前期の歌舞伎座(第四期歌舞伎座)の休場までの日々に迫ったドキュメンタリー映画『わが心の歌舞伎座』が、現在の第五期歌舞伎座の新開場10周年にちなんで、全国で2023年4月7日(金)より再び上映される。それに先駆け、片岡千之助、中村莟玉、中村歌之助が登壇したトークイベント付き先行上映会が開催された。オフィシャルレポートが届いたので紹介する。
『わが心の歌舞伎座』より
トークイベントでは、本作で語り手として出演している片岡仁左衛門、中村梅玉、七世中村芝翫の孫・子であり、歌舞伎の次代を担う期待の新星3人が、満員の観客を前に語った。
片岡千之助
まずは前の歌舞伎座で好きだった場所を聞かれると、千之助は「歌舞伎座に入ってすぐの大間です。前の歌舞伎座がある時は本当に小さかったので、番頭さんや皆さんに遊んでもらった思い出が一番あります」。莟玉は楽屋を挙げ、「もともと一観客として観ていたところから、楽屋に入れていただけたので夢の空間でした。前の歌舞伎座の楽屋は狭くて、衣裳を着ると入れ替わるのも大変で。でもその感じが素敵でした」。
中村莟玉
歌之助は「(劇場2階の左右にあり舞台に照明をあてる)照明室です。昔の照明室は小さくて、みんなでぎゅうぎゅうになって、(古くて)ガタガタの椅子に座って、ライトの熱さと一緒に先輩方の芝居を見るというのが刺激というか、好きな場所でした」。とそれぞれの思い出を語った。
中村歌之助
また、司会者に、前の歌舞伎座が閉じる前に記念の品を持って帰ったそうで……と問われると、「僕らだけでなく多くの方がそうなんですが、座席の番号のプレートで、自分の誕生日のものをみんな根こそぎ取っていっていました。言っていいのかわからないんですが、10年経ったのでもう時効だと思います」と歌之助が明かす一幕も。
最後に、「歌舞伎座はホームグラウンドですから、新しい歌舞伎座が開場して10周年を迎え嬉しいと思うと共に、昔の歌舞伎座も僕たちの中で胸に刻まれていますので今のお客様に改めて昔の歌舞伎座を知っていただける、再上映を嬉しく思います。新しい歌舞伎座もこれから100年先、200年先も皆さんにも応援していただければと思います」(歌之助)、「最初の上映の時には『かっこいいな』という思いで先輩方を見ていました。それから13年経って改めて見直すと、自分もそうですし先輩方も年を重ねられている、それがいい意味で自分たちの世代へのプレッシャーになっていると思います。まだ(新開場して)10年という短い時間ですがこれから先、今の歌舞伎座を前の歌舞伎座に負けないものにしていきたいという気持ちにさせてくれる、素敵な映画です。ぜひお楽しみいただきたいと思います」(莟玉)、「前の歌舞伎座に最後に足を踏み入れてから13年、新しい歌舞伎座ができて10年、あっという間に感じますが、この映画を見て、今の歌舞伎座という場所をもっともっと素敵に、そしていつか諸先輩方のように後の世代につなげていけるように、先輩方のような役者になれるように頑張りたい。いろんな劇場で、世界で、もっともっと歌舞伎ができるように、歌舞伎が発展するように頑張りたいと思います」(千之助)という言葉で締めくくった。
『わが心の歌舞伎座』より
『わが心の歌舞伎座』より
『わが心の歌舞伎座』は4月7日(金)~13日(木)全国34館で(東劇のみ4月20日(木)までの2週間上映)で上映。また、4月2日(日)から歌舞伎座にて、歌舞伎座新開場十周年記念『鳳凰祭四月大歌舞伎』が上演されている。こちらは27日(木)までの上演となる。