演劇・映画の専門図書館である松竹大谷図書館では、所蔵資料を広く知ってもらうため、閲覧室にて展示ケースでの所蔵資料展示と、資料を手にとって見ることができるブックトラックでの資料紹介を開催している。
この度、歌舞伎座「猿若祭」が50年の節目を迎えることを記念し、『猿若祭二月大歌舞伎』関連資料を紹介することを発表した。
「猿若祭」は、寛永元(1624)年に江戸で初めて幕府公認の芝居小屋「猿若座(のちの中村座)」を初代猿若(中村)勘三郎が建てたことが江戸歌舞伎の発祥とされることから、その発展を祈念して、昭和51(1976)年に十七世中村勘三郎を中心に歌舞伎座で始まった。これまで十七世中村勘三郎、十八世中村勘三郎が「猿若祭」で演じてきた中村屋ゆかりの演目の台本やプログラム、関連図書、写真のほか、今月の演目がよくわかる解説書などを紹介する。
『雨乞狐』を上演した「第一回 勘九郎の会」プログラム
写真『積恋雪関扉』明治時代の子ども芝居
昭和52(1976)年4月歌舞伎座プログラム、栞
今回、「猿若祭五十年」を記念し、通常非公開である松竹大谷図書館の重要美術品「かふきのさうし」(複製)を全ページ展示する。なお、猿若や阿国がデザインされた松竹大谷図書館オリジナルグッズの人気商品、一筆箋「かふきのさうし」のほか、特別文庫本カバーも当館のみの数量限定にて販売される。
松竹大谷図書館 重要美術品「かぶきのさうし」
松竹大谷図書館オリジナルグッズ「かふきのさうし」一筆箋
「かふきのさうし」とは、江戸時代初期に流行した「かぶき踊り」の様子を描いた彩色挿絵入りの絵草子。出雲の阿国一座による男装の女性が茶屋遊びを演じる様子などが描かれており、初期歌舞伎の舞台様式を知る貴重な資料となっている。江戸時代初期、慶長末期から元和初期(1610年代半ば)頃に描かれた原本から町絵師の工房で写されたと考えられている。
また、初世中村鴈治郎の相手役を多く勤めた大阪の歌舞伎俳優、三世中村梅玉(前名は四世高砂屋中村福助)の旧蔵品であったことから、通称「梅玉本(福助本)」といわれている。庶民的で素朴でありながら生き生きとした筆遣いと、緑青や銀色などを用いた鮮やかな彩色が魅力的な挿絵には、華麗な衣裳を纏った役者や囃子方、見物に集まってきた観客などが描かれ、当時の都の賑やかな芝居見物の様子を知ることができる。
さらに、2月公演中、『猿若祭二月大歌舞伎』夜の部『一谷嫩軍記』上演にちなみ、松竹大谷図書館所蔵資料の組上燈籠『一谷嫩軍記 組討』組上完成形を展示する。組上燈籠絵『一谷嫩軍記 組討』一ノ谷での源平合戦を題材とした作品で、源氏の武将熊谷次郎直実と、平家の公達平敦盛の「組討」の場を描いている。 躍動感あふれる騎馬武者のほか、実際の歌舞伎の舞台上には登場しない、大海原に浮かぶ豪華な御座船とその周りの大船団まで描き込まれていて、スケールの大きい場面が展開している。
松竹大谷図書館所蔵 組上燈籠「組討」
「組上燈籠絵」とは江戸期から昭和期まで流行したおもちゃ絵といわれる浮世絵の一種で、絵の中のパーツを切り出して貼り付け、立体に組み立てて遊ぶ、いわば現代のアクスタのようなもの。松竹大谷図書館では、このような歌舞伎にまつわる「組上燈籠絵」を160点余り所蔵し、デジタルアーカイブで公開している。
『猿若祭二月大歌舞伎』は2026年2月1日(日)~26日(木)歌舞伎座にて上演。