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もし、事件の現場に「捜査の神様」がいるのだとしたらーー。残念ながら、私は神様に見放されていた人間だったと思う。

捜査官として、特別な才能があったわけではない。平凡な人間だ。否、平凡であることすら、言い訳に過ぎないのかもしれない。

そうした自覚を抱えたまま、私は警察組織を卒業した。

しかし、捜査の神様は、私に何も与えなかったわけではなかった。

数え切れないほどの事件現場で、能力の高い捜査官や、強烈な個性を持つ捜査官と出会わせてくれた。

その背中や生き様を、私は間近で見ることができた。

また、私が捜査幹部となってからは、個々の事件だけでなく、“刑事警察”という仕組みそのものと向き合う時間を与えられた。

現場が抱える矛盾、理想と現実の乖離……。このようなことについて考える時間でもあった。

そして、警察OBとなった今、現職時代にできなかった「語る」ことができるようになった。

幸いにも、捜査官としての経験、そして捜査が抱える問題点を、語り部として言葉にできる環境と機会を得ることができたのだ。

このシリーズは、その記録である。

事件をきっかけとした悲しみや憎しみが一つでも減るように、現場で起きていたことを、できるだけ正確に、誠実に残していきたい。

それが、才能を与えられなかった私に、「捜査の神様」が残してくれた唯一の役割なのだと、今は思っている。

(執筆・副島雅彦、編集・相本啓太)

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◆副島雅彦さんプロフィール

福岡市生まれ。1985年、警視庁に入庁。刑事警察に25年携わり、うち16年は殺人や強盗などの凶悪犯罪を扱う捜査1課に在籍した。

警視としては、警察署の刑事組織犯罪対策課長や、知能犯を担当する本部捜査2課の管理官を歴任。

2016年から捜査1課管理官(殺人・庶務)。2019年から捜査1課ナンバー2の理事官として、捜査1課長を支えた。

2020年に退職。

これまでに、「ルーシー・ブラックマンさん失踪事件」や「船戸結愛ちゃん虐待死事件」など、数多くの重大事件の捜査に携わってきた。

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