はますます高まっています。

このような環境に対し、イオンは利益率が高いプライベートブランド(PB)である「トップバリュ」の展開を強化しています。

原材料価格が上昇する局面にあっても、定期的に商品の増量や戦略的な値下げを実施。低価格かつ高品質なPBを提供することで「顧客ニーズへの適合」と「収益性の確保」を両立させたことが最高益につながりました。

個人株主が105万人。なぜここまで増えたのか?

イオン ブランディング部 小林哲也部長イオン ブランディング部 小林哲也部長

―イオンは、個人株主数が約105万人を超え、持株比率は全体の約30%を超えています。日本の個別銘柄としては極めて稀な規模ですが、なぜこれほどまでに個人株主の割合が高いのでしょうか。

小林部長:イオンは、株式会社化して今年で100周年を迎えますが、創業当初から「参加型経営」を掲げていました。特定の経営者が支配する封建的な組織ではなく、従業員や顧客といったステークホルダーが資本に参加する「開かれた経営」へ進化させてきたのです。持株会や個人株主制度は、民主的なガバナンスを支える基盤です。

2024年4月、新聞広告においてイオンは「私たちには90万人の経営者がいます」と打ち出しましたが、現在は約105万人を超えています。「お客様=株主」であることは、最大のガバナンスであり強力な経営資産です。「この商品が良くなかった」「競合店より高い」「この地域に店舗を作ってほしい」といった声は、経営の基盤となっているのです。

お客様に支持され続けなければ永続できない小売業にとって、「お客様=株主」であることは、究極の「Win–Winの関係」と言えます。

理念の根底にあるのは「戦争と平和」

イオンの基本理念には、同社の岡田卓也名誉会長相談役が、戦後、チラシを手にして店頭に並んだ客が「戦争が本当に終わったんだな」と涙した姿を見て、小売業の存在こそが平和の象徴であると実感したというエピソードが書かれている。イオンの基本理念には、同社の岡田卓也名誉会長相談役が、戦後、チラシを手にして店頭に並んだ客が「戦争が本当に終わったんだな」と涙した姿を見て、小売業の存在こそが平和の象徴であると実感したというエピソードが書かれている。

―このような「個人株主とつながる」経営方針は、イオンの理念と関係しているのでしょうか。

小林部長:イオンの「基本理念」には「平和の追求・人間の尊重・地域への貢献」が掲げられています。創業者は四日市空襲で「岡田屋」の店舗と商品を全て焼失した経験から「(当時身分の低かった)商人が強くなるには、数を集めて団結するしかない」という信念がありました。

この「商人が団結して自立する」という思想が多くの「個人株主とつながる」現在の形態の根底にあります。

―「平和」が経営の前提条件にあるということでしょうか。

小林部長:その通りです。イオンの事業は、ガスや電気と同じ「生活インフラ」であると定義しています。

自衛隊と災害協定を結び、震災時には航空会社と提携して物資を空輸しています。2025年10月のベトナム中部における洪水災害時には、イオンの店舗が避難所として機能し、従業員たちがバケツリレーで食料を配りました。現地の人たちから「フエの奇跡」と言われ、深く感謝されています。

平和でなければ「買い物」という日常は成立しません。格差が拡大し、国民が困窮する社会になれば社会不安や戦争の火種になってしまいます。だからこそ、暮らしを支え平和を維持することが、イオンの存続につながると考えています。

イオンの個人株主は持株を売らない

イオン ブランディング部 小林哲也部長イオン ブランディング部 小林哲也部長

―他社との比較でアクティビスト(物言う株主)の経営への介入を阻止しているという分析もよくなされています。意識していますか。

小林部長:先ほどお話しした通り創業当初からの理念ですし、個人株主が多いことは、金融理論の観点から見て非常に合理的です。

海外のアクティビストからは、「株主優待は株主平等原則に反し非効率だ」という指摘が出ることがあります。しかし、我々が過去数十年のデータを示すと彼らも納得します。

優待がある銘柄は、株価上昇時にも個人が売却せず、下落時には優待利回りを求めて買いが入ります。相場が揺れても会社を支えてくれる個人株主は「吊り革株主」と呼ばれていますが、これは株価のボラティリティ(変動率)を抑制します。

