日本で事業を営む外国人のための在留資格「経営・管理ビザ」の要件厳格化により、在日外国人への影響が広がり始めている。
経営・管理ビザで数十年にわたり日本で飲食店を営んできた外国人のビザが更新されなくなるなどの事態が発生している。
影響を懸念する有志は都内で5月13日に集会を開き、出入国在留管理庁の担当者に、「事業実態のある既存事業者を一律の資本金基準で排除しないこと」や「経過措置期間の延長」などを求める要請書と、オンライン署名約5万3千筆を手渡し、対応を求めた。
5万3千筆の署名が提出された。【あわせて読む】日本でインドカレー店が激減する?それだけではない深刻な影響。「経営・管理」ビザの要件厳格化、日本で育った子どもへの余波も
「30年間、日本のルールを守って頑張ってきた」。子どもへの影響も
この日の集会には、経営・管理ビザが更新されず、帰国を余儀なくされている当事者も参加した。
日本に住み30年というインド出身のクマールさんは長年、経営・管理ビザを保持し、カレー店を経営してきた。要件厳格化後にビザが更新されず、家族一同、途方に暮れているという。
長年、日本でインドカレー店を営んできたクマールさんクマールさんは「日本で生まれ育ち、日本語しか分からない2人の子どもにとってインドは海外。高校3年生の娘は進路で大事な時なのに今、突然帰れと言われてもどうしたらいいのか」とし、涙ながらにこう訴えた。
「日本で30年間、言葉の壁や環境・生活習慣の違いからとても苦労しましたが、日本語も一生懸命学び、同じ飲食店の店主や商工会、市役所の方、お客さんに支えられてここまで頑張ってきました。
もちろん日本には日本のルールがあるし、30年間、日本のルールを守って頑張ってきました。急に要件が変更になったからといって帰国を命じるのは、人間的にとても酷いと思います」
「これは人権問題。地域コミュニティにも大きな影響が出る」
日本政府は、在留資格「経営・管理」に関する省令を改正し、2025年10月に施行。
要件厳格化では、用意すべき資本金が500万円から3000万円の6倍に大幅に引き上げられ、日本語能力試験(JLPT)の5段階中、上から2番目の難易度のN2以上の認定などの要件ができた。
出入国在留管理庁は、現在、「経営・管理」の在留資格を持つ外国人に対しては、施行から3年後の2028年10月までは改定後の基準を満たしていない場合も、総合的に判断するという、いわゆる経過措置の期間を設けている。
経過措置は3年とされているが、集会に参加した行政書士によると、審査は厳格化されており、更新されないなどの影響が既に出始めている。
オンライン署名の発起人の鶴ヶ島たろうさんは「これは人権問題です。家族にも影響が出ます。地域経済や地域コミュニティにも大きな影響が出ますし、誰も得をしません」と指摘。
「経営管理ビザの審査にあたって、資本金の額ではなく事業実態を見てほしい。そして、3年間の経過措置を延長してほしい」と語った。
署名発起人の鶴ヶ島たろうさん要件の厳格化は、経営実態のないペーパーカンパニーを使った在留資格の不正取得を防ぐことを目的とした改正だったが、政府は実態調査なども行なっておらず、地道に飲食店などを営んできた人たちが打撃を受けている形だ。
新大久保などの外国人住民とも密接に関わり、取材を続けているジャーナリストの室橋裕和さんは、「経営・管理ビザの保有者だけでなく、経営者が営んでいる店で働く外国人たちにも影響が及ぶ」とし、警鐘を鳴らした。
「新大久保の街では、飲食店だけではなく、翻訳や輸出入、不動産仲介、送金、語学教室など様々な中小企業が外国人によって営まれています。店を畳み、帰国せざるを得ない人たちが出てくるでしょう。この人たちはどうなってしまうのか、心配しています。日本で生まれ育った子どもたちもいます」
「事業実態がある人を、一律の資本金基準で排除しないこと」などを要望
法務大臣や出入国在留管理庁長官に宛てられた要請書では、以下の4点を求めている。
1 事業実態のある既存事業者を、一律の資本金基準で排除しないこと
2 営業・納税・雇用実績等を重視した審査基準へ転換すること
3 経過措置期間の延長
4 改正の影響評価を実施・公開
「4 改正の影響評価を実施・公開」に関しては、政府が詳細な調査を行なっていないことを背景に、「改正が外国人経営の飲食店数・雇用・地域経済にどのような影響を及ぼすか、定量的な影響評価を実施し公表」すべきだと求めている。
(取材・文=冨田すみれ子 / ハフポスト日本版)
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