ロイヤル・オペラ・ハウスで繰り広げられる、世界最高峰の英国ロイヤル・バレエの舞台を映画館で現地さながらに体感できる「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。新シーズン「2025/26」は2025年12月19日(金)から2026年7月9日(金)まで全9演目が上映予定だが、2月20日(金)からはTOHOシネマズ 日本橋ほかにて、冬の風物詩として世界中で愛されるピーター・ライト版『くるみ割り人形』が1週間限定で公開となる。公開を記念し、舞踊評論家・森菜穂美氏とともに本作の魅力に迫る解説コラムが到着した。
冬の風物詩として子どもから大人まで最も愛されているバレエ作品『くるみ割り人形』。E.T.A.ホフマンの「くるみ割り人形とねずみの王様」をもとに1892年に誕生した本作は、チャイコフスキーの切なく美しい旋律と幻想的な雪の場面、華麗な各国の踊り、そしてクリスマスを舞台にした少女のファンタジックな成長物語が人気を呼び、さまざまな振付作品が生まれてきた。
ピーター・ライト版の『くるみ割り人形』は、ロイヤル・バレエで1984年に初演されて以来、600回以上も上演され、長年にわたって愛されてきた名作。森氏は本作の魅力について「ホフマンの原作から導かれた物語性が豊かなこと」だと解説する。また、真夜中にクリスマスツリーが大きくなる場面のスペクタクル性とワクワク感、ネズミの王様との戦いの活劇とクララの勇敢な活躍、雪の精の群舞が舞い踊る美しい雪の場面、そしてお菓子の国での華やかな饗宴と名場面の多さも大きな魅力となっている。
主演キャストのロイヤル・バレエが誇る“美麗ペア”にも注目する。金平糖の精を演じるのは、2011年にローザンヌ国際バレエコンクールで1位になり、ロイヤル・バレエ入団後は数々の作品で主演を務め、高い技術と演技力で観客を魅了してきたマヤラ・マグリ。森氏は「揺るぎのないクラシック技術とすぐれた音楽性、明るく温かいオーラを放つ金平糖の精として輝いています」と賞賛を送っている。そして王子役には、ハリウッドスターのような美丈夫ぶりと、長い手脚をのびやかに使ったダイナミックな踊りが魅力の貴公子リース・クラーク。サポートのうまさにも定評があり、森氏は「リースとマヤラとの長身美麗ペアによる息の合ったパ・ド・ドゥやリフトなど、パートナーシップでも魅せて夢のような時間を与えてくれます」と見どころを熱く語っている。
また、本作のクララ役やハンス・ピーター役は、若手のスター候補ダンサーが抜擢されることが多く、のちにプリンシパルに昇格して、金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥという主役を踊る存在へと成長していくケースも少なくない。今回ハンス・ピーターを演じるのは、日本出身の中尾太亮。「少女クララの憧れを体現したような爽やかな好青年ぶりも魅力的で、これからの躍進が期待されています」と森氏は語っている。そしてクララ役には、注目の新星ダンサー、マリアンナ・ツェンベンホイ。ウクライナとアフリカ系の血を引き、ウクライナ支援のチャリティ公演でも活躍してきた彼女は、まだファースト・アーティストながら、この後に上演される『ジゼル』で主演デビューを飾る予定となっている。
『くるみ割り人形』のクライマックスは、金平糖の精のグラン・パ・ド・ドゥだ。この場面について森氏は「まるで天国にいるようなバレエの美の結晶です」と表現している。優雅な上半身の動きにくっきりとした足捌きが輝くキラキラした金平糖の精のソロ、王子の超絶技巧を詰め込んだソロ、コーダの高速回転など、見せ場が満載となっている。さらに、シネマ版ならではの“舞台裏まで楽しめる特別映像”も収録され、マヤラ・マグリのトウシューズ加工の秘密を知ることができるのも大きな魅力だ。
初めてのバレエ鑑賞にもおすすめの、誰でも楽しめる作品。世界最高のロイヤル・バレエのトップダンサーが贈る、バレエの魔法に包まれた夢見心地の2時間36分を、ぜひ映画館で体感してほしい。
※森菜穂美氏(舞踊評論家)による『くるみ割り人形』解説全文は下記↓URLにて閲覧可能です。