イオンの株主優待は、保有株数に応じて買い物金額の3〜7%がキャッシュバックされます。 3000株以上を保有していれば還元率は最大の7%の現金が戻ってくるので、物価高の今大いに活用いただいています。

―ボラティリティが低いことで、経営にどんなメリットがあるのでしょうか。

小林部長:金融理論(CAPM)において、ボラティリティが低いことは、株主資本コストの低下を意味します。つまり、株主優待は単なる顧客サービスではなく、長期安定資金を低コストで維持することにつながります。

日本は世界一、100年以上継続している長寿企業が多い国です。イオンが長く継続してきた理由としては、地域やお客様に支持され、生活に密着した経営をしてきたからです。

イオンの個人株主は、株価が上昇しても売却しません。それは株が単なる金融商品ではなく、自分の暮らしを支えるインフラへの「議決権」としての意味を持っているからです。

金融の世界は一般的に、短期的なROEや株価の動きを重視します。しかし、生活インフラを担う小売業において最も重要なのは「永続性」です。短期的な数字だけを追って信頼を損なっては、300年の歴史は途絶えてしまうでしょう。

約105万人の個人株主は、イオンが地域社会に根を張り信頼を積み重ねてきた証です。アメリカ型経営だけが全てではありません。日本独自の地域やお客様に支持されて「永続する経営」も、不確実なグローバル社会において一つの解になりうるのではないかと考えています。

―定期的に開催されている「株主懇談会」では、個人株主とどのような対話をされているのでしょうか。

小林部長:「株主懇談会」は、毎年11月〜12月にかけて全国8箇所で開催しています。毎年高い倍率で応募をいただいており、役員たちがお客様の声を直接聞く大切な場になっています。

「トップバリュのあの商品が近隣の店舗に置かれていない」「アプリの使い勝手が良くない」といった具体的な指摘をいただいています。これらの声は、担当部署にフィードバックされ改善を行っています。

アプリの進化で経営参加がシームレスに

―イオンの株主になると「オーナーズカード」で優待が受けられます。こちらは、アプリでの利用が可能ですが今後さらにデジタル化が進むのでしょうか。

小林部長:2023年にイオンのトータルアプリ「iAEON」で「オーナーズカード」を導入しています。2026年4月には「iAEONアプリ」のバージョンアップを予定しています。

これまでは、株主総会の招集通や議決権行使書を株主に郵送していましたが、今後はペーパーレス化も検討しています。

さらに金融庁傘下の「金融経済教育推進機構」と連携し、アプリ内に金融教育のコンテンツを搭載。「議決権行使」もアプリで行えるようになる予定です。

株を持つことは、資産形成の手段であると同時に「社会参画」でもあります。自分が投資した資金が、地域社会のインフラをどう支え、平和にどう貢献しているのかを可視化することにつながります。

アプリを通じて約105万人の個人株主がより主体的に経営に参加できるプラットフォームを構築したいと考えています。

二極化社会における「生活インフラ」としての役割

イオンの都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」イオンの都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」

小林部長:エンゲル係数が高まり社会の二極化が進んでいる中で、イオンは「納得感」のある価格提供に力を入れています。

例えば、2025年11月に発売した「チョコか?」(トップバリュ)はカカオ豆の価格が高騰する中で、ひまわりの種などを用いた代替素材で「チョコレートのような味わい」を実現した商品です。

これがSNS等で話題になったのは、単なる「安売り」ではなく、技術と知恵によって「お手頃な価格で満足感を維持する」という、小売業としての誠実な対応を評価いただけたからだ考えています。

また、都心部では単身世帯や共働き、高齢世帯が増えています。こうした人たちが「近くで手軽に、必要な分だけ買いたい」というニーズに応えるため、地域ごとに商品数(SKU)を細かく調整する「まいばすけっと」も好調です。

ネットスーパー「グリーンビーンズ」では、倉庫型の物流拠点にロボットを導入し、1時間単位の配送指定を可能にしました。こちらも、利便性と時間の価値を重視するお客様へのインフラ提供です。

今後は、「食」だけでなく健康やエンタメ領域の事業も強化していきます。イオンの個人株主になることは、優待だけが目的ではありません。地域を支えるインフラの運営に参加することなのです。

食事や健康、エンタメなど暮らしを支え、平和を守ることにつながっていく。株式投資の本来の意義を体感していただけると考えています。

【画像】イオンが「株主優待でオトク」だけではない理由

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