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「とても幸せ」。台湾で2019年にアジア初の結婚の平等(法律上同性どうしの婚姻)が実現して婚姻届を受理された時、簡至潔(かんしけつ)さんと許秀雯(きょしゅうぶん)さんのカップルは、待ち望んだ瞬間をシンプルながらも力強い言葉で表現した。

あれから7年。台湾国際放送によると、「台湾彩虹平権太平台(Taiwan Equality Campaign)」が実施した世論調査で、同性婚の支持率は54.3%と7年間で12ポイント上昇した。

それだけではない。国際同性婚は9ポイント上昇して63.0%、共同養子縁組は10ポイント上昇して67.2%と、いずれも支持率が上がった。

結婚の平等が実現したことで、台湾ではどんな変化が起きているのだろうか。

東京・代々木公園で6月6、7日に開催されたLGBTQ+イベント「東京プライドフェスティバル」に「チーム台湾」のメンバーとして参加した簡さんに聞いた。

LGBTQ+の人たちの平等な婚姻の権利のための活動を行う「Taiwan Alliance to Promote Civil PartnershipRights(台灣伴侶權益推動聯盟)」の事務局長を務める簡さん。東京プライド2026に出展した「チーム台湾」のブースで話を聞いた(2026年6月6日)LGBTQ+の人たちの平等な婚姻の権利のための活動を行う「Taiwan Alliance to Promote Civil PartnershipRights(台灣伴侶權益推動聯盟)」の事務局長を務める簡さん。東京プライド2026に出展した「チーム台湾」のブースで話を聞いた(2026年6月6日)

7年でどう変化したのか

結婚の平等でアジアの先駆けとなった台湾だが、その道が順風満帆だったわけではない。

台湾の憲法裁判所である大法官は2017年に、「同性どうしの結婚を認めていない民法は違憲」と判断し、2年以内に民法を改正するか、新しい法律を作るよう指示した。

この判断で同性間での結婚が可能になることは確定したが、立ちはだかったのが、反対派によるバックラッシュだ。

結婚の平等に反対する人たちが、同性カップルの婚姻を異性カップルと同じ民法に含めるべきではないとする運動を展開。

署名を集めて住民投票を実施した結果、反対が多数を占め、同性間の結婚は、民法ではなく新たな「特別法」で法制化されることになった。

このような反対派の強力なキャンペーンがあったにも関わらず、2019年に結婚の平等が実現した後、同性カップルの婚姻を支持する割合は飛躍的に上昇している。

上記の「台湾彩虹平権太平台」だけではなく、ジェンダー平等を推進する「行政院性別平等処」の2024年の調査では、「同性カップルも結婚する権利を有するべき」と答えた人は69.1%で1年前の調査より6.5ポイント、結婚の平等が実現する2018年調査と比べると31.7ポイントも高かった。

簡さんは結婚の平等への支持率が大きく上昇している理由について、こう話す。

「理由は様々だと思いますが、同性カップルが結婚できるようになると社会が変わるのではないかと不安を抱いていた人たちが、法制化後、社会への悪影響がないと認識するようになった、というのもあると思います。また、それにより、反対派にもその主張の根拠がなくなったいう一面もあります」

賛成する市民の割合が増えていることで、政治家らが結婚の平等を促進するメッセージを発信しやすくなったという変化も起きている。

簡さんは「先日台南で講演会を開いた時には、その自治体のトップが、『政府が同性婚を支持しているので、私たちも尊重しなければいけない』と発言していました」と語った。

台湾の立法院(国会)で同性どうしの結婚が法制化されたことを受け、台北の総統府前に集まり喜ぶ人々(2019年5月17日台湾・台北)台湾の立法院(国会)で同性どうしの結婚が法制化されたことを受け、台北の総統府前に集まり喜ぶ人々(2019年5月17日台湾・台北)

平等の権利も前進

この7年で変わったのは、社会の考え方だけではない。平等な権利をめぐる状況も前進している。

2019年に特別法ができた時、同性カップルは異性カップルと全く同じ権利を手にしたわけではない。

例えば台湾人と外国人の国際カップルの場合、外国出身のパートナーの国で結婚の平等が認められていなければ、台湾でも結婚できなかった。

この判断を不服とする国際同性カップルが何組も裁判を起こし勝訴を重ねた結果、台湾政府は2023年に法律の解釈を変更して、相手の国の状況に関わらず、結婚を認めることになった。

この変更では中国だけが除外されたものの、その後に台湾人と中国人のカップルが第3国で結婚した場合は、婚姻関係が認められるようになった

もう一つの大きな変化が養子縁組だ。同性カップルの場合は、両親のいずれか一方と血縁関係がある子どもとしか養子縁組できなかったが、このルールも2023年に変更。立法院(国会)が特別法を改正して、カップルの双方と血縁関係がない子どもでも養子縁組ができるようになった。

2019年に婚姻届が受理された時、簡さんのパートナーである許さんは「今の法律はまだ十分ではない」「本当の意味での平等を実現するために活動を続ける」と話したが、その言葉通り、台湾の結婚の平等を巡る状況は、7年間で前進してきたことになる。

東京プライド「チーム台湾」のブースで配られた、台湾の平等の権利獲得のための歩みを年ごとに記したカード東京プライド「チーム台湾」のブースで配られた、台湾の平等の権利獲得のための歩みを年ごとに記したカード

とはいえ、平等な権利のための闘いが終わったわけではない。

簡さんは今後の課題の一つとして、人工生殖法を改正して、異性カップルと同じように同性カップルも人工生殖医療を受けられるようにすることを挙げた。

国際結婚にもまだ改善すべき点があるという。現在は、両者ともに台湾人ではないカップルは、そのうちの1人の出身国で同性どうしの婚姻ができなければ、台湾政府も認めないとしている。

例えば、アメリカ人どうしのカップルは認められるが、アメリカ人と日本人の場合は承認されない(日本でまだ同性間の結婚ができないため)。簡さんは、この状況も変えていきたいと話す。

家族は崩壊していない

台湾の結婚の平等は、当事者が長年、人間の尊厳や権利平等を獲得するための運動を続けたことで実現した。

婚姻登記を不受理とされた同性カップルが処分取り消しを求めて裁判を起こし、闘った末に結婚の権利を手にした。

日本でも今、婚姻届を不受理とされた全国各地の性的マイノリティ当事者が、国を相手に、結婚の平等を求める訴訟を起こしている。                                               

一方、何人もの日本の政治家や首相秘書官が、同性婚を法制化すると「家族観や社会が変わってしまう」「我が国の家族のあり方の根幹に関わることなので、極めて慎重な検討が必要」「社会に与える影響が大きい。マイナスだ」などの主張を続け、結婚の平等の実現を阻み続けてきた。

台湾では結婚の平等実現から7年経ったが、社会や家族のあり方が悪くなってきただろうか?

簡さんは「まったくそんなことは起きていない」と強調する。

「台湾でも同じことを言われました。しかしすべての家族に、まったく問題は起きていません」

むしろ、性的マイノリティの当事者がカミングアウトしやすくなる、結婚している同性カップルが異性カップルと同じように公の場でも親密な関係を隠さなくてもよくなったなど、生きやすさが増したという。

今、結婚の平等のために闘っている日本の仲間たちに、簡さんは「自分を大切にして長生きし、頑張ってほしい」とエールを送った。

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