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ロイヤル・オペラ・ハウスで繰り広げられる、世界最高峰の英国ロイヤル・バレエの舞台を映画館で現地さながらに体感できる「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。新シーズン「2025/26」は2025年12月19日(金)から2026年7月9日(金)までの期間、全9演目が各1週間限定にて全国公開されている。

5月13日(金)からはTOHOシネマズ 日本橋ほかにて、ヴァージニア・ウルフの世界を表現した現代バレエの金字塔『ウルフ・ワークス』が公開される。公開を記念し、舞踊評論家・森菜穂美氏とともに本作の魅力に迫る解説コラムが到着した。


20世紀の最も偉大な小説家の一人と評価されるヴァージニア・ウルフの世界を3つの代表作を通して描いた『ウルフ・ワークス』は、ロイヤル・バレエの常任振付家であるウェイン・マクレガーが2015年にロイヤル・バレエのために振り付けた作品だ。本作について森氏は「現代バレエの世界を変えた革命的な最高傑作として熱狂的に評価された」と解説する。人間の脳の働きがどのようにダンスの動きへと伝わっていくかという科学技術的な研究を通じて、斬新な振付作品を生み出してきたマクレガーが生んだこの傑作は、ローレンス・オリヴィエ賞と英国舞踊批評家協会賞を受賞し、ロイヤル・バレエで3度にわたってリバイバルされるなど、長きにわたり人気を博している。

ヴァージニア・ウルフの代表作『ダロウェイ夫人』、『オーランドー』、『波』からテーマを用いて、3つのパートがそれぞれ全く異なる踊りを披露する。第1部『ダロウェイ夫人』をモチーフにした『I now, I then』は、物語性の高い演出が印象的なパート。ウルフの分身でもあるクラリッサ役を現代最高のバレリーナであるナタリア・オシポワが演じ、深みのある演技と共に、マクレガー特有の複雑な動きを劇的に表現している。クラリッサの少女時代を演じるのは前田紗江。同性の恋人サリーを演じるレティシア・ディアスとの情熱的なキスシーンも大きな見どころとなっている。戦争のトラウマに苦しむ兵士・セプティマスはマルセリーノ・サンベが熱演。上官でセプティマスとのデュエットを踊るエヴァンス役をマルコ・マシャーリ、そしてセプティマスの妻レツィアを高田茜が繊細に演じている。

第2部は、性転換をしながら400年生きた青年貴族の数奇な運命を描いた『オーランドー』に基づく『ビカミングス』。アクリ瑠嘉、金子扶生、クレア・カルヴァート、レティシア・ディアス、前田紗江、高田茜、中尾太亮、マルセリーノ・サンベらがSF映画の中にいるようなレーザー光線の中で、縦横無尽に時空を超えて、切れ味鋭く踊っている。森氏は「マクレガーらしいハイスピードで近未来的な動きの連なりと、スタイリッシュな照明とともに踊る金子扶生らの活躍が見ものです」と語る。そして第3部『波』に基づく『火曜日』では、ウルフ役のナタリア・オシポワが夫役のウィリアム・ブレイスウェルの腕の中で揺れるように踊り、入水自殺による最期の時を迎える。

また、ウルフが自身のエッセイ『職人の技術(クラフツマンシップ)』を朗読した唯一の現存する音声記録が、バレエの冒頭で楽曲内の語り部セクションの一つとして用いられている点も大きな特徴である。さらに、英国演劇界を代表する偉大な女優マギー・スミスやジリアン・アンダーソンがウルフの小説の一節や「世界で最も美しい遺書」として知られるウルフの遺書を朗読する音声が使用されている。森氏はこうした演出について、「このようにしてヴァージニア・ウルフの高度に洗練された世界を再現したバレエが誕生した」と言及します。文学と最先端のバレエが融合した総合芸術を、マックス・リヒターの音楽と共に堪能できる『ウルフ・ワークス』を、ぜひ映画館で体感いただきたい。

森菜穂美(舞踊評論家)『ウルフ・ワークス』解説全文は下記↓URLにて閲覧可能です